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 次の日。朝日も眩しい、夏の空っていう感じ。昨日寒かったのが幻のようだ。でも、押し入れは空っぽになっているから夢じゃないよね。


 今日は朝から、故人の服の中でも良さげなものをゴミ袋に入れていく。良さげなものだけにしたけど、少々だめそうなものも有効利用できるかな。あるだけ持っていこうか。引き出しの中を全部袋に入れていく。

 昨日古着を入れたゴミ袋はちゃんと回収したので、再利用している。当然だ。


 Tシャツ、チェックのシャツ、ポロシャツ、カットソーが多い。あー。あったか下着がある。どうしようか。肌着の古着を自分が着用するには抵抗がある。でもこれ温かいんだよね。捨てるのは勿体ないから、一応持っていくだけ持っていこうか。父や祖父の帽子やマフラーも出てきた。どうかな。いるかな。迷ったら持っていこう。


 靴も結構ある。革靴にスニーカー、父と母は登山が趣味だったから、ごつい登山靴もある。おばあちゃんが履いていた柔らかい靴もある。おじいちゃんは意外とスニーカーが多かった。サンダルはどうだろう。いるかな、いやわからない。何が必要かどうかさっぱりわからないから、全部持っていこう。


 古い着物がある。絹の着物は普段着には無理だろう。でも、ウールや木綿の着物なら、布地として使えないだろうか。柔らかい浴衣もある。寝巻に良いかも?まぁいいや。これも、持って行くものとしてゴミ袋に詰めていく。


 服の袋が12袋ぐらい。靴が3袋。着物で1袋だ。押し入れとタンスの中身を全部出して確認することなんて無かったので、最後は変なテンションで“全部もってけ”となったけど、午前中に袋詰めできて良かった。古い家っていろいろ残っているのがわかった。こんな機会じゃないと処分できなかったから、本当感謝。


 懐かしいおもちゃも出てきた。おはじきやお手玉、昔お正月に遊んだカルタや百人一首。トランプ。リバーシ―、ボードゲームもいくつか出てきたけど、これらは後回しだよね。

 客用の座布団もどうにかしたい。持っていくか?使うとこあるかな?


 マルちゃんにちょうどいいぐらいの娘が小さい頃にお正月に実家に来た時に着ていた半纏も出てきた。朱色だけどそう何回も着ていないのでまだ綺麗だ。赤い長靴も履けそうだと思う。マルちゃん喜んでくれるかな。


 台所に何か持っていけるものがないかと漁っていたら、凛子と洋子がやってきた。車から荷物を下ろすのを手伝いにいく。洋子も結構たくさん持ってきたね。

引っ越し用の布団袋に布団が4組。合い物や夏物の服が4袋、靴が2袋、リサイクル店で買ったと思われる子ども用の靴と子ども用のトレーナーやジャージ。


「とりあえず、もう着ないってはっきり断言できるものは持ってきたわ。どうしようかなと迷っていたのは置いてきたわ。断捨離はしたいけど、後悔はしたくないからね。」


「破れてもいないまだ着られる服を捨てるのは罪悪感がいるけど、自分では絶対に着ないだろうと思う服を取っておくって本当面倒。海外へ寄付っていうのもあるけれど、なかなか手が出なかったから、今回は実際目の前で喜んでくれる姿を見ることができてほっとしたかも。」


「そうよね。断捨離って捨てる勇気、使えるものを捨てる罪悪感との闘い。だからといって、フリマアプリ使うのは抵抗があるんよね。」


「そそ、フリマアプリはなんか抵抗ある。騙されるんじゃないかと身構えてしまう。知らない人と金銭的なやり取りが何もかも円満に収まるとは思えない。ひとつでも嫌な取引があったら、きっと心折れるわ。だからフリマアプリは使えないよね。頭の古いおばさんからもしれないけど、無理なものは無理よねー。」


「リサイクル店に持っていくのは出来るけど、リサイクル店ってどれだけ綺麗な服を持っていっても、10円とか20円で買い取りますってなんだかこっちの足元見て値段付けしているのが本当に嫌。捨てるぐらいなら貰ってくれる人がいる方がいいっていうのはわかるんだけどね。昔の親戚中でお下がりって古着回していた時が案外一番良かったのかも。」


「わたしたちが贅沢なのかな。バブルを経験した女ってやつ?」


「あかん、笑ってしまうよ。誰よバブルを経験した女って。世代的にはそうかもしれないけど、わたしたち三人はバブルの最中でも地味で大人しかったよ。ぜんぜん贅沢してこなかったのに、それでも、母の古着を自分で着ようと思えないのは何なんだろうね。」


「今が幸せだからじゃない。三人とも生活に困っていないし。」


「そうだよね。定年まで乗り切ったものね。贅沢もしなかったし、堅実に地味に丁寧に生きてきたからこそ、残りの人生自分の好みの服を着たい。そして、今、異世界の人を助けたいと思った気持ちを素直に実行できる基盤があるのがありがたい。感謝だね。」


「ほんとほんと。」


「異世界に持っていく荷物はこんなところかな。準備できたかな。」


「あ!食べ物の準備ができていない。今日もスープぐらい作りたいよね。」


「わたし自転車で近くのスーパー行ってくるわ。二人はここでお茶飲んで待ってて。」


 そういって、自転車に乗って近くのスーパーにやってきた。今日のスープは鶏ガラでだしをとる予定。地元の人が一番馴染んだ味が良いよね。


 昨日マルちゃんのお母さんと雑談していたら、集落では最近まで鶏を飼っていたらしい。でも、飢えで食べてしまったとか。ひよこで増やせば良かったのにと思ったけど、残った鶏は年を取りすぎて卵を産めなくなってきたのと、鶏の餌も無かったらしい。どれだけ枯渇しているんだろうか?


 小さな集落だったけど、何故食べるものが無くなったんだろう。マルちゃんが“ずっと冬”って言っていたけど、今年は寒波が強かったとかそういうのかな。わからん。ちゃんと聞いてみよう。ずっと援助し続けるのはちょっと違うと思うしね。


 鶏ガラと昨日約束したジャガイモとスープ用に玉ねぎとキャベツと人参を買う。30人を超える分を作ろうとしているので、重い。

 あー。コロッケ売ってる。ここの美味しいんだよね。集落の人にも味わって欲しい。しばし悩む。でも、いい、わたしはコロッケを食べたい。自分だけ食べるには罪悪感がありまくる。だからみんなの分も買う。OK。それでいいよ。


 野菜をどっさり自転車の後ろ籠に載せ、前かごに出来立てのコロッケ。さぁ家に帰ろう。


「凛子、洋子、ちょっと手伝って欲しいんだけど。」


 家に戻って、すぐに二人を呼ぶ。

 物置に置いてあった古い大人が乗る三輪車を、新聞紙を敷いた上を押していって、タンス部屋まで運んでもらう。これは生前母がお買い物に使っていたものだ。


「これ、今、使っていないから、向こうで連絡用に使おうかなと。後ろに荷物結構載るしね。」


「いいね。集落まで5分だけど、歩くと5分って結構あるような気がするしね。」


「ウォーキングって割り切っていけばいいんだけど、急ぎの時は自転車欲しいけど、あの道結構小石とかあって舗装もされていないから、三輪車いいと思う。」


「でしょ。これならこけないし。」


「じゃ、二日目。行こうか。」


「「了解!」」


 向こうに三人で三輪車を押し込み光の中に通す。森の木立の中で三輪車。違和感のあるような無いような。まぁどっちでもいいか。こっちに持ってきちゃったんだし。


「ちょっとマルちゃんの家まで行ってくる。手伝い呼んでくるから、古着とか出しておいてくれる?」


「いいよ。あるだけ運んでおくよ。」


「ありがとう。」


「じゃ、行ってきます~。」


「気をつけてねー。」


 三輪車に乗ると自転車より早くはないけれど、歩くよりましっていう感じ。でも、コロッケ入れてきたので、真剣に漕いでいく。

 小石があってもこけないのでいい感じ。寒いのに、少し上気してくる。歩いて5分だと、三輪車だと3分ぐらいなんだろうか。


「マルちゃん、こんにちはー。おばちゃんですよー。」


「あ、まじょさん、またきてくれたの?」


「そうよ。昨日話していた古着の追加とかあるの。またお手伝いお願いしたいんだけど。」


「トーコ様、いらっしゃいませ。今日もありがとうございます。」


「お手伝いお願いしたいのと、またスープの材料買ってきたから、集会場が使いたいんだけどいいかな。」


「大丈夫ですよ。みんなにも集会場に集まってもらいます。」


「よろしく。」


 昨日と同じく少し期待しているような顔の集落の人たちが集まってくる。料理上手なお母さん代表に今日のスープの材料を渡す。今日は見慣れた材料だから大丈夫だろう。


「コロッケ渡したいんで、並んでもらえます?」


「ころっけとは?」


「ジャガイモの食べ物ですー。ナナヨセさんからだよね。はい。」


 まだ温かいコロッケを紙で包んだものを手渡す。はい。次。はい。

 全員行き渡ったかな?


 少し温かいコロッケを持ったみんなは戸惑っているようだ。何かわからないもんね。これ。

 でも、ここのコロッケは美味しいのだ。では、いただきます!


 みんな、どうしていいのかわからない感じだったけど、わたしが一口コロッケを齧ると同じように真似をしだした。


「お、美味しい!」  


「うまい!!」


「これ、ジャガイモなの?」


「なに、初めて食べた。美味しいー。」


「外がカリカリしていて、中がちょっと甘い。これ本当にジャガイモ?」


 絶賛人気である。当然。美味しいものここのコロッケ。みんなが美味しい顔をしてテンション上がりながらコロッケの感想を口々に話している。良き良き。おやつぐらいにしかならないコロッケだけど、満足してもらえて良かった。


 次は古着を取りに来てくれる人をお願いする。

集会場を見回して、古着これ以上あったら、机の上に乗りそうにないな。どうしよ。何か床に敷くものがあったらいいかな。敷くもの。敷くもの。あー。上敷きが家にあった。6畳用が2本。


 古着の人以外に、上敷きの人も追加でお願いする。皆さん自分たちに利になるためか非常に協力的だし積極的だ。かなりの人が手伝ってくれるそうだ。


「じゃ、古着回収しにいくよ。」


「「「おー!」」」


 自分だけ三輪車で少し早く光の場所に着くと、ゴミ袋に入った古着がごろんごろんと小山になっている。凛子と洋子が頑張っているみたいだ。


「凛子、洋子、ありがとう。みんな連れてきたよ。今度は外で渡してあげて。あー。洋子はちょっと待って、一緒に上敷き持つのを手伝って欲しい。」


「上敷きって何?」 


「ほら、畳の上に敷くカバーみたいなものよ。」


「あー。わかった。田舎のおばあちゃんところで使っていた。あれね。」


「うちにもあるんだけど、もう使っていないから、集会場の床の上に敷いて古着広げたいなって。」


「その方がいいね。古着広げた方が見やすいだろうし。」


「でしょ。少し重いけどよろしく。」


 洋子とえいこらしょと丸めてあった2本の上敷きを外に出す。それを男性に頼んで集会場に持っていってもらう。古着も靴もどんどん運んでもらう。洋子の家の布団も、昨日出せなかったうちの残りの布団も座布団も持っていってもらう。


 全部出し切ったところで、三人一緒に集会場まで歩いていく。本当いい運動になる。これで痩せるといいんだけど。


 集会場に着いたら、まず上敷きを広げてもらう。6畳用2本を広げても、まだ空間は残っている。結構広いなこの集会場。


 昨日の残りの古着も移動させ、今日の古着も男性用、女性用と分けていく。布団と座布団をはしっこに積んでいく。

 靴は上敷きの上ではなくその横に並べていく。この上敷きの上は土足禁止ですってお願いする。


 どどーんと小山になっていく古着に、まわりのみんなのテンションがまた高まっていく。今回は冬着だけじゃなくて合い物から夏物も多い。よって、布地は薄いけど綺麗な色が多い。こっちの世界では見たことがないぐらい繊細で美しく見えるらしい。自分の番がきたら一体どれを選べばいいのか、既に悩みだしていた。


 数的には一人2枚は大丈夫そうだ。ナナヨセさんからまた始まる。ナナヨセさんが、着物を見ている。男物だ。


「ナナヨセさん、それは男物の着物です。羽織って腰に帯で締めるんですよ。」


「息子のゴランは体格が良いからこういうのが良いかしらと思って。」


「ああ、ゴランさん肩幅もあるし、結構がっちりタイプでしたね。普通のシャツは入らないなら、着物いいかもしれないですね。」


「ナナヨセさんの分はどうですか?」


「わたし昨日も良いものをいただいて、これ以上どうしようかと思ってしまって。」


「もし、良ければこのあったか下着どうですか?柔らかいし軽くてとっても温かいですよ。」


「寒いのは苦手なので、下着もいいですね。」


「寒いのがダメならば、スパッツはいいですよ。これです。温かくていいですよ。」


 ついつい自分が冷え性だったもんで、あったか下着を推してしまう。でも、1度着たら脱げなくなりまっせと。ナナヨセさんに試着してもらう。


 ナナヨセさんの家まで着いていき、着替えを手伝う。スパッツは履いたことがない人には意外と着用が難しいのだ。


 はう。ナナヨセさんが乙女のような顔をされる。温かいでしょ。そうでしょ。そうでしょ。ナナヨセさんあったか下着に陥落です。


 ナナヨセさんが選び終わり他の人も一人2枚を順番に選んでいく。今日もみんな順番に並んでいるが、後ろから覗きこんだり、何枚も手に取っては悩まれたり、温かいものにするか、可愛いものにするか真剣に考えていたりと時間がかかっていたので、平行に、靴を選んでもらった。そして靴下。


 布団は残り5組。家族の人数の多い家が引き取るのかと思いきや、敷布団、掛け布団、毛布と1セットを分解して分けていくようだ。ここ集落の人々は思ったより民度が高い。誰一人言い争いもせずに、次々古着や靴に寝具類を選んでいく。公平がいいよね。後で喧嘩しなくて済むし。


「このレースお貴族様みたい。なんて綺麗なの。」


「こっちの服はふわふわで暖かくて色もとても素敵―。」


「ほんとうにこんな新品のような服をいただいて良いのかしら?これが全部古着だなんて信じられない。」


「このチェックという柄のシャツがカッコよくて柔らかくて体に馴染む。今までこんないい服着たことないから緊張する。」


「この靴もいいな。しっかりして歩きやすい。」


「ああ物凄く良い。足にフィットして上等なものだ。」


「これら全部ただでいただいてもいいんだろうか。」


「さっきのコロッケも美味しかったし、やっぱり三魔女殿だよな。」


「これらだけで寒さがかなり和らいだ、感謝しないとな。」


「ほんと嬉しいね。」


 住民は古着でテンションあがりっぱなしだったけど、スープも出来たようで、順次古着を選んで家持ち帰って戻ってきた人々が自分の器を持って並んでいる。今日も美味しくできたようだ。


 ナナヨセさんにこの食べるものがないぐらい逼迫している理由を聞いてみたところ、どうやら魔女のせいらしい。これきた異世界的理由!


 今から約1年前に、この国の王太子殿下の婚約披露パーティがあったらしくて、そこに通常なら春夏秋冬のそれぞれの魔女が招待されるそうだけど、王太子殿下が冬の魔女に対して”冬なんかなんの役にも立たない。必要ないんじゃないか“と招待しなかったらしい。


 それで冬の魔女が怒って”冬の良さがわかるまで冬を留める“ということになって、この国11か月間も冬のままらしい。


 魔女って本当にいるんだね・・・。最初の感想がこれでごめん。


 それにしても、冬の良さがわかるまで継続っていうのもちょっとね。11か月も冬ならば逆に皆が冬を嫌いになるんじゃないって思ったりもした。 


 でも、こう冬が続くなら食べ物が無くなる理由もわかる。それにしても国中が冬って魔女さんって凄い力が使えるんだね。


 うむ。とりあえず冬が終わるまで、せめてこの集落が自立できるように支援したい、そしてできれば、冬の良さを見つけて春を呼び込みたい。こっちは出来たらいいねっていうぐらいだけどね。


「トーコ様、これらの支援ありがとうございます。この素敵な服に靴に布団に食べ物、どれだけこの集落が救われたでしょうか。ありがとうございます。集落を代表してお礼申し上げます。」


 この集落で一番年上のまとめ役のバードさんが挨拶にきてくれた。バードさんもなかなかのイケオジである。こっちの世界は美男美女が多いのかもしれない。凛子が心なしかテンションが高い。


 すべての人にスープも行き渡ったようで、古着等の分配もひと段落したようだ。凛子も洋子も周りの人と談笑しながらスープを飲んでいる。


「バードさん、わたしたちはたいしたことをしていません。故人の捨てる服や靴や布団を引き取ってもらっただけで、こっちも助かりました。スープも少しだけ、できることしかしていません。でも、せっかく出来た縁、これから生きのびるためにも、協力はおしみません。」


「やはり、トーコ様は伝説の異国の三魔女様では。」


「いや、魔女じゃないんですが、伝説は気になります。どんなのですか?」


「言い伝えなのですが、“いつの日か冬が留まる時、異国の三魔女がたどり着き春を呼び込むであろう”というものです。ね、トーコ様リンコ様ヨーコ様のことでしょう。」


「まぁなんか条件がぴったり。うーん。タンスの謎のこともあるし無視できないよね。春を呼び込むための、冬の良さを見つける、やってみようか。」


「何、何?透子何するん?」


「あ、洋子、凛子、今、この国の現状と言い伝えを聞いていて、春を呼び込もうっていう話になったんよ。」


「透子、説明はしょりすぎ!」


「ごめんごめん。」


 ということで、洋子と凛子に今までバードさんに聞いた話を伝える。まるで物語の中の話のようだ。でも、そこに来ちゃったんだよね。わたしたち。えーわたしたち三魔女なの?凛子は美魔女で魔女って言われ慣れているけど、わたしは黒い服きて鷲鼻のおばあちゃんになった気分ー。と洋子がぶちぶちいっていたけどね。


「まずはどうしよう。春を呼ぶ前に冬を生き抜かないと。食べ物いるね。畑にカボチャとジャガイモは植えたんだよね。わたし、冬に強い野菜の種を買ってくるよ。」


「野菜の種は洋子に任せる。わたしは鶏も再度飼った方がいいと思う。肉に卵は必要でしょ。」


「でも、この国全部で、冬が11か月続いているなら、他の場所に鶏が余っているとは思えないけど。」


「それ試してみようと思ったんだけど、日本で有精卵買ってきたらどうかな。ほら郊外に養鶏所あったから、あそこに行けば買えるでしょ。」


「ああ、有精卵ね。いけるかな。」


「やってみないとわからないよ。」


「そうだね。買いに行こうか。他はどうする?」


「冬の良さって何?」


「そこからだよね。日本ならウィンタースポーツ、クリスマスにお正月にバレンタイン。」


「こたつにみかんだよ。やっぱり冬は。」


「露天風呂に雪見酒もいいかも。」


「暖炉の前で編み物とか、キルトとかもいいね。」


「鍋もいいね。それこそカルタ取りとかすごろく、ボードゲームでまったりするのもいいよ。」


「鍋、やっぱりこたつがいいよねー。でも、この集落電気コンセントはないよね。」


「あ、家に豆炭のこたつが物置にあった気がする!」


「豆炭って何?」


「洋子は知らない?豆炭って丸い炭みたいなの。それをこたつに入れると電気なしでも温かくなるんよ。」


「へー、そんなこたつあったんや。」


「私も知らなかったわ。でもいいね。電気を使わないこたつって。」


「戻ったら、物置探してみないとね。」


「あー。そろそろ帰らないと、洗濯物取り込んで夕飯作らないとね。」


「了解。洋子は家族持ちだから無理できないからね。じゃ、帰ろうか。」


「バードさん、ナナヨセさん、マルちゃん、わたしたち今日は帰ります。洋子は無理でもわたしと凛子は明日も来るかも。来たらまた連絡しますね。」


 皆からも感謝の言葉を投げかけられ半纏を着て赤い長靴を履いたマルちゃんに手を振られ家に戻った。“まじょさんごはんおいちかった、ありがとう!”マルちゃんの可愛い声がずっと耳に残っていた。良い一日だった。


 洋子の家まで凛子が車で送っていくそうだ。凛子とは明日も会う約束をした。明日は、豆炭のこたつと有精卵のチャレンジだ。


 魔女だとか、言い伝えとかファンタジーだけど、タンスから行ってみればどこにでもありそうな外国の小さな集落の普通の人に普通の場所だ。

 日本語が通じるからかもしれないけど、なんだかファンタジーの渦中にいるとそう思えないのかもしれない。台風も目の中にいれば無風だしね。そんなこと考えながら今日も寝た。おやすみなさい。



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