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第16話:勝ち進め

第16話:勝ち進め


予選を勝ち上がり、あけびとエナガは、ついに決勝の舞台に立つことになった。


「ついに決勝かぁ……」


「何ビビってんのよ。ここまで来たら、あとは勝つだけでしょ」


「そりゃそうだけど! でも相手、けっこう強そうな人ばっかりだったし……」


対戦表を見上げるあけびの隣で、エナガも真剣な顔で全体を見渡していた。


「ルートも順当に勝ち上がってるわね。あんたと私、それとルート……このまま行けば、面白いことになりそうじゃない」


「面白いって、まさか三人で当たったりする……?」


「さあね。でもまあ、誰と当たっても負ける気はしないけど」


ふふん、と余裕の笑みを浮かべるエナガ。あけびもつられて笑った。


「よーし、僕も頑張るぞ!」


会場全体が、決勝を前に盛り上がりを見せていた。



---


同じ頃。遠く離れた保養地。


「はぁ〜〜〜、極楽極楽……」


温泉に浸かりながら、師匠はだらしなく伸びをしていた。


肩に乗ったスプレッドが、心地よさそうに目を細めている。


「なあスプレッド、たまにはこういうのもいいよなぁ。うへへ」


「ちみ……」


「あいつらも今頃、大会で頑張ってるだろうなぁ。……ま、あの三人なら心配いらんだろ」


師匠は湯船の縁に頭を預け、目を閉じた。



---


数刻後。


「……ん?」


師匠がふと目を開けた。肩の上のスプレッドが、いつのまにか小さく震えている。


「どうした、スプレッド」


「……ちみ……ちみぃ……」


いつもの、あの弾んだ鳴き声じゃない。師匠はスプレッドを持ち上げ、まじまじと見つめる。


その体の色が、ほんの少しだけ、薄くなっていた。


「……おい」


師匠の声から、一瞬で緩さが消えた。


「なんだこれ……」


スプレッドの色は、まるで水で薄めた絵の具のように、じわじわと透明に近づいていく。震えは止まらない。


師匠は湯船から立ち上がり、濡れたまま考え込む。


「……この感じ。まさか……」


脳裏をよぎるのは、ずっと昔に感じたことのある、あの不快な気配。


「……冗談だろ、おい」


師匠の顔から、完全に笑みが消えていた。


「……悪い、スプレッド。予定変更だ」


師匠は手早く荷物をまとめ始める。その手は、いつになく速く、そして——ほんの少しだけ、震えていた。



---


大会会場。決勝の対戦カードが発表され、観客席がどよめく中、あけびとエナガは、まだ何も知らないまま、決勝の舞台へと向かっていた。

ノシ

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