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番外編:尊敬の眼差し



その日、ルートは、誰よりも早く起きていた。


「――よし」


洗面所の鏡の前で、身だしなみを整える。いつもより、心なしか、丁寧に。


「……何のためだ、これ」


自分の行動に、自分でツッコミを入れながらも、手は止まらない。


食卓に降りると、既に師匠が、あくびをしながら座っていた。


「おはよう、ルート。今日も早いな」


「――っ、し、師匠様、おはようございます!」


「様?」


師匠が、きょとんとした顔でルートを見る。


「な、なんとなくです! 気にしないでください!」


「……そうか」


師匠は、特に気にする様子もなく、朝食に手をつけた。ルートは、その一挙一動を、じっと観察していた。


(師匠様、今日も、飄々としてらっしゃる……。あの緩さの奥に、規格外の力を秘めているとは、誰も思わないだろうな……)


「――ルート、なに難しい顔してんだ」


「なんでもありません!」



---


その日の依頼中。師匠が、何気なく杖を振るう。


たったそれだけの動作で、群がる魔物が、一瞬で薙ぎ払われた。


「……素晴らしい」


ルートが、思わず呟く。


「え、なんて?」


「なんでもありません!」


「お前、さっきからそればっかりだな」


その様子を、少し離れたところで見ていたエナガとあけびが、こそこそと話していた。


「……あれ、絶対『師匠様』って言った」


「言ったね。しかもすごい真剣な顔で」


「……重症だわ」



---


夜、片付けをしていた師匠が、ふと、ルートに声をかけた。


「今日も、よく働いたな。うへへ、ありがとよ」


「――っ!!」


礼を言われただけで、ルートの顔が、瞬時に真っ赤に染まる。


「ど、どういたしまして!! 師匠様のためなら、いくらでも!!」


「大袈裟だな」


「大袈裟じゃありません!! 師匠様は、もっと敬われるべき存在です!!」


熱弁するルートを、師匠は、不思議そうに見つめていた。


「……お前、なんか変な薬でも飲んだか?」


「飲んでません!!」



---


その様子を、こっそり物陰から覗いていたきあが、目を輝かせながら駆け寄ってきた。


「ねえねえ、チアさん! さっきの、『師匠様』ってやつ、もう一回言って!」


「な、なんでだよ!」


「かわいいから!」


「かわいくない!!」


ようたも、控えめに笑いながら会話に加わる。


「チアさんの師匠さんへの尊敬、なんだか、とても純粋な感じがしますね」


「そ、そうか? 普通だろ、これくらい」


「普通は『様』つけないと思います……」


スターが、やれやれと肩をすくめる。


「まあ、本人が自覚するまで、あと少しかかりそうだな」


「なんの話だ!」



---


その夜、自分の部屋に戻ったルートは、一人、ベッドに座り込んで、天井を見上げていた。


「……師匠様」


小さく呟いた声は、誰にも届かない。


「――なんで、こんなに、意識しちゃうんだろうな」


自分自身にすら、まだ、はっきりと言葉にできない感情を抱えたまま、ルートは、その夜も、静かに、師匠のことを思い浮かべていた。


窓の外、月明かりだけが、その頬をほんのり赤く照らしていた。

第2クール終了ありがとうございます!

第3クールでは弟子世代を深掘りしていく予定です

近日公開しますのでおたのしみに!

(ちなみに…作者マンの誕生日がちかいので…誕生日プレゼントとしてブクマとほしがほしいなぁ…なんてノシ)

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