第36話:再会
光が弾けると同時に、あけび、エナガ、ルートは、元の戦場へと引き戻された。
「――っ!」
三人がほぼ同時に、地に降り立つ。
「……」
「……」
言葉はなかった。だが、互いの顔を見て、それぞれが、何かを乗り越えてきたことだけは、伝わった。
その瞬間、体の内側から、力が溢れ出す。
「――」
三人は、無言のまま、力を解き放った。光が弾け、その姿が、変わっていく。
紫の帽子に、三角形の瞳孔。燃えるようなオレンジの閃光。深い緑と青のオーラ。
デラードの姿になった三人は、もう、言葉を発することができない。だが、その目には、確かな覚悟が宿っていた。
「――!」
正面、巨大な地響きとともに、いくつもの像が立ち上がる。
見上げるほどの大きさの人型の像――その一体一体が、まるで、かつて誰かが失った命の輪郭を模しているかのようだった。
「……はぁ…っ…。…!? あけび右に飛べ!!」
離れた場所から、師匠の声が響く。あけびが、反射的に右へと跳んだ。
轟音とともに、像の拳が、あけびのいた場所を叩き潰す。
「……」
あけびは、無言のまま、師匠を見た。ほんの一瞬、目が合う。師匠は小さく頷き、また視線を戦場全体へと戻した。
「魔女エナガ!! お前どーした! 早くカバーしろ!!!」
師匠の一喝が響いた瞬間、エナガの体が、びくりと反応した。
「――っ」
冷たく澱んでいたはずの瞳に、一瞬、光が戻る。
エナガは、はっと我に返ったように、ルートに迫っていた像の拳の直前で、ルートの体を抱えて上空へと飛び上がった。
「――」
言葉は出ない。だが、抱えたルートの傷に、無言のまま、淡い光を纏わせていく。回復魔法だった。
「……」
ルートは、その光に包まれながら、エナガの横顔を見つめていた。デラード化して、何の感情も浮かんでいないはずのその顔。それでも、確かに、ルートを助けようとする意志だけは、そこにあった。
「――大星群」
エナガが、静かに詠唱する。背後に、無数の星の魔法陣が展開し、光の雨が像の群れへと降り注ぐ。
「――ライボルトサンダー」
あけびが跳躍し、一体の像の頭部を、雷を纏った一撃で撃ち抜く。
「――クリスタルバーム」
ルートの弓が、次々と像の弱点――関節部分に光る、小さな核――を正確に撃ち抜いていく。
言葉のない連携だった。だが、三人の動きには、これまでのどんな戦いよりも、確かな信頼が宿っていた。
「――お前ら、いいぞ! そのまま押し切れ!!」
師匠の声が、戦場に響き渡る。
デラードの三人は、答える代わりに、ただ、次の一撃を放ち続けた。
像が、一体、また一体と、崩れ落ちていく。
戦況は、確実に、一行の優勢へと傾いていた。だが、それでも、まだ、この戦いの本当の終わりは見えていなかった。




