第24話:僕らなら
魔王軍の拠点深く、一行はついに、奪われた石を守る幹部と対峙していた。
「……ここまで来るとはな」
黒い鎧を纏った幹部が、低く笑う。石は、その背後の台座に安置されていた。
「返してもらうわよ」
エナガが、静かに一歩踏み出す。三人は既に、デラードの姿になっていた。
「――行くぞ」
幹部が動く。地を這うような速さで、あけびに肉薄する。
あけびが棒を構え、迎え撃つ。だが、幹部の攻撃は、これまでの雑兵とは比べ物にならない重さを持っていた。
「くっ……!」
弾かれ、後退る。
「――」
エナガが目を細める。このままの物量戦では、決着まで時間がかかりすぎる。
決断は一瞬だった。
「――シンドローム」
エナガの足元に、大きな星の魔法陣が浮かび上がる。光が広がり、その場にいる全員――幹部も、あけびも、ルートも、そしてエナガ自身も、動きが止まった。
「な、に……!?」
幹部が、身動きの取れないことに気づき、目を見開く。
――あたりが静まった。
棒を構えて固まっているあけび。
今すぐにでも飛びかかってきそうな幹部。
そして――
ルートだけが、拘束された体の中で、静かに思考を巡らせていた。
(……あと1ミリ上。右に3ミリ。斜めに1ミリ。)
弓につがえた矢の切っ先を、寸分の狂いもなく、幹部の意識の一点を貫いた
カウントが始まる。
「――あと。5……6……7……8……9……10」
エナガの声が、静寂に響いた。
全員の拘束が、同時に解けた。
(――ここだ)
――――バヒューン。
ルートの放ったテラスタルバームが、幹部の意識を刈り取った
「な……ぐ……」
テラスタルバームの特性が発動する。幹部は、声もなく、その場に崩れ落ちた。
「……終わった、か」
拘束から解放されたあけびが、荒く息をつく。
エナガは、無言のまま台座に近づき、石を手に取った。
その瞬間、周囲を包んでいた紫や緑のオーラが、すうっと薄れていく。デラードの効果が、切れ始めていた。
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「……取り返した、のよね」
元の姿に戻ったエナガが、石を握りしめたまま呟く。声には、また、いつもの感情が戻っていた。
「や、やった……! 本当にやった……!」
あけびが、へなへなとその場に座り込む。
「……お疲れ」
ルートも、元の姿に戻り、大きく息を吐いた。
「……なあ、今の連携」
「なによ」
「悪くなかったな」
エナガが、少しだけ笑った。
「でしょ。誰のおかげよ、それ」
「……お前のおかげだって言わせたいのか」
「別に? 事実言ってるだけ」
そんな軽口を叩き合う二人を見て、あけびが、へたり込んだまま笑った。
「……よかった、みんな、無事で」
拠点の奥、崩れ落ちた幹部のそばで、彼らはようやく、長い戦いに一区切りをつけた。だが、その安堵も、束の間のものだった。
ノシ




