第3クール ☆第7話:見える、はずのない未来
その日も、エナガは、いつものように、あの水色の宝石を磨いていた。
「……ふふ、今日も綺麗に磨けたわね」
満足げに、宝石を陽にかざす。
その様子を、少し離れた場所から、あけびが、こっそりと覗いていた。
「――ふっふっふ……」
あけびの顔に、悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
(このタイミング、絶好のチャンスだぞ……!)
そろりそろりと、あけびが忍び寄る。
その、まさに同じ瞬間――近くで、日向ぼっこをしていたスターが、ふと、目を開けた。
「――あけび」
「え?」
「今、動くのやめとけ」
「な、なんで……?」
「いいから」
スターが、静かに立ち上がり、あけびの前に、すっと移動する。
「え、え? どういうこと?」
「……」
スターは、何も言わず、あけびの隣で、静かに構えた。
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「――あけびの……すぺしゃる……」
小さな声で、あけびが囁く。だが、その声には、いつもの勢いがなかった。何かに気圧されるように、動きが、ぎこちない。
「ドッキリーー!!」
声だけは、なんとか元気よく出す。
「――わぁぁぁっっっっ!!!」
エナガが、大げさに驚いた振りをしながら、既に杖を構えていた。
「――ギガディヴォイド!!」
眩い光線が、まっすぐ、あけびめがけて放たれる。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
あけびが、思わず、目をつむった。だが――
「――」
その瞬間、スターが、静かに片手をかざした。
淡く輝く、半透明のシールドが、二人の前に展開される。光線は、そのシールドに阻まれ、周囲に、無害な光の粒子となって、拡散していった。
「……え?」
あけびが、恐る恐る、目を開ける。
体は、無傷だった。
「な……!」
エナガが、驚いたように、目を見開く。
「……あんた、いつの間に……」
「まあ、なんとなくね」
スターは、いつも通りの、飄々とした調子で答えた。
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「よく、気づいたわね……?」
エナガが、警戒するように、スターを見つめる。
「気づいたっていうか……」
スターは、少し、言葉を選ぶように、間を置いた。
「――見えたんだ。あけびが動く前に、これから起きることが」
「見えた……?」
「うん。俺、そういう力、あるんだよね」
スターは、あっさりと、そう告げた。
「――未来が、少しだけ、先に見える」
「……」
エナガとあけびが、思わず、顔を見合わせた。
「え、それって、つまり……!」
あけびが、興奮気味に、詰め寄る。
「予知……ってこと!?」
「まあ、そんな感じ」
「すごいじゃん! なんで今まで、隠してたの!?」
「別に、隠してたわけじゃないけど」
スターは、軽く肩をすくめた。
「言うタイミングが、なかっただけだよ」
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「……でも」
エナガが、少し、複雑な顔で、スターを見つめた。
「未来が見えるなら、もっと色々、教えてくれてもいいのに」
「――全部教えたら、つまらないだろ」
スターが、にやりと笑う。
「それに、大したことじゃないさ。今回みたいな、ちょっとしたことが、たまに見えるだけだよ」
その言い方に、エナガは、なんとなく、腑に落ちない様子だった。だが、それ以上、深くは追及しなかった。
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「――でも、ありがとう、スター」
あけびが、素直に、頭を下げる。
「おかげで、黒焦げにならずに済んだよ」
「別に。……それに」
スターは、少しだけ、優しい目で、あけびを見た。
「お前が黒焦げになる未来より、こっちの方が、俺は好きだからな」
その一言に、あけびが、照れくさそうに笑った。
「――なんか、かっこいいこと言うじゃん」
「たまにはな」
夕暮れの庭に、穏やかな笑い声が、静かに響いていた。
その笑顔の奥に、まだ誰も気づいていない、もっと大きな秘密が眠っていることを、誰も知らないまま。
ノシ△




