第21話:見てはいけないもの
魔王軍の気配は、廃墟となった旧砦の奥へと続いていた。
「……ここか」
ルートが、崩れかけた城壁を見上げる。
「気配、この中で強くなってる。慎重に行くぞ」
一行は、砦の中へと足を踏み入れた。薄暗い通路、湿った空気。誰も、何も言わなかった。
「……あそこ」
先頭を歩いていたルートが、ふと足を止めた。奥の広間から、かすかな光が漏れている。
「私が見てくる。お前らはここで待て」
「え、一人で!?」
「気配を殺すなら、一人の方がいい。……すぐ戻る」
ルートは、静かに広間へと近づいていった。
物陰から覗き込んだ先――そこには、想像もしていなかった光景が広がっていた。
奪われたはずの魔法石が、奇妙な装置の中心に据えられている。そしてその周りに、無数の書物、古い記録、そして――
「……これは」
装置に映し出されているのは、どこか見覚えのある光景だった。幼い頃のエナガ。修行の風景。師匠との日々。
「……なんで、こんなものが」
ルートの喉から、掠れた声が漏れる。
装置の奥、影の中から、静かな声が響いた。
「……見られたか」
「なっ……!」
振り返る間もなく、ルートの体は闇の中から伸びた何かに絡め取られる。
「離せ……!」
抵抗するが、力が入らない。腕も足も、まるで鉛のように重い。
「悪いが、お前にはここで見たものを、忘れてもらう」
「な、に……」
意識が、急速に霞んでいく。最後に見えたのは、装置に映し出されていた、幼いエナガの――泣き顔だった。
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「……ルート、遅くない?」
広間の入り口で待っていたエナガが、不安そうに呟く。
「様子見に行こうか……」
あけびが一歩踏み出したその時、通路の奥からふらりと、ルートが歩いてきた。
「あ、ルート! 大丈夫……」
「……ああ」
その顔は、いつもと変わらないように見えた。だが、どこか焦点の合わない目で、ルートは短く答えた。
「奥には、何もなかった。空振りだ」
「え、そうなの?」
「ああ」
エナガが、少し違和感を覚えたように首を傾げる。
「……あんた、なんか、様子変じゃない?」
「気のせいだ」
ルートは、それ以上何も語らず、先へと歩き出した。
その背中を、誰も、何が起きたのか知らないまま。
一行は、まだ見つからない石の行方を追って、砦の奥へと進んでいった。
ノシ




