第17話:奪われた強さ
決勝戦当日。会場は、これまでで一番の熱気に包まれていた。
「エナガ選手、あけび選手、決勝の舞台へどうぞ!!」
実況の声が響き渡り、二人が舞台に上がる。対戦相手は、これまでの試合を危なげなく勝ち上がってきた実力者だった。
「行くわよ、あけび」
「うん!」
試合が始まる。激しい攻防、観客の歓声。あけびとエナガの息の合った連携に、会場全体が沸き立っていた。
そして、決着。
「勝者、あけび選手・エナガ選手!!」
割れんばかりの拍手。あけびとエナガは、汗だくのまま顔を見合わせて笑った。
「や、やった……! 優勝だ……!」
「言ったでしょ、負ける気しないって」
司会者が、優勝景品の魔法石を掲げようとした、その瞬間だった。
――バキィッ
会場中央の展示台が、轟音とともに砕け散る。
「な、なに……!?」
黒い霧のようなものが渦を巻き、その中から、いくつもの人影が現れる。
「なっ……!」
観客の悲鳴が上がる中、ルートが素早く舞台に飛び乗り、杖を構えた。
「魔王軍……!」
黒い霧の中心、ひときわ静かな声が響いた。
「――失礼する」
姿は見えない。ただ、展示台の上に安置されていたはずの魔法石だけが、するりと霧の中に消えていく。
「待て……!」
ルートが放った一撃は、空を切った。霧はもう、跡形もなく消えていた。
しん、と静まり返る会場。
「……嘘、でしょ……」
エナガが、空になった展示台を呆然と見つめる。
「あんなに、頑張ったのに……」
あけびの声が震えていた。ここまで積み上げてきた予選、決勝、その全部の先にあったはずのものが、一瞬で消えてしまった。
「……くそ」
ルートが、悔しそうに拳を握りしめる。
「気づけなかった。俺が、もっと警戒していれば……」
「あんたのせいじゃないわよ」
エナガが静かに言うが、その声にも力がなかった。
会場がざわめきの中、大会運営の代表らしき人物が、慌てた様子で三人に駆け寄ってきた。
「き、君たち……! 頼みがあるんだ……!」
「……?」
「あの魔法石は、この国にとっても重要なものだった……! ここまで勝ち上がった君たちになら、託せると思う……! どうか、奪還してもらえないだろうか……!」
あけびとエナガ、ルートが顔を見合わせる。
「……」
「……やるしかないでしょ」
エナガが、拳をぎゅっと握った。
「私たちの優勝景品、勝手に持っていかれたままなんて、絶対に許さない」
「僕も……! 絶対取り返す……!」
ルートも、静かに頷いた。
「……俺も行く。今度こそ、逃さない」
こうして、三人の――いや、まだ知らないもう一人を加えた、奪還への戦いが始まろうとしていた。
ノシ




