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のんべえ令嬢のニッポン飲み歩き!!ーオフの日は異世界から、愛するグルメ天国ニッポンへー  作者: ちくわ族の生き残り


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第9話 北千住② やきとん

◎北千住のやきとん


今のディアーヌには、スウェット姿だから、などという引け目は微塵もない。私は、ただの、等しき酔っ払いだ……!


先程の飲み屋街に戻り、シラフでは尻込みしたいくつかの店のうち、客層が若すぎず良い雰囲気の


【もつ焼き居酒屋 前田屋】


に入って行く。


「いらっしゃいませーっ、お一人?」


快活なおばさんが笑顔で迎え入れてくれる。


「はい。」


「カウンター、奥の空いてるところ、どうぞ〜」


店内は、かなり賑わっている。


「お飲み物、先聞いちゃうね〜」


「あ、じゃあ、えっと、タンサンセット(宝焼酎と炭酸)と梅干し一個、お願いします。」


「梅干しね、はいよ〜」


メニューはその日の刺身や煮魚、定番のつまみ


(ポテサラ・ハムカツ・焼き鯖・冷や奴…)


焼き豚、煮込みなどあり、壁に札が貼り付けられている。


本日のメニューはホワイトボードにある。


《ひらめ刺・佐島真ダコ刺・マグロブツ・アジフライ・自家製さつま揚げ・牛すじトマト煮》


なんだなんだ、最高じゃない!


迷うなあ。


ドリンクが来るまでに最低でも一品は、決めなくては。


「はーい、炭酸と、中ね。氷はそこから取ってね〜何か頼む?まだ大丈夫?」


「あ、真蛸と串でチレ、てっぽう、ガツ、かしら、あと、レバーもお願いします。」


レバーはハズレのお店だと悲しいことになるが、ここは賭けだ。


「タレ塩は?」


「かしらとレバーは塩、他はタレで。」


青いザルに氷とドングが入っており、なんと隣のサラリーマンとシェアのようだ。


梅干しは粒の大きいシソ梅。


ペコリ。


隣の男に頭を下げると、その美しさにサラリーマンは赤面しながらひょこっと顎を突き出すようにして返した。


(格好ダサいのに、可愛過ぎるだろっ)


そんな男の動揺を知る由もなく、ディアーヌはナカにタンサンを入れ、梅を潰して酒を作る。飲む。あぁ……。


周りの喧騒の中に溶け込む、放って置かれている感じがなんとも心地いい。


「はい、タコね」


薄く綺麗に切られた真蛸を、さっそく箸でつまむ。


皮と身の間がプルプルと透明なゼリーのようになっていて、ここが最高に美味しい。


梅割りとも合う。(梅割りに合わないものはあまりない、とも言える)


隣のサラリーマンは、青リンゴのハイサワーにマカロニサラダをつまんでいる。


マカロニサラダはカールしていてネジみたいだ。


(プリプリした、あのパスタ、美味しいのよね。) 


つい、つられて頼みたくなる。


しかし、焼き場で串がクルクルと回されているのに見入っていると、あっという間に焼きとんが運ばれてきたのだった。


「先、塩の方ねー」


「中とタンサンおかわり、お願いします。」

「はーい。」


ひとつひとつが、大ぶりだ。


一瞬見惚れてから、まずはレバーを口に運ぶ。


半生でブリブリのレバーは滑らかで、臭みがなく味が濃い。

塩なので水っぽくならず、旨味が濃縮されている気がする。


追加で来たお酒を入れつつ、お次はかしら。


柔らかくジューシーで、肉を食べている感じがたまらない。


「はいっ。」


と、もはや説明もないが、チレとてっぽうとガツが出される。


チレはニッポンで出会ったとある酒飲みの師匠に教わってから、あれば必ず頼む好物だ。


ガツのコリコリ感、肉厚なてっぽうは表面が香ばしくカリッと中はふわっと、網脂のついた濃厚なチレは感動的な美味しさだ。


どれも、噛めば噛むほど旨味が出てくる。食べ方は人それぞれだが、ディアーヌは、複数の串をバランスよく残しながら食べるのが好きだ。


(あ!!)


「すみません、塩煮込みと、シビレくださいッッ」


シビレも、大好物なのだ。やきとん界の白子。


「あ、ごめんなさいね、シビレはさっき終わっちゃって。」


!!?


「なんと……」


最初にメニューに気がついていれば、間に合ったかもしれない。


後悔しても、しきれない。


涙ぐむディアーヌ。


おばさん店員は、そんなに食べたかったのかと、素直に顔に出るディアーヌを愛おしく思う。


「ごめんねぇ、数が少ないから割とすぐなくなっちゃうのよ。煮込みは並で大丈夫?」


「いえっっ、全然っ、えっと、大で!それと、またこれ、おかわりっ」


涙声で大サイズの煮込みと酒を頼むディアーヌに、聞いていた隣のサラリーマンも思わずキュンとする。


とにかく、今は他の串を楽しむのみ。


隣が頼んだ自家製さつま揚げは中が海老のピンク色でいかにもふわふわしている。


後ろの席では地元らしきおじさんグループが


「ワシントンクラブ行ってきます!」


「いっといれ〜」


などと平和で昭和な会話。


スウェット姿を恥ずかしがっていた、さっきの自分がバカらしく思えてくる。


ここは、周りへの配慮さえあれば、どんな飲兵衛も受け入れてくれる。


格好なんかつけなくていい。


そして、すぐに大きな器にたっぷりの煮込みと、酒のおかわりが出てきた。


塩煮込みはトロトロに煮込まれていて、バターのようなコクがあり絶品だ。


それをレンゲにたんまりよそって頬張るのは、幸福感しかない。


ガーリックトースト(バゲット)も、何気に美味しい。


それに煮込みの汁を吸わせて、余すことなく旨汁を堪能するのだ。


冷めてきた串物は、脂の冷たい甘みが味わい深く、またこれも好きだ。


梅が薄くなってきた分、酒を濃くしながら飲む。


「シビレ、また食べにきてね。これ、口サッパリするわよ。」


と、おばさんがキュウリの浅漬けをサービスしてくれた。


「え、いいんですか!?」


また、今度は嬉しさで泣きそうになる。おばさんはそのピュアな反応に満足して、「いいのいいの」と笑った。


このタイミングの浅漬けが、本当にちょうど良い。あったかいなあ。


どんな人をも包み込んでくれる、そしてそれぞれがそれぞれに愉しんでいる、酒場のこの雰囲気が大好きだ。


綺麗に飲んで食べ終えて、ご馳走様!とその場でお会計。


「お姉さん、可愛い顔して食べっぷりも飲みっぷりもいいわね、気持ち良いわ〜」


「へへ、美味しくて、つい」


「地元なの?またいつでも、いらっしゃいね〜」


「ちょっと遠いのですが、また、ぜひ!」


確かに、地元かと思われるようなスタイルではある。が、不思議とこんなスウェットだからこそ馴染んで楽しめた、そんな気もする。


会計を済ませて、外へ。


「あー美味しかったぁ。」


思わず、声が出る。少し、涼みながら帰ろう。

と、また、コンビニに引き込まれていく。お茶と……


(あーっ!メロンボール!久しぶりに見た。無性に食べたい…!)


思わず手に取る。


コンビニを出て、小さなプラスチックのスプーンでシャーベットを掬う。


駄菓子っぽいけど、意外となめらかで美味しいのだ。


(さっぱりする〜)


スウェットでメロンボール。


完全に、地元民の出立ちである。


北千住、あたたかくていい街だったな。


と、ディアーヌは心満たされて、また異世界へと戻っていくのであった。


もちろん、保湿ケアは忘れて寝た。


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