第8話 北千住① タコ公園飲み
◎北千住で公園飲み
導かれたのは、足立区北千住。
なんと、ちょうどいい……!
(まずは少し、探索してみましょう。)
飲み屋の連なる味のある通り。大衆酒場や焼きとん、海鮮居酒屋、中華、蕎麦、お好み焼きと何でもありそうだ。
しかし、今日のディアーヌはスウェット姿。
自国ではあり得ないような、「エレガント」とはほど遠い格好をしている。
お店に入る勇気がないまま、ひとまずコンビニへ。
ビールが良いなぁと冷蔵ショーケースを見るが、保守的な店舗のようでほとんど定番商品がメインだ。無難に黒ラベルにするか、いや。
せっかくなので、季節ものや新商品を飲んでみたいような気分だな……
と、上の方を見るとピンクの熊のイラストが奇抜なラベルのビールを発見した。
今日は、攻めて行こう。
安パイも確保しておきたいので、ディアーヌ御用達の「白角水割り」の缶も手に取る。
あとは、少しだけつまみを。
惣菜のコーナーを見る。
イカ焼きや砂肝、鯖おろしにネギダレ鶏、枝豆など、最近のコンビニは酒飲みにたまらない商品を揃えている。
恐ろしいくらいである。
しかし、本日のスウェットディアーヌは、「良いもの」を食べたいわけではない。
なんというか、雑で素っ気ない、でも心に寄り添ってくれるような、そんなお供が欲しいのだ。
“選ばれたのは、ちくわでした。”
5本入りのちくわ。
高タンパク低価格、実は、ディアーヌの大好物なのである。
それとビールと水割りを持ってレジへ行き、お会計を済ませ、コンビニを出る。
どこで飲もう?
なんだか、ワクワクする。
どこかベンチか、公園があればベストだな。
こういうのは、大体勘を働かせれば見つかるものだと、根拠のない自信を胸に歩き出す。
ディアーヌの研ぎ澄まされた勘によって、良さそうな公園はすぐに見つかった。
【タコ公園】
(ここにもタコ公園、あるのね。ここのタコ、なんか間抜けで可愛い顔。)
素晴らしいことには、人がいない。
(よし、ここに決めた!)
と、ディアーヌは滑り台になっているタコの、頭の部分に登っていく。
そこに、ちょうどいいスペースがあるのだ。
かまくらにいるような、ちょっとしたドキドキとワクワクが気分を高揚させる。
そこで、ビニール袋から例のド派手な缶ビールを取り出し、「プシュッ」と。
「っあー」
ホップの苦味が鮮烈で、華やかなビールだ。ちくわには合わないな、とそのまま飲み干してしまう。
スウェット姿の美少女が夜のタコの滑り台の中で飲んでいるーーかなり、シュールな画である。
ちくわの袋を開封する。
かじる。
コンビニのちくわは、全てにおいてバランスが良い。
素っ気ない寄りのプリプリ感、旨味、甘み。どれをとっても平均的で、悪く言えば印象に残らないのだが、こんな夜には安心感を与えてくれる。
それに、白角水割り(缶)。
最高に穏やかである。これを、エモいというのだろうか。(言わない)
ぼんやりとそれらを完食し、ディアーヌは滑り台を滑吏、立ち上がった。
(行ける!!!)
ディアーヌはお酒の力も借りて、いざ北千住の飲み屋街へと足を向けたのだった。




