第23話:デラード、解禁
砦を出て二日目。一行の前に、ついに魔王軍の一団が姿を現した。
「……来たか」
先頭に立つのは、以前会場を襲った時よりも、明らかに禍々しい気配を纏った戦闘部隊だった。
「数、多いな……」
あけびが、棒を構えながら息を呑む。
「ひるむな。……今の私たちなら、いける」
エナガが、胸元にそっと手を当てる。そこには、あの日分けてもらった、小さな石の欠片の温もりがあった。
「やるわよ」
「ああ」
「はい……!」
三人が、同時に頷いた。
「――発動」
エナガが、静かに呟く。体に、力を込める。
その瞬間、三人の姿が、光に包まれた。
「な……!?」
魔王軍の兵士たちが、思わず後ずさる。
光が収まった時、そこに立っていたのは、これまでとは明らかに違う姿の三人だった。
紫の帽子から立ち上る禍々しいまでの魔力。エナガの瞳孔は、三角形に変わっていた。
三人は、もう何も言わなかった。ただ、静かに敵を見据えるだけ。
あけびの体を包む、燃えるようなオレンジの閃光。瞳には、闘志を宿した炎のような光。
ルートの纏う、深い緑と青のオーラ。手には、いつのまにか、透き通るクリスタルの弓が握られていた。
「これが……デラード……」
魔王軍の兵士たちが、明らかに動揺している。
「怯むな! 数はこちらが有利だ!」
指揮官らしき声が響くが、それも一瞬だった。
「――大星群」
エナガが、詠唱だけを静かに紡ぐ。同時に、背後に無数の星の魔法陣が展開する。そこから放たれる、絶え間ない光線の雨。
「うわあああ!!」
兵士たちが次々と薙ぎ払われていく。
あけびが、無言のまま地面を蹴る。その速さは、これまでとは比べ物にならなかった。
「――ライボルトサンダー」
雷のように跳躍し、一人の敵に狙いを定めて棒を振り下ろす。轟音とともに、敵が吹き飛んだ。
「――クリスタルバーム」
ルートが弓を構える。放たれた矢は、正確無比に、次々と敵の急所を撃ち抜いていく。
「化け物か……!」
残った兵士たちが、後退り始める。
エナガは、何も答えなかった。ただ、冷たい瞳で、次の標的を見据えるだけだった。
三人の連携は、これまでのどんな戦いよりも、圧倒的だった。言葉すら交わさないまま、技の発動だけで意思疎通しているかのような、迷いのない動き。感情を失った代わりに、躊躇いもない。
戦況は、瞬く間に一行の優勢へと傾いていった。
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少し離れた場所から、その様子を見つめる師匠の姿があった。
「……たいしたもんだ」
呟く声には、誇らしさと、それから、かすかな懸念が混じっていた。
デラード化した三人の目には、もう、いつもの表情がない。
「……あとで、ちゃんと戻ってこいよ」
師匠は、静かにそう呟いた。
戦いは、一行の勝利で終わろうとしていた。だが、これが、まだ始まりに過ぎないことを、誰も知らなかった。
今日はここまで!
ノシ




