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信じていた仲間に処分された俺、禁忌スキル《奪還の王》で最強になる ~奪われた力も居場所も、今度は全部取り戻す~  作者: 夜天 颯
第三章 帰る者

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55.足りないもの

深部制御核を起動させたあと、三人は一度その場で状況を整理することになった。


 完全起動には足りないものがある。

 その候補を探すためだ。


 ノアが閲覧盤代わりの補助板を立ち上げ、制御核と接続する。

 青い線が床に広がり、簡易的な周辺図が浮かび上がった。


『不足しているのは補助伝達部品、または起動補助鍵の可能性が高いです』

「ざっくり言うと?」

『核の力を上へちゃんと流すための部品です』

「最初からそう言え」

『改善努力中です』

「お前、ほんとそれ好きだな」


 セレスが補助板をのぞきこんだ。


「この辺り」

「ん?」

「少し、明かりが薄い」

「薄いって」

「死んでるんじゃなくて、足りてない感じ」


 奏真はその言葉に目を細める。


 図の一角、制御核のすぐ外側にある小区画。

 たしかにそこだけ青い線が弱い。


 アリシスが反応する。


 補助保管区画の可能性。

 伝達部品残存率:中。

 小規模防衛反応あり。


「防衛反応あるのか」

『はい。ただし深部守護体よりは下位の可能性が高いです』

「今の“下位”あんまり安心感ないな」

『奈落基準では軽度です』

「だからその基準が怖いんだって」


 奏真は図を見つめたまま考える。


 ここまで来て引き返す理由はない。

 補助部品があるなら取りに行くしかない。


「行くぞ」

『了解しました』

「うん」


 小区画までは近かった。


 通路を一つ抜けて、崩れた扉を越えるだけ。

 ただ、その扉の前でまたアリシスが反応した。


 小型防衛機構。二体。

 危険度:低〜中。

 核反応弱。


「二体か」

『私とセレスで片方ずつ牽制可能です』

「助かる」


 奏真は武器を構える。


 扉を押し開けた瞬間、壁際に埋めこまれていた白い球体が二つ、同時に浮き上がった。丸い本体から細い脚が伸び、下に青い光がともる。小型の浮遊監視機みたいな形だ。


「うわ、今度はそう来るのか」


 球体の一つが青い光弾を撃ち出す。

 奏真は身をひねって避ける。威力はそこまでじゃない。だが、まともに当たり続けたら嫌なタイプだ。


『左を取ります』

 ノアの光弾が一体を引きつける。


「右はわたし」

 セレスの淡い光がもう一体の軌道を乱す。


「よし!」


 奏真は右側の球体へ踏み込んだ。


 アリシスが示す。


 下部脚部接続点、脆弱。


「そこだな!」


 武器を振り上げ、球体の下に伸びる脚部の付け根へ叩きこむ。

 白い殻が砕け、球体がぐらりと傾く。


 続けて、上から振り下ろす。

 今度は中央へ。


 青い光がはじけ、球体は床へ落ちた。


「一体!」


 左側ではノアが相手を引きつけ続けている。

 セレスの援護で動きがずれていた。


 奏真はすぐに回り込み、二体目の後方へ。


「終わり!」


 脚部接続点を叩き、続けて本体へ。

 今度は一撃で沈黙した。


『戦闘終了』

 ノアが言う。

「これくらいなら、だいぶ楽になったな」

『成長傾向です』

「ほんと最近それ好きだな」

『高頻度で適切なためです』

「もういいって」


 小区画の中には、棚がいくつか並んでいた。

 その多くは空か壊れている。けれど、一番奥の台座には、まだ青い光を宿した小さな部品が残っていた。


 指先ほどの細長い結晶が三本。

 それをつなぐ白い枠。


 アリシスが答える。


 補助伝達部品。

 状態:使用可能。

 深部制御核との接続適合、高。


「当たりか」

『はい』

 ノアが短くうなずく。


 セレスが部品を見て、少しだけほっとしたように息をつく。


「これで、上へ行ける?」

「たぶんな」

『完全起動の可能性が上昇しました』

「最近ちょっと言い方が丸くなったな」

『改善努力中です』

「それも聞き飽きたな」


 奏真は部品を手に取り、光にかざす。


 小さい。

 けれど、ここまで来るのに必要な最後のひとかけらみたいに見えた。


 奈落を出る道。

 地上へ戻る手段。

 そこへ手が届く実感が、ようやく本物になり始めている。


「……戻るんじゃない」


 無意識に、そんな言葉が口をついた。


 セレスが顔を上げる。

 ノアもこちらを見る。


 奏真は小さく部品を握りしめた。


「取り返しに行く。そのための道だ」


 短い言葉だった。

 でも、それで十分だった。


 ノアが静かにうなずく。


『妥当です』

「そこはちょっと違う返しがほしかったな」

『改善努力中です』

「やっぱりそれか」


 セレスが小さく笑う。


 その笑いの中で、奏真はもう一度補助伝達部品を見た。


 足りなかったもの。

 欠けていた最後の一つ。


 それを手に入れた今、奈落を出る道は、ようやく現実になろうとしていた。

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