いざ、夢の中へ
迎えた当日、傘岡から快速で渟足へ出た三人は、目当ての「はくせつ」の出るのを待って駅の構内をあてもなく彷徨っていた。
数年来続く改築工事も残すところわずかとなり、それまで地上にあった在来線ホームは、新幹線に合わせて高架化され、連絡改札でスムーズに乗り継げるようになっていた。国鉄時代の古びた、貧相なコンクリート建てのイメージが強かった真樹は、名店街やレストランなども含めた、宮殿のような今の渟足駅にすっかり見入っていた。
「兄ぃよせよ、まるでお上りさんじゃないか」
「やかましいな、ちょっと黙ってろ。――しかしなんだなあ、新聞やニュースで見て知ってはいたけれど、こんなに立派な駅舎とは知らなかった」
コインロッカーに荷物を預け、旅姿のままうろつく真樹を坂東医師はのどかに、かたや新司は冷ややかに見つめている。ひとしきり見て回ったのち、ホームのある二階へ戻り、改札前の小さなカフェに腰を下ろした三人は、今後のスケジュールを改めて確認することにした。
「車両の入線を待って、さっさと薬は飲んでしまうことにしよう。理想的なのは三人同時に寝入ってしまうぐらいだが、まあ、そいつは難しいだろうなあ」
「で、気づけば車窓も見ないままに金沢ってわけかあ。夜眠れるのかな、そんなんで」
「さあてな、そいつはわからん……」
睡眠導入剤に差しさわりがないよう、コーヒーの代わりにオレンジジュースを飲んでいた真樹は、しきりに壁の時計を睨んでいる。六時発の「はくせつ九号」は金沢からの折り返しではなく、渟足機関区の車庫から出てくるので準備には相当時間がかかる。どう見積もっても、五時四十分ごろにならなければ車内へは入れそうにもなかった。
「待つ身の辛さ、とはこのことか……」
時計の針の進みの遅いのが、今の真樹にはかなり堪えていた。
長尻のカフェから出て、改札の中にある待合室へ移ると、ほどなくして乗車開始を告げる放送がかかった。
「それじゃあ、飲むとしましょうかね」
「ええ。じゃ、あとは夢の中で……」
それぞれ近場でとった指定席に座を占めると、三人は申し合わせの通り、ペットボトルの水で睡眠導入剤を流し込んだ。薬そのものは薬局で買える手ごろなもので、決して強い成分が入っているわけではない。だが、動き回って血の巡りがよくなったせいか、真樹は数分ほど経つと意識にうっすらもやがかかったような感覚になり、だんだんまぶたが重くなってくるのに気づいた。
――あとはもう、どうとでもなってくれ……。
ホームの時計の長針がゆっくり、六時を目指しててっぺんへ近づいているのが見えた。




