登場!防衛戦隊ピュアハーツ!
「諸君!敵はとうとう日本侵攻を開始するようだ!この数ヶ月……本来ならうら若き女子高生として青春を謳歌する君たちはこのようなことに巻き込まれてしまった。世界の平和を守るため君たちは我々とともに戦ってくれると言った時、我々大人は申し訳無さと情けなさを覚えた……我々地球防衛軍日本支部対帝国研究部隊は今日、実践を経験することとなる。もしも勝てなかったら撤退して欲しい。以上だ」
元自衛隊統合幕僚長、国連による地球防衛軍設立後はそのまま改称され地球防衛軍日本支部長になった鉄壁泰造の短い演説が終わり5人は戦場へ向かう。
「逃げてく際に分捕ってきた転送装置が日本国内ならどこでも行ける程度には役に立つんだね」
「できれば国外も飛べればよかったのだが」
「あれは船内用だよ?流石に国外転移は無理だね。あくまで転送装置なんだから。まぁ彼女たちに限れば被占領地は自由に転移できるようになるから転移装置と言っても通るけど。たぶん数回も戦えば筒抜けだろうね」
日本国内ならどこでも移動できるのは有利だが、国外へいけないことは政治的にも戦略的にも手が狭まるので嘆く鉄壁だった。
エデソンはそれを見て強欲すぎるよと独りごちる。
「エデソン博士、本当に戦えるのでしょうか?」
「陛下の攻撃を吸収したハーツ……異常エネルギー吸収体質が彼女の体に変異を促した。戦闘だけなら凌げるはずだ、能力向上のため手を回すが幹部陣自ら来るようでは流石に勝てないだろうな。ハーツは許容いっぱいだ、これ以上陛下の攻撃があるたび強くなるのは夢物語に過ぎないよ」
「一応敵艦隊は壊滅して人類側有利に傾いています、ここで防衛戦に成功すれば人類側の……」
「身銭を切って移住先の汚染を嫌ったにすぎないね、キューバ方面に核攻撃を何度も行っているが全く効いていないでしょう?スペイン戦線の勝利は人食いパエリアン将軍が核汚染を我が身に受け地球を守って死んだに過ぎないよ。彼らしいよね、部下を守るために死ぬなんて彼らしいよ。現にスペイン戦線が安定してるのは核攻撃をされたスペインがEU側と手を切る算段をしているからだろう、どこのバカが核で自国を焼き払った挙げ句盾になれと言う周辺国に賛同するんだい?」
「人類の危機だと言うのに……」
「私としてはたいへん度し難いが……なぜ統一政権や統一通貨に統一機構がないんだい?他の惑星から攻められないとなぜ慢心してたんだ、こんなに数十年分の教材があるのに」
「子供の頃見てましたけど……毎年日本を中心に世界征服しようとしてくる悪の組織が実際にやってくるなんて思ったことはありませんでしたよ、8歳くらいまでは信じてましたけど」
「これほど教材があるのにどうしてまた……?正しき警告は狂人の戯言ってやつかな?」
エデソン博士は首を傾げ、ニチアサ系の動画を見始める、インスピレーションを受け続ける博士は初代の秘密戦隊を見てわざわざ世界に支部を作ることを提案したくらいだ。
現実は支部ではなく国ごと撃破されたのだが……他にも戦隊要素を入れようとして5人から反対されたことは彼を失望させた。なお、黄田がカレー好きと知ってものすごく贔屓していた。
ちなみにバイクに乗るタイプのやつも好きらしくメタルなヒーローも楽しんで見ながら色々開発していた。大抵はピュアハーツと相性が悪く廃棄してるのだが。
「案外あっけないものだったな」
東京湾強襲作戦に成功した第4騎士団はお台場に上陸していた。モニターの向こうではシタッパーが死亡フラグみたいなところに上陸するのはやめろと心穏やかではないが他の幹部はどこでもよかろうと思っている。
「よし、お前たちは羽田空港を抑えに、お前の達は大井競馬場の制圧、お前たちは向こうのディズ……」
「そこまでよ!」
「何者だ!地球防衛軍か!?」
何故かお台場のビックサイトの歩道橋の上に立つ5人を睨みつけ、バカに交戦人員が少ないなと思うキホテ第4騎士団長をよそにモニター向こうの幹部陣は凍りついた。
シタッパーだけはやっぱいるじゃん戦隊系のやつと思い、他の幹部は謎の力を感じて驚いていたが表面上の反応は同じであった。
「この世の悪を焼き尽くす!灼熱業火!レッドハーツ!」
「邪悪な心を凍らせる!氷河凍土!ブルーハーツ!」
「大地の怒りを思い知れ!森羅万象!グリーンハーツ!」
「天空の怒りその身に宿せ!神罰神雷!イエローハーツ!」
「愛は世界を包み込む!博愛の女神!ピンクハーツ!」
名乗り口上は大事とエデソン博士に押し切られ実際に攻撃されなかったので本当に有効なんだと思ってしまった5人。
一応武人だし聞いておこうと判断してしまった騎士団。
戦闘前の口上やるやつって地球側にもいたんだなとどこか懐かしく納得するシタッパー以外の幹部陣。
お約束は決まってしまった。
「「「「「世界の平和は私達が守る、地球に輝く5つの光!防衛戦隊ピュアハーツ!」」」」」
名乗り口上が終わり戦闘体制に入るピュアハーツ。とりあえずどうするという空気の中で武人のキホテが先陣を切った。
「バルサク宇宙帝国騎士団所属第4騎士団長キホテ、及び第4騎士団お相手仕る!いざ尋常に……勝負!」
やはり口上は必要なんだなんと確信した5人に対し、こいつら礼儀正しいから返さんといけなんだなと思う第4騎士団、そして幹部陣。
シタッパーだけは構わんからやってしまえと本気で思っているが口に出せばアッサーあたりから怒られるので沈黙を貫いた。
「地球防衛軍もなかなかやるな、ここに来て騎士団員たちがパンチ一発でのされていくではないか。なるほどこれが連中の、エデソンの秘密兵器か」
「消失した団員もいます!パンチ一発とは……恐るべき宇宙ゴリラ共だな……」
「救援に向かいたいが、こうも堂々と挑まれててしまうと介入は名誉を傷つけるかもしれん。撤退判断は任せてあるし……」
広い宇宙を小さな(それでも地球規模で考えると巨大すぎる)宇宙船での生活で死者を個別で弔う施設は作れない。
そのため戦闘員は死亡すると同時に消失するように改造されているのである、その上で兵士は武器の鹵獲を阻止するため武装ごと紐付けられて消えるようになっている。
ちなみに若き頃のシタッパーは、あー!だから昔テレビで見てた時気がついたら戦闘員が消えてたんだな!と呑気に思ったものである。
幹部陣がモニターの向こうであーだこーだと話しているとあっという間に第4騎士団は追い詰められた。
キホテは羽田と大井を抑えに言った部隊を呼び戻すか考えるも形勢逆転は叶わぬと判断、作戦続行を2部隊に通達後時間稼ぎに回ることにした。
「陛下!2部隊への増援を!2軍への増援を!私がここにいるうちにお早く!こい!ピュアハーツ!」
「5対1でいい戦いをしているところに増援を送りたいのだが覚悟を決められた後では介入を強行も出来んな……騎士のメンツは大事だ。それでどっちがどこを担当する?」
「海兵隊は沖縄のほうが使えます、私が沖縄へ」
「では北海道に私が増援に行きましょう」
皇帝の苦渋の決断に際してシタッパーは沖縄に、ナポレーンは北海道へ自ら乗り込み制圧を手伝うことにした。
「では、騎士団大隊に撤退を命じます。……第4騎士団各大隊に命ずる。羽田、大井に展開する大隊は直ちに撤退せよ」
『指揮権はキホテ団長にあり、キホテ団長は指揮可能であると認む、我らが指揮権は指揮権失効及び喪失まではキホテ団長にあり。引き続き防衛を行う』
「……だ、そうです」
「慕われておるな、騎士団総長に啖呵を切るのだから」
「あくまで私は帝国の騎士団長ですよ。総長はあまり……騎士っぽくないので好きではありません」
『騎士団総長閣下におかれましては我々に援軍は不要です。援軍は別戦線へ頼みます。他戦線の救援に振り分けていただく』
「騎士団長と呼べ。だが……わかった」
通信を切るとアッサーは沖縄か北海道のどちらに行くかを悩んだ。
「陛下、どちらが広いのでしたか?」
「北海道だな」
「ではそちらに向かうとしましょう。」
「頼むぞ、騎士団長」
「ええ、吉報をお待ち下さい」
「見事な連携だ、軍歴は長いのか?」
「数ヶ月だよ!オラ!オラ!とりゃ!」
「甘い!」
「っ!」
レッドハーツの蹴りを受けたキホテは威力に少しだけ驚きながらも蹴り返し、吹き飛ばした。
「付け焼き刃ですがなんとかなりますね!えいっ!」
「この程度ならなんとかなるで、ホイッ!」
「人数差が絶対的な優位であると思うな!くらえ!」
「ぐぅ……!」
「うぉ……!」
ブルーハーツとグリーンハーツの連携攻撃をもろともせず、キホテは拳で黙らせた。
すかさずイエローハーツとピンクハーツが後背から遅いかかる。
「え、えーい!キック!キック!」
「これでどうかしら~」
「ぬぅ……」
一撃一撃が帝国軍幹部に少し劣るとはいえども、5人から打ち込まれ続けたキホテは追い詰められていく。
自分が耐えているうちになんとか……ビックサイトの電光掲示板に流れる緊急ニュースで札幌の通信途絶陥落の可能性、那覇襲撃中の速報を見たキホテは2軍への増援が間に合ったことに安堵した。この速度は当初の計画ではない、元帥と提督あるいは敬愛すべき騎士団長が増援に向かったのだ。
我々は勝った!
「早い対応だ、転移装置だな?いや、転送装置か?どちらでもいい。好き勝手に移動できる転移装置であろうが制限がある転送装置であろうがな」
「なんでそれを!」
「そもそもが我々の技術だぞ?この星で作れないことなぞ最初期の交渉で把握しているわ!」
「侵略者め!」
「恥をしれ!」
「何を言うか!恥を知るのは貴様らの方だ!エデソンがそちらにいってから交渉で手のひらを返しおって!先に武力をちらつかせたのは貴様ら地球人ではないか!そら、日本以外も同時攻撃しているぞ!どちらを優先するんだ?日本か?アメリカか?それとも中東か?中国かな?」
「国内までしか転移できないような欠陥品やないか!」
「!!?」
その情報は値千金であった。
帝国側が欲しい情報、それはエデソンが持ち出した転送範囲であった。登録施設内のどこにでも移動できる装置、つまり地球を同一施設として登録したのか、日本の同盟国を連合として同一組織として登録したのか、地球防衛軍自体の参加国を同一連合として登録したのか、日本単独で国家として登録したのか。
「あの持ち出した転送装置を転移装置に改造したわけか、シュタイン!」
「可能でしょうな、つまり日本の外に連中は出られない。孤立させましょう」
「ブラフであっても構わん!切り取った領土は過去の戦争における経験上設定された国家範囲内にはならないからな。継続せよ!本州をから各地を切り離せ!」
ブラフであるの可能性は大いにあるものの皇帝はこの重要情報を聞き、本州以外の切り取り作戦を続行させた。
キホテに時間を稼がせ制圧、キホテを撤退させれば万事うまく行くはずだった。
「そうか……国内だけか……ハハハハ、フハハハハッハ!」
同じ結論にキホテも達していた。そして自分は九州方面切り取りまで耐えられないだろうと、四国制圧も耐えられないだろうと。
ここで5人に手傷を負わせ戦線に送らせず療養させるしかない。5人を使い潰せない功績を与える必要があるのだと、それは自分の命だと。そう判断した
そして無意識にここで5人を討ち取るという選択肢が出ない自分に気が付き、覚悟を決めた。
「このキホテ、珍しい一族の出でな……魂を燃やすことで能力を2倍にすることができるのだ、そしてな……今生の命を懸けることで分身ができるのだ!!」
それはキホテ一族に伝わる奥義、バルサク宇宙帝国と戦った両親が自らの身を持って教えてくれた技。転生を何度も繰り替えすキホテ一族が末代になる究極奥義。
両親がアッサーに片手にいなされたのを見て諦めて降伏を決めたほどの技。
「命の風車!」
分裂したキホテはピュアハートに襲いかかる。ただでさえ疲労していた彼は命を使った攻撃を仕掛けてくる。万全であれば倒しきれたであろうその技は相手が5人でなければ勝ちきれたであろう技。
「つ、強い!」
「みんな!まだだよ!必殺技を!」
「おうよ!」
「は、はいっ!」
「わかったわ~」
「「「「「五光照覧!ピュアヘブン!」」」」」
攻撃を受けたキホテはそれでも歩みを止めなかった。
「風車突撃!」
五人を弾き飛ばしたキホテはちらりと電光掲示板を見ると高知侵攻上陸中の速報を見て後一撃、と踏ん張るものの命の火は燃え尽きる寸前であった。
できればもう少しだけ……もう一度だけ放てれば……。
鍛え方が足りなかったな……。
「みごと……だ、ピュアハート、最後の戦いがお前たちでよかったぞ……」
そう言って倒れたキホテ第4騎士団長は消失した。
「ピュアハーツだ……よ……」
精一杯の訂正はキホテには届かなかった。
倒れた5人は地球防衛軍日本支部に救出され運び出されていった。
そしてこれは内ゲバや味方殺し以外では事実上地球防衛軍の初勝利となった。




