14話
詩乃ver
私がパラレルのケイにあったかもしれないと話すと、全員が困惑したようにしている。
「詩乃ちゃん、それ本当?」
「はい!前ケイに用があって来たお面の人がいたじゃないですか、それがパラレルのケイだったんじゃないかって...」
私は1ヶ月程度しか経っていないのにも関わらず、遠い昔を思い出すようにあの時を振り返る。
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1ヶ月前
あれはたしか、学校で死体に火を放った日で何故かは覚えてないけど、ケイに怒って理科準備室に先に帰ってた時。
「まったく...ケイって年下が好きなの?アズサちゃんや聖ちゃんとイチャイチャして...別に好きにすればいいけど...」
ぶつぶつ言いながら、理科準備室に入ると先客がいた。上下黒のジャージを着て、髪の毛は真っ白に染め、顔は見えないが一目見た姿だけで危険とわかる人物だった。
「ひっ!?だっ誰!」
私の声に、ゆっくり振り返る相手。急に後ろから声かけられたらもうちょっと驚かない?
相手は何故かお面を被っていて、顔はわからないが穴から見える目は鈍い赤色に染まっていた。
彼は私の方を見ると、固まって動かなくなった。
「...し...あぁ、ごめん。いきなり来て驚かせたな。お、アズマに用があって来たんだが、あいつどこにいるかわかる?」
「ケイの友達?ケイに友達なんていたのね」
「は、はは、なんだかな...何て、言えばいいんだろうな」
相手は苦笑いしてるような声で、返してくる。
「...ちょっ、いきなりどうしたの!?」
「へ?」
「へ?じゃなくて、あなた泣いてるわよ?だ、大丈夫?」
お面越しに見える目には、涙が浮かんでいた。
彼から感じていた危険な雰囲気はいつの間にか消えていた。
「あ、あぁごめん。いきなり泣き出してキモイよな」
「こんな世界だし、泣きたくなるのもわかるけど。いきなり泣いた理由がわからないわ」
「...君が、俺の彼女に似てたから」
「そんな理由?あ、ごめん。もしかしてあなたの彼女は...」
「いや?生きてるよ?最近会えてなかっただけ」
「生きてるんかい!」
初対面の相手にツッコむなんて、私ケイに似てきたかしら?いやね。
私のツッコミに笑いながら彼は力強い声で答える。
「生きてるさ、絶対。俺が死んでも助ける」
「...そう、助かるといいね」
「...ありがとう」
真意は聞かないでおいた。本当はどっちなのかわからないけど、初対面でずけずけと聞けない。
「あ、ケイに用なのよね?今呼んでくるわ」
「あ...」
「え?」
「え?」
私が部屋を出ようとした時、相手は私の腕を掴んで引き留めた。私より相手が自分の行動に驚いているようだった。
「...ごめん、もう少しだけ話さないか?」
「別に、いいけど」
決して初対面の男に心を許す私ではない。それなのに、最初に見た時の殺伐とした雰囲気が消え、不思議と相手の話を聞きたいと思ってしまった。
「じゃあ、ソファに座って。立ち話もなんだし」
「あ、あぁ...ありがとう」
何故かまた涙を流して座る相手、泣き虫なのかしら?
「そういえば、まだ自己紹介もしてなかったわね。私は神崎詩乃、よろしく、なのかな?」
「あぁ、俺は...まあ龍とでも呼んでくれ」
「厨二病?それで、何を話したいの?」
「特にこれといって話題はないんだが...少し、詩乃とここで話したかったんだ」
「な、何?ナンパ?」
いきなりスッと名前呼びされたから驚いた。なんか、慣れてない?
「ははっ...言ったろ、俺にはお前並みに可愛い彼女がいるって」
「じゃあ浮気ね、その彼女に言っておくわ」
「勘弁してください。でも、話したかったのは本当っていうか、なんか弱音を吐きたくなったんだ」
手を組み、座りながら俯く彼。
その姿に少しドキドキする。さっきからなんなのだこれは、どこから見ても怪しい風貌なのにどうして私はこの人の言葉が素直に入ってくるんだ。
パンデミックが起きてからの彼の話を静かに聞いた。
それはとてもじゃないけど、私だったら耐えられないような話だった。
生きるために生きている人間も殺したこと。みんなのために生きていたのに友人や先輩、先生や仲良くなった警察の人たちが目の前で次々と死んでいき、遂には彼女まで噛まれ...。
聞くだけで胸が締め付けられ、私も何故だか涙が出てきた。
「色々俺なりにやったんだ...これでも頑張ったんだよ。間違いなく死んだら地獄行きみたいなことを何十回としてきた。でも、誰も助けられなかった。生きる気力のない俺だけがまだ生きてる...なぁ詩乃、ここまで苦しむなら俺はもう死んだ方がーー」
ガバッ
気がつけば私は彼を抱きしめていた。
他人事ではない、自分も彼の人生に関わっている。何故かそんな気持ちになった。
「駄目!死ぬのは許さない!あなたの彼女はまだ可能性があるんでしょ?言ってたじゃない!死んでも助けるって、なら助けなさい!もうここまでやったあなたに頑張れなんて言えない。でも頑張りなさい!」
ごめんなさい。
もう辞めていいよ、頑張ったねって彼の頑張りを認めてあげたい。でも私は会って数分しか経ってないこの人に生きてほしいと心から思った。
私の言葉なんて、彼に何の活力も与えられない。
それでもーーー
「...流石だな。ありがとう、俺はまだ頑張れるよ」
それでも彼は再び立ち上がった。
「詩乃、これはお礼だ。今俺だけが知っていることを話す。会ったばかりの俺は信用できんかも知れんが、できたら聞いてくれ...アズマのためにも」
「わかったわ、約束する」
「まずはそうだな...詩乃、お前の幼馴染な、あいつ生きてるぞ」
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それから、私はいくつかの話を聞いた。何回か質問しても『それは、俺の経験則だ』としか答えてくれなかった。
最後に彼は『信じなくてもいい』と締めくくっていたが、私は信じることにした。
「話してくれてありがとう、でもどうして私に?」
「...彼女と約束したからな」
「何を?」
「話すこと」
「...どういうこと?」
「まあ、叶わないと思ってたことが叶ったお礼だと思ってくれ。ん?そろそろアズマが来そうだ。これでお別れだな」
彼がそう言うと、本当に理科室のドアが開けられた音がした。なんでわかったんだろ?
彼とはもう会うことはない、そんな直感が頭をよぎる。私と彼が出会うのはほんの一瞬だけだったという確信があった。
「わかったわ、最後に何か言うことある?」
「もうないよ、十分言わせてもらった。ありがとう」
それから彼と会うことは一度もなかった。
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私が話し終えると、みんな考え込むような仕草をしていた。
「まさかあれがケイだったなんて...」
「話してくれてありがとう詩乃ちゃん。それにしても、アズマくんは自分で自分のことお面変態野郎て呼ばせてたなんて...」
そこ?
そこ




