第3クール☆ 第4話:見えない風、その正体
村での再会から、数日が経った、ある夕食後。
食卓を囲みながら、あけびが、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえばさ、ファード。前々から聞きたかったんだけど」
「はい?」
「最終決戦の後、しばらく姿見えなかったよね。あれ、結局どこ行ってたの?」
その言葉に、ファードの表情が、少しだけ引き締まった。
「……ちゃんと、話してませんでしたね」
ファードは、一度、深呼吸をした。
「僕、実は――風になって、姿を消せるんです。それと、風の身代わりを作ることも」
「え……」
エナガが、目を丸くする。
「あの時、僕、ザードの動きをずっと追ってました。……正体に気づいたきっかけは、また今度話しますけど」
「じゃあ、あの時、日常にいた"ファード"は……」
「風の身代わりです。……本物は、ずっと別の場所で、動いてました」
「なんで、黙ってたの……」
あけびが、少し寂しそうな顔をする。
「……心配、かけたくなかったんです。それに、正体を明かしたら、狙われるのが、僕自身より、みんなになるかもしれないと思って」
ファードは、静かに続けた。
「最終決戦の時も、実は――ずっと、風になって、戦場にいました」
「え……あの時も……?」
「はい。師匠さんが、魔王と戦ってる間、ずっと、後ろから支えてました。……気づかれないように、そっと」
その告白に、エナガとあけびが、息を呑む。
「……あの時の、あの謎の追い風……!」
エナガが、思わず声を上げた。師匠から後で聞いた話を、思い出したように。
「はい。あれ、僕です」
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「――でも、ファード、それってすごい力だよね」
あけびが、感心したように言う。
「僕たち世代には、そんな力、なかったし。……あ、そういえば」
あけびが、ふと、首をかしげた。
「そもそも、なんでファードたちは、そういう特別な力持ってるの? 僕たちには、そんなのなかったよね?」
その質問に、少し離れた場所で聞いていたスターが、飄々とした様子で口を挟んだ。
「――ああ、それは、世代による差だな」
「世代?」
「お前ら世代は、デラードっていう、特別な"形態変化"の力を持ってるだろ」
「うん、まあ、そうだけど」
「逆に、俺たちは、デラードを使えませんよ」
スターが、あっさりとした調子で言った。
「その代わり、俺たちには、それぞれ固有の力がある。……交換条件、みたいなもんだ」
「へえ……そうなんだ」
エナガが、興味深そうに頷く。
「じゃあ、きあときあ、ようたにも、それぞれ、そういう力があるってこと?」
「ええ、まあ」
きあが、少し照れくさそうに、微笑んだ。
「わたしのは……ちょっと、恥ずかしいから、今度、話しますね」
「僕のも……その、まだ、うまく説明できなくて」
ようたも、控えめに、視線を逸らした。
「まあ、焦らなくていいさ」
スターが、静かに笑った。
「みんな、それぞれのタイミングで、話せばいい」
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食卓に、また、いつもの賑やかな空気が戻ってくる。
「――ファード、これからも、無理はしないでね」
あけびが、優しく声をかける。
「はい。……でも、みんなを守れるなら、また、同じことすると思います」
その言葉に、あけびは、少し困ったように笑った。
「それは、それで、心配なんだけどな……」
「あはは、すみません」
賑やかな笑い声が、食卓いっぱいに響いていた。
まだ語られていない、二つの力の秘密を、その場の誰もが、静かに、心の中にしまい込んだまま。




