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第22話:戻らない記憶



砦を後にした一行は、野営の準備をしながら、次の手がかりを探していた。


「……ねえ、ルート」


焚き火の前、エナガがぽつりと切り出す。


「あんた、やっぱり様子おかしいわよ。あの砦から出てきてから、ずっと」


「……気のせいだと言っただろ」


「気のせいで済むレベルじゃないでしょ。ぼーっとしてるし、返事も遅いし」


あけびも心配そうにルートの顔を覗き込む。


「本当に、大丈夫……?」


「……」


ルートは、何かを言いかけて、やめた。


その様子を見ていたファードが、おずおずと手を挙げる。


「あの……もしかしたら、僕の魔法、力になれるかもしれません」


「あんたの、記憶を戻す魔法……?」


「はい。もしルートさんが、何か忘れちゃってるなら」


エナガとあけびが顔を見合わせる。


「……お願いできる?」


「はい、任せてください」


ファードはルートの前に立ち、両手をそっとかざした。


「集中しますね……」


淡い光が、ファードの手のひらから溢れ出す。ルートの頭上を包み込むように、光の粒子が渦を巻いていく。


「……っ」


ルートが小さくうめく。頭を押さえ、うずくまるように身を屈めた。


「大丈夫!? 無理しないで!」


「いえ、まだいけます……! もう少し……!」


光がさらに強さを増す。だが、しばらくして、ファードの表情に困惑が浮かんだ。


「……あれ」


「どうしたの?」


「戻らない……。何か、あるはずなのに、届かない……」


ファードは、額に汗を浮かべながら、もう一度集中する。


「変です……こんなの、初めてで……」


「戻らないって、そんな……」


エナガの声が、不安げに揺れる。


しばらくして、ファードは肩を落とし、光を消した。


「……ごめんなさい。僕の力じゃ、これ以上は」


「……いや、ありがとう。無理させて悪かったな」


ルートが、力なく笑う。だが、その目は、どこか別のものを見ているようだった。


「俺は、大丈夫だ。……多分、大したことは、忘れてない」


その言葉に、誰も気づかなかった。


――ルートの記憶は、既に、戻っていたことに。


焚き火の炎に照らされたルートの顔には、これまで見たことのない、深い陰りが差していた。彼だけが知っている、まだ誰にも言えない何かを抱えたまま。


「……さて、みんな。今日はもう休もう」


師匠の声が、静かな夜に響いた。誰も、その日の眠りが、これまでとは違う重さを持っていることに、気づいていなかった。

ノシ

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