第3クール 第9話☆:ようたの贈り物
その日の宿は、小さいながらも、温かみのある部屋だった。
夕食を終え、めいめいが、布団の上でくつろいでいた。
「あー、今日もいっぱい歩いたね」
ファードが、大きく伸びをする。
「明日は、もう少し北の方も、見てみようか」
「うん、そうしよう」
きあが、あくびを噛み殺しながら、頷いた。
「……あの」
そんな中、ようたが、少し緊張した様子で、小さな袋を取り出した。
「みんなに、渡したいものが、あって」
「え、なに?」
きあが、興味深そうに、身を乗り出す。
ようたは、袋の中から、小さな飾りを、一つずつ取り出していった。
上部には、小さな桜の花を模した意匠。下部には、それぞれ違う色の、柔らかな布が垂れている。
「これ……」
スターが、静かに、その意匠を見つめた。
「旅の途中、暇な時に、少しずつ、作ってたんです」
ようたは、恥ずかしそうに、視線を伏せた。
「その……サクラビっていう名前、もらったから。せっかくなら、みんなでお揃いの何か、あったらいいなって、思って」
「わぁ……!」
きあが、真っ先に、目を輝かせた。
「これ、わたしの!?」
「あ、うん。……その、色、きあさんに、似合うかなって」
ようたが差し出したのは、ピンクと金の花びらに、中心が小さな金の粒で彩られた、華やかな飾りだった。
「きゃー! かわいい!」
きあが、大喜びで、それを受け取る。すぐに、自分のハート型のアホ毛の根元に、それを飾り付けた。
「見て見て! どう!?」
「――似合ってるよ」
ファードが、笑いながら答える。
「次、俺?」
スターが、静かに手を差し出す。
「あ、はい。……スターさんは、隠すの好きだから、帽子の裏側にでも、つけられるようにしてみました」
渡されたのは、紺と黒を基調にした、控えめな輝きを放つ飾りだった。
「へえ……悪くないな」
スターは、それを、静かに、帽子の内側に取り付けた。
「ファードさんは、これです」
淡い緑と白の色合いの、風になびくようなデザインの飾りが、手渡される。
「うわぁ、これ、僕っぽい!」
ファードが、嬉しそうに、それを、アホ毛の根元に結びつけた。
「――で、これが、僕の分、かな」
最後に残った、淡いベージュとラベンダーの飾りを、ようたは、少し照れくさそうに、自分の手に取った。
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「――ようた」
きあが、じっと、ようたを見つめる。
「これ、ちゃんとした、"サクラビ"の証だね」
「え……」
「みんな、それぞれ違うけど、でも、同じ桜。……なんか、いいじゃん」
きあの言葉に、ようたの目が、じわりと、潤んだ。
「……そう、言ってもらえると、嬉しいです」
「これから、いっぱい使っていこうね!」
きあが、明るく笑う。
「うん……!」
スターも、静かに、微笑んでいた。
「――器用貧乏なんかじゃなかったんだな、お前」
「え?」
「これだけ、細かい作業、丁寧にできる。……立派な、特技だよ」
その言葉に、ようたは、思わず、涙をこぼした。
「あ、あれ、僕、なんで、泣いて……」
「泣いてもいいって」
ファードが、優しく、ようたの肩をぽんと叩く。
「僕らは、家族だからさ」
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その夜、四人は、それぞれの桜の飾りを身につけたまま、静かに眠りについた。
窓の外には、旅先の見知らぬ夜空が、静かに広がっていた。
小さな桜の飾りが、月明かりに照らされ、それぞれの色で、優しく輝いていた。




