第3クール☆ 第6話:模倣
その日は、師匠直々の修行日だった。
「よし、今日はこの技を仕込むぞ」
師匠が、庭先で、杖をくるりと回す。
「エクス・イグニションの、基礎になる型だ。あけび、お前も、もう一度確認しとけ」
「はーい!」
あけびが、元気よく返事をする。
「よく見てろよ。……こうやって、魔力を圧縮しながら、拳に乗せていく」
師匠が、ゆっくりと、動作を見せる。魔力が、じわりと、拳の周りに集まっていった。
「――こうだ」
短い一撃と共に、閃光が走る。
「やってみろ」
「はい!」
あけびが、勢いよく真似をする。だが――
「あ、あれ……?」
魔力が、うまく圧縮できず、霧散していった。
「くそ、もう一回……!」
何度も、何度も、あけびは繰り返す。だが、どうしても、うまくいかない。
「あー、もどかしい……!」
「まあ、焦るな。あけびは、そのタイプの技、時間かかるからな」
師匠が、苦笑しながら言う。
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その様子を、少し離れた場所で見ていたようたが、静かに、自分の手のひらを見つめていた。
「……なんとなく、分かる、気がする」
小さく、そう呟く。
「え、ようた?」
エナガが、気づいて声をかける。
「あの……ちょっと、やってみても、いいですか」
「うん? いいけど……」
ようたは、緊張した面持ちで、師匠の見せた動きを、思い出しながら、なぞってみた。
魔力を、圧縮する。拳に、乗せる。
「――こう、かな」
短い呟きと共に、彼の拳の周りに、確かな輝きが生まれた。
「な……!」
次の瞬間――閃光が、正確に、師匠が見せたのと同じ形で、放たれた。
「――!!」
その場にいた全員が、息を呑んだ。
「え……え!? 今の、一回見ただけだよね……!?」
あけびが、目を丸くする。
「は、初めてなのに……!」
ようた自身も、自分の手のひらを見つめたまま、呆然としていた。
「……なんで、できたんだろう」
「……お前、それ」
師匠が、興味深そうに、ようたの前にしゃがみ込んだ。
「もしかして、今の、頭で理屈を考えたんじゃなく、体が、勝手に覚えたって感じか?」
「……はい。なんとなく、こう、動けば……って、体が分かった、みたいな」
「へえ」
師匠が、感心したように頷く。
「それ、多分、お前の力だな。……見た技を、写し取る力」
「え……?」
ようたが、驚いたように顔を上げる。
「今まで、器用貧乏だって思ってたんだろ? 何やっても中途半端だって」
「……はい」
「それ、逆だったんだよ」
師匠は、優しく、ようたの頭に手を置いた。
「器用貧乏なんじゃない。……お前は、誰よりも早く、色んなものを"写し取れる"んだ。だから、一つに絞らなくても、なんでもできるように、見えるだけだ」
「……」
ようたの目に、じわりと、涙が浮かんだ。
「僕、ずっと……何をやっても、中途半端で……」
「それは、まだ、自分の力を、正しく理解できてなかっただけだ」
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あけびが、少し悔しそうに、それでも、笑顔で言った。
「うわー、ずるいなぁ、ようた! 僕、何ヶ月もかかったのに!」
「ご、ごめんなさい……!」
「いいって、いいって! 逆に、これから色々教えてもらおうかな!」
「え、僕なんかが、教えるなんて……」
「その謙遜、そろそろやめなさいよ」
エナガが、笑いながら、ようたの肩をぽんと叩く。
「あんた、ちゃんと、すごい力持ってるんだから」
「……はい」
ようたは、まだ、少し戸惑いながらも、初めて、少しだけ、誇らしげに、微笑んだ。
夕暮れの庭に、また一つ、新しい笑顔が加わっていた。
ノシ☆




