第3クール 第8話:サクラビ
「――というわけで、お前たちも、そろそろ自分たちの拠点を持つ頃合いだと思ってな」
朝食の席、師匠が、唐突にそう切り出した。
「拠点……?」
きあが、首をかしげる。
「家だよ、家。いつまでも、私たちの家に間借りしてるわけにもいかないだろ」
「え……でも……」
ようたが、少し不安げな顔をする。
「大丈夫だ。何かあれば、いつでも帰ってきていい。ただ――」
師匠は、優しく、四人を見渡した。
「お前たちには、お前たちの居場所を、自分たちで見つけてほしい。……"サクラビ"として」
「サクラビ……」
スターが、静かに、その名を口にする。
「ああ。お前たち四人のチーム名だ。……第二のアイザル、ってやつだな」
その言葉に、四人が、顔を見合わせた。
「――やります!」
ファードが、真っ先に、元気よく手を挙げた。
「わたしも!」
「僕も、頑張ります」
「――まあ、面白そうだしな」
こうして、サクラビの四人は、自分たちだけの家を探す旅に出ることになった。
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旅は、思いのほか賑やかだった。
「あそこの街、いいんじゃない!?」
「いや、あっちの方が、静かでいいと思う」
「僕、あんまり寒いところは……」
「まあまあ、焦らず見ていこうぜ」
軽口を叩き合いながら、四人は、各地を巡っていった。
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ある日、たどり着いたのは、活気ある、中規模の街だった。
「お、ここ、なんかいい雰囲気」
ファードが、目を輝かせる。
街の入り口では、屈強な体格の魔道士が、周囲を見張るように立っていた。
「――よう、旅の者か?」
その魔道士が、気さくに声をかけてくる。
「あ、はい! 家を探して、旅してるんです」
「へえ、そりゃ大変だな。……俺はボッタ。この街の警備、任されてる」
「警備、ですか」
「ああ。魔物や、はぐれ者から、街を守るのが仕事だ」
ボッタは、豪快に笑った。
「昔は、もっと荒っぽいことばっかりしてたけどな。今は、こうやって、誰かを守る方が、性に合ってる」
「昔って……?」
きあが、興味津々に尋ねる。
「――俺、元は、魔王軍の人間だったんだよ」
「――!」
四人が、思わず身構えた。
「あ、警戒しなくていい」ボッタが、慌てて手を振る。
「もう、そういうのは、全部終わったことだ。今は、ただの、街の用心棒だよ」
その屈託のない笑顔に、四人の緊張が、少しずつ、解けていった。
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街の中心部では、賑やかな祭りの準備が進んでいた。
「これ、来週のお祭りの準備なんだ。よかったら、見ていくといい」
ボッタに連れられて向かった先には、忙しそうに指示を出す、一人の男性がいた。
「――そこの飾り、もう少し右! そう、それでいい!」
「バラード、旅の子たちだ。ちょっと紹介してやってくれ」
「お、いいところに」
バラードと呼ばれた男性は、人懐っこい笑顔で、四人を迎えた。
「俺は、この街のイベント企画係。今度の収穫祭、盛り上げようと思って、あれこれ考えてるんだ」
「企画係……」
「ああ。……昔は、こういう頭の使い方、全然違う方向にしてたんだけどな」
バラードは、少し、遠い目をした。
「俺も、元は、魔王軍だったんだ。ジュールってとこにいた」
「――!」
再び、四人が息を呑む。
「今は、もう、誰かを騙したり、出し抜いたりするための頭は、使ってないよ」
バラードは、穏やかに笑った。
「今は、みんなが笑顔になれる方法を、考えるのに使ってる。……その方が、ずっと楽しいからな」
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その夜、宿に泊まった四人は、静かに、今日のことを話し合っていた。
「……なんか、不思議な気分」
きあが、ぽつりと呟く。
「敵だった人たちが、今は、あんな風に、普通に暮らしてるなんて」
「うん……」
ようたも、静かに頷いた。
「戦争、終わったんだなって、なんか、実感した」
スターは、窓の外を見つめながら、静かに、目を細めていた。
「――世界は、平和になったんだ」
その呟きには、これまでにない、深い感慨がこもっていた。
「……スター?」
きあが、不思議そうに、声をかける。
「――いや、なんでもない」
スターは、いつもの調子に戻り、軽く笑った。
「さて、明日も、いい場所探すぞ」
「うん!」
四人の声が、静かな夜に、優しく響いていた。
まだ見ぬ、自分たちだけの居場所を求めて、サクラビの旅は、これからも続いていく。
ノシ泣




