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パンデミック起きたけど生き残る気力がない  作者: ちぐい
三章 おひかえなすってヤクザ編

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11話 愛してるぜぇですかい?

ネコver


二度目だった。

彼に命を救われたのは、これで2度目だった。


「ア...アズマ?」


バンジョーの後ろには、全身血まみれになり満身創痍ながら佇んでいるアズマがいた。手も血だらけになり、右足がひしゃげてしまっている。まさか...下から手だけで登ってきたの?


「まじかぁ、すごいなアズマはぁ、あれで生きてるってさぁ!」


スパンッ


バンジョーが残った左腕で振り返りながらアズマに裏拳を繰り出すーーしかしアズマは体を沈ませながらドスでバンジョーの左肩を切り落とした。

そこでボクはやっと違和感に気づく。


「くっ...痛いなぁ、んん?」


「はぁ...はぁ...やっとか不死身野郎」


先程までなら、バンジョーはすでに再生してまた殴っていたが今回は腕が生えてこないようだ。やっとエネルギー切れ?

バンジョーに近づいたアズマは、後ろからぐいっと首を締め付ける。


「ここまでかぁ、でもどうやって俺を殺してくれるんだぁ?」


「さっき俺に飛び降りた感想聞いてたろ、お前も同じ目にあってもらう」


「え?アズマ?まさか...」


「あはははっ、アズマぁ、ホントにお前は最高だぁ愛してるぜえ?」


2人は窓際まで移動し、窓枠に腰掛ける。


「うるせえよタコ。お前、自分が愛してるからって他人から愛されるわけねえだろ」


「まっ、待ってアズマ!下手したらアズマ死んじゃうよ!?」


「じゃ、ネコまた下で会おうぜ。愛してるぜえー」


「馬鹿!!」


ボクは悲鳴をあげている体を起こして急いで下に向かうことしかできなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アズマver


窓から飛び降りて、バンジョーを体の下にするように落ちていく。

意外にもバンジョーは静かなままだった。

一瞬にも数秒にも感じる落下の中で、確かに聞こえたバンジョーの声があった。


「アズマ、ありがとよ。これでやっと家族に会える」


ドパンッ


人を下に敷いても衝撃が緩和されるわけじゃないと気づく瞬間には、体内の内臓が全て持ち上がり呼吸ができなくなる。


「ガハッ」


激しい光が視界に散らばり、目の前が見えなくなる。そして耳鳴りが響き、周囲の状況もわからない。

流石にこれでバンジョーは死んだはずだ。


でも俺も限界かも、体が動かないのは怪我のせいなのかエネルギーの枯渇によるものなのかすらわからない。


目が見えない中、微かに動く手で何か食べられるものを探り、口に含む。


「グバッ」


次の瞬間、体が沸騰するように熱くなる。待て、俺は何を食べた?


食べる手を止めずに口に入れ続ける。どうせ死ぬなら食えるもん食って死んでやる。


「ーー!ーー!」「ーー?ーーー!」「ーーー!」


耳鳴りの中、誰かの声が聞こえてくる。1人じゃない、何人もの声が聞こえてくる。

ちょっと眠たいから、静かにしてくれ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

詩乃ver


ケイが帰って来て2週間が経った。

あの時は大変だった。田中くんも帰ってきたし、どうせケイは帰ってくるだろうしまたみんなで生きられるねなんて話していた矢先、小堀先輩が血だらけのケイを抱えて来た時私は泣き崩れてしまった。

ハツメちゃん曰く心臓は辛うじて動いているみたいだから、できる限りの処置をして様子を見るしかないとのことだ。


「ケイは少し働きすぎたからね、ゆっくり休もうね」


彼の手を握り、話しかける。

今のケイは全身に包帯を巻かれている。2週間前の状態では皮膚が爛れ、全身を覆わないといけない状態からだった。今もところどころ血が滲み、替えてあげたいけど包帯もたくさん使えるほどないからなるべくキープして限界がきたら替えるらしい。


「でも、そろそろ起きないとまた菜奈さんに怒られちゃうよ?」


2週間付きっきりで看病し、話しかけ続けているが、ケイからの回答は一向になかった。

今回の一件は菜奈さんにも応えたようで、『私が間違えた。甘くみすぎていた』と何度も言って人前も憚らずに泣いていた。小堀先輩が慰め続けて、今では普段通りに振る舞っているが、まだ本調子ではなさそう。

菜奈さん以外にも数人が気分を落としている。特に根本くんはあれから一度も笑わなくなった。でも誰よりも働き、目には強い力を宿している。『アズマの分もボクが働いてカバーしないとね、それで目が覚めた時感謝してもらうんだ』と話していた。


「根本くんは強いね、私はまだ無理かな...ねえケイ、まだ何も約束を果たせてないよ?お願いだから目を覚まして」


涙が出てくる。涙が枯れることなんてないのだろうか。


グッ


「!?ケイ!?ケイ!」


彼の手に力が入り、顔を見ると目が開かれていた。ケイは眩しそうに周囲を見渡し、私と目が合う。


「待っててね!今ハツメちゃんたち呼んでくるから!」


私は急いでハツメちゃんたちを呼びに駆け出した。


みんなを呼び集めて、ケイの元に戻ると、2週間意識不明だったにも関わらずケイは体を起こして顔の包帯を剥がし終えていた。顔しか見えないが、彼の肌は元に戻っているようだ。

ボーッとした目で一点を見つめていたが、私たちに気づくと胡乱な目でこちらを見てきた。


「ケイ!」「アズマ!」「アズマくん!」


十数人でケイに抱きついて、彼の目覚めを喜んだ。


「どういう状況...ですか?」


彼が口を開く。どうやら困惑しているようだ。


「あなた2週間も寝てたのよ!もう心配させないで!」


「アズマ!もう離さないからね!」


私と根本くんがアズマに対して詰め寄ると、彼は驚いたように身を引いていた。


「はあ...なるほど、そうなん...ですね。ごめんなさい」


「「「「...?」」」」


その場にいる全員が、違和感を感じる。


「...ケイ?」


「ごめんなさい、あなた達は誰なんですか?」

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