表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/28

第13話:『引き抜き攻防戦と、うるさすぎる名刺入れたち』



系列店『JOKER』へのヘルプ出勤から三日後。

クロノ――忠敬は、大学の講義を終えてから重い足取りで『LUXE』のバックヤードへ入った。


「おかえりクロノ〜!!」

「裏切り者!!」

「JOKERで人気出てんじゃねぇよ!!」


レンが笑いながら近づいてくる。


「お前マジで何してきたんだよ」

「ヘルプ」

「それだけで向こうの客が“クロノまた呼んで”って騒いでんの意味わかんねぇんだわ」


黒服まで疲れた顔をしていた。


「今日JOKER側の店長から三回連絡来た」

「嫌な予感しかしない」

「“定期で借りられませんか?”だそうだ」

「断ってくれ」

「もう断った」

「即答かよ……」


忠敬の名刺入れの小人が胸を張った。

『当然!!』

『今やクロノ名刺は系列内レアカード!!』


隣ではレンの名刺入れ小人がキレている。

『うるせぇ!!』

『LUXEのNo.1候補を持っていくな!!』


(お前らまで派閥争いすんな……)



ふと、携帯が静かに振動した。

JOKERのアキからメッセージ


嫌そうにスマホを見る。

『今日営業後ちょっと顔出せない?』


(嫌だなぁ……)





営業後。

結局、 忠敬はJOKERへ連行されていた。


「なんで来たんだ俺……」


店内では、 JOKERのホストたちがやたら歓迎ムードだった。

「クロノさん来た!」

「こっち座ってくださいよ!」

「この前マジ助かりました!」


しかも客まで反応している。

「あっ、クロノくん!」

「また来てたの!?」

「今日LUXEじゃないの?」


忠敬は本気で帰りたかった。


すると、 JOKERのソファ小人たちが大騒ぎしていた。

『うわまた来た!!』

『この兄ちゃん座ると客の機嫌よくなる!!』

『空気が静かになるんだよな!!』


(家具にまで言われるのかよ……)



奥からアキが現れる。


「いや〜助かるわ」

「帰る」

「待て待て」


アキは笑いながら缶コーヒーを投げてよこした。


「そんな警戒すんなって」

「お前絶対なんか企んでるだろ」

「失礼だなぁ」


アキのスマホ小人がコソコソ耳打ちする。

『めちゃくちゃ企んでる』

『今日“クロノをJOKER所属にできないか会議”してた』


(やっぱりかよ)

忠敬は真顔になった。


「帰る」

「待って待って待って」


アキが慌てる。


「冗談半分だから!」

「半分本気じゃねぇか」

「だって惜しいんだもん」


その時、店の奥のVIP席から声が飛ぶ。

「クロノくんいるの!?」


以前ヘルプでついた女性客だった。


「あー!! やっぱ今日いるじゃん!」

「え、マジ?」

「クロノ呼んで!」


一気に店内がざわつく。


JOKERホストたちが頭を抱えた。

「まただよ……」

「客がクロノ見つける速度早ぇんだって……」


レンから電話がかかってきたのは、 ちょうどそのタイミングだった。


『おいクロノ』

「なんだ」

『お前今JOKERいる?』

「……いる」

『客が“クロノどこ?”って騒いでる』

「知らん」

『いや困るんだわ!!』


電話越しに、 LUXE側の悲鳴が聞こえる。

『クロノ卓回れません!!』

『指名客不機嫌です!!』


JOKER側ではアキが爆笑していた。

「取り合いじゃん」

「笑い事じゃねぇ……」


両店の名刺入れ小人たちが、 大喧嘩を始めた。


『クロノはLUXE所属だろ!!』

『いやJOKER向きだ!!』

『静かな接客はLUXE文化!!』

『ヘルプ性能はJOKERで輝く!!』

『引き抜き反対!!』

『客が求めてんだよ!!』


(うるせぇ……!!)


忠敬が頭を押さえた。



その時、ふと近くのグラス小人が呟いた。

『でもさぁ』

『この兄ちゃん、どっちの店でも“ちゃんと客見てくれる”から好かれてんだよな』


別の灰皿小人も頷く。

『しかも本人、自分が人気ある自覚薄いし』

『変にガツガツしてねぇから安心感ある』


『『『あと地味に顔がいい』』』


(最後いらねぇだろ)



その時だった。


LUXEのレンから再び電話。

『クロノ!!』

「なんだよ」

『今から戻って来れねぇ!?』

「は?」

『美咲さん来た!!』

「……げ」


JOKER側のホスト達が吹き出した。

「女王来店か?」

「終わったなクロノ」


さらにJOKERの客まで言い始める。

「え〜帰るの?」

「クロノくんもっといてよ」

「うち来なよもう」

「JOKER永久所属しなよ〜」


忠敬は無言で天を仰いだ。

「……俺ただ静かに大学生活送りたかっただけなんだけど」


だが周囲の小人たちは、 今日も大盛り上がりだった。

『クロノ争奪戦開幕ーーー!!』

『系列二店舗で争奪戦が発生中!!』

『大学生ホスト、まさかの系列戦争の火種!!』

『なお本人に全くその気はない模様!!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ