第26話:賑やかな食卓
家に帰ってきた一行は、久しぶりに全員で食卓を囲んでいた。あけびが腕によりをかけて作った料理が、所狭しとテーブルに並んでいる。
「わあああ!! すごい量!!」
きあが、目を輝かせながら料理を覗き込む。
「あけびさんが作ってくれたんですよね! すごい……!」
ようたも、おずおずとテーブルに近づく。
「よ、よそってもいいですか……?」
「もちろん! いっぱい食べて!」
あけびが、ようたの皿に大盛りでよそう。
「わ、こんなに……!」
「足りなかったらまだあるから、遠慮しないでね」
ようたの目が、じんわりと潤む。
「……ありがとうございます」
「なんでそこで泣きそうになるのよ」
エナガが、呆れたように笑いながらツッコむ。
一方、テーブルの端では、きあがルートの隣にぴったりとくっついていた。
「チアさん、これ食べます? はい、あーん」
「い、いい、自分で食べる」
「えー、遠慮しないでよ〜」
「遠慮してるわけじゃない」
じたばたと抵抗するルートを見て、あけびとエナガが顔を見合わせて笑う。
「なんか、賑やかになったわね」
「うん! こういうの、良いよね!」
スターは、少し離れた場所で、静かに料理をつつきながら、その様子を眺めていた。
「……お前は、こっち来ないの?」
エナガが尋ねると、スターは肩をすくめる。
「別に。ここからでも十分見えるし」
「変な子ね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そこへ、師匠が、豪快に椅子に腰を下ろす。
「さーて、みんな揃ったところで、乾杯といくか」
「乾杯って、お茶でだけどね」
「細かいことはいいんだ、うへへ」
師匠がコップを掲げると、全員がそれに続いた。
「かんぱーい!!」
賑やかな声が、食卓に響く。
「……」
その様子を眺めながら、ルートだけが、少しだけ複雑な表情を浮かべていた。
「……ルート? どうしたの」
あけびが、そっと声をかける。
「……いや。なんでもない」
ルートは、それ以上何も言わず、ただ静かに、賑やかな食卓を見つめていた。
彼だけが知っている記憶――誰にもまだ言えていない、あの砦で見たもの――を胸の奥にしまい込んだまま。
「チアさん、あーんって言ってるのに!」
「うるさい、後にしろ」
「えー!」
そんなやり取りに、また笑い声が上がる。
賑やかな夜は、まだ、始まったばかりだった。




