12話 記憶喪失ですかい?
詩乃ver
「ごめんなさい、あなた達は誰なんですか?」
私の目を見ながら、ケイは問いかける。
「アズマくん、あなた流石に冗談でもーー?」
ツカツカとケイに歩み寄り、菜奈さんが張り手をしようとして止まる。
「あの、なんですか?僕はアズマって言うんですか?」
「...目が、濁ってない?」
その言葉を聞き、全員がケイの目を覗き込む。その様子に引いたように体を逃そうとするケイ。でもみんなで掴んで見てるから身動きが取れないようだ。
「あの...ちょ、みなさん近いんですけど」
「たしかに」「またいつものアズマ氏の冗談と思ってましたが」「おい京次、お前のアイデンティティ無くなってるぞ」「アズマっちなんか変ー」「けいじ?おめめだい?」「おいアズマ、大丈夫か?」「キシシ、まあ生きてたらボクは何も言うことないね」
「な、なんなんですか皆さん!やめてください!」
ケイ(仮)は叫んで少しでもみんなと少しでも距離を取ろうとする。私はショックを受けて、動けずにいた。せっかく目が覚めたのに、みんなのこと忘れてたなんて、ケイがあまりにも可哀想過ぎて涙まで出てくる。
「なんで!!!」
私の叫び声で、みんなが驚いたようにこちらを向く。
「なんで皆んなそんなに軽く受け止めてるの!?ケイが記憶なくしてるんだよ!?...悲しくないの?」
「だって...なあ?」「うん」「大丈夫だよ詩乃っち」
『どうせアズマのことだから記憶取り戻してくれるよ』
「あ...」
菜奈さんが近づき、私の頭に手を置く。
「詩乃ちゃん、たしかに私たちもショックだけど。それよりもアズマくんがまた戻って来てくれたことが嬉しいの。生きてればなんとかなるし、アズマくんが思い出すまで私たちが頑張ればいいだけじゃない?」
まだまだ私の覚悟が足りなかったようだ。
そうだよね、ケイが生きてればまずはそれでいいよね。
「皆んなごめんなさい...取り乱してしまって」
「神崎が謝ることねえよ。京次が記憶なくしたのが悪い」
「あの...以前の僕ってどんな扱いだったんですか?」
「うん?お前は俺の親友だ。昔お前がいじめられてる所を俺が助けてやったんだぜ?早く思い出せ」
「あ、そうなんですね。ありがとうございます」
雑に扱う朝比奈くんを見て、私もまた覚悟を決める。ケイが記憶を取り戻して、告白の返事を聞く。たとえ戻らなくてもまた1から好きだと伝えて一緒に生きていく。そんな覚悟。
「ケイ、私は神崎 詩乃っていうの。よろしくね」
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みんながケイに自己紹介を終えて、ここまでの経緯を話す。
「はあ、そんなことがあったんですね」
「うん、ボクが記憶を失くす前のアズマと最後に一緒にいたんだけど...たぶんアズマはバンジョーの心臓を食べちゃったんだ。それで細胞は死滅しちゃったけど、バンジョーの能力のおかげでなんとか持ち堪えたんじゃないかな?」
「私もその説を推します。実際帰ってきたアズマ氏は皮膚が爛れてギリギリ生きている状態でしたが、今じゃもう完治してますし」
「じゃ、じゃあ僕はもう死なない体になっちゃったんですか?」
「いや、バンジョーとやらと同じように誰かに心臓を食べられたらさすがに死ぬんじゃないですか?」
「えぇ...」
みんなとおどおどしながら話すケイを見て、菜奈さんが口を開く。
「なんか、想定はしてたけど...こんなアズマくん違和感があるわね」
「え?そうですか?私はちょっと可愛いと思いますけど」
「詩乃さん...ケイくんのこと好き過ぎでしょう...もうみんなにバレてからオープンになってますよ」
「キシシ、ボクももちろん元に戻って欲しいけどこっちのアズマもアズマで悪くないね」
ネコくんも同じ意見みたい。そうよね、なんか保護欲みたいなのが掻き立てられるよね(あなただけです)
「そう?私はやっぱり腐った目で悪態つきながら『やれやれ』ってカッコつけてるアズマくんの方が落ち着くわ」
「会長さん...話聞いてて思ったんですが、僕と会長さんの関係って酷くないですか?」
「何言ってるの!私たちは愛のムチで築かれた絆があるじゃない」
「あ、ハイ」
ケイは反抗することを諦めたようだ。なんか今の前のケイっぽい...。もう記憶戻ってない?
バンッと扉が開き、見回り警備に行っていた田中くんと西くんが遅れて部屋に入ってくる。
「アズマ大丈夫か!?すまん....俺のせいで」
「旦那ー!記憶なくしちゃったって本当ですかい?あっし旦那以外知り合いいないから気まずいっすよ!」
「ごめんなさい、覚えてないんです。あなたたちにも迷惑をかけてしまって、重ね重ね申し訳ありません。話を聞いていた感じ、田中くんと西くん...ですか?改めてよろしくお願いします」
「「...誰?」」
2人ともケイの変貌に驚いていた。
旦那?
...旦那?




