第20話:俺様参上
魔王軍の痕跡を追って森を進む一行の前に、聞き覚えのある声が響いた。
「あけびさーーーん!!」
「え……?」
木々の間から飛び出してきたのは、大会の決勝で見た、あの風のように速い少年だった。
「ファード……!? なんでここに」
「大会終わった後、色々聞いて! あけびさんたちが石を取り返しに行くって! だから僕も手伝いたくて!」
「いや、でも、これけっこう危ないと思うよ……?」
「平気! 僕、足には自信あるから!」
ファードは、目を輝かせながらあけびの顔を覗き込む。
「それに、あけびさんの動き、もっと近くで見たかったし!」
「え、あ、そう……」
戸惑うあけびの横で、師匠が興味深そうにファードを見つめていた。
「ほう。お前が例の」
「あ! あなたが噂の師匠さんですね! よろしくお願いします!」
元気よく頭を下げるファードに、師匠はニヤリと笑う。
「うへへ、威勢がいいな。気に入った」
「師匠、この子、大会であけびと戦った子だよ」
「なるほどな。……で、お前、ただ懐いてついてきただけじゃないんだろ?」
師匠の一言に、ファードの表情が少し引き締まる。
「……はい。実は、僕、記憶を戻す魔法が使えるんです」
「記憶を、戻す……?」
エナガが眉をひそめる。
「はい。誰かが失った記憶を、少しだけ手繰り寄せることができます。……もし、この先で何か忘れちゃった人がいたら、力になれるかもしれません」
その言葉に、なぜかルートの肩がぴくりと動いた。
「……そうか」
「ルート? どうしたの」
「……いや。なんでもない」
ルートは視線を逸らし、それ以上何も言わなかった。
エナガが、少し気になった様子でルートを見たが、あえて追及はしなかった。
「まあ、頼りにしてるわ、ファード」
「はい! 頑張ります!」
こうして、五人と一匹――いや、まだ増えるかもしれない一行は、再び魔王軍の気配を追って歩き出した。
道中、あけびとファードは並んで歩きながら、大会の話で盛り上がっていた。
「あけびさんの、あの技を見切る感じ、どうやってるんですか!?」
「んー、なんていうか、体が勝手に動くというか……」
「僕にも教えてください! 弟子にしてください!」
「え、弟子!?」
「はい! あけびさんみたいに強くなりたいんです!」
あけびが困った顔で頭をかく横で、エナガがくすりと笑った。
「あんたも、とうとう弟子とか取る歳になったんじゃない」
「え、いや、まだそんな……」
一行の足取りは、少しだけ、賑やかさを取り戻していた。だが、その賑やかさの裏で、ルートだけが、何かを抱え込むように、静かに歩き続けていた。
ノシ




