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第43話 抑圧された感情/ep.898 大罪解放

 竜次は立ち尽くしていた。

 同じ空間にいたのに、駆け出せばすぐにでも届く距離にいたのに。

 あの三人を見失ってしまった。


――ギギギィ


 硬い甲殻を擦り合わせたような耳障りな鳴き声。

 蟷螂カマキリ型のボスモンスターが、地面に落ちた蝶を、その大きな鎌の先端で器用に刺して、そのまま口元に持っていって、咀嚼していた。


 蚯蚓ミミズ型の方は、その大きいだけの図体で暴れていた。

 しきりに身体を震わせながら、地面を這ったり、壁に頭をぶつけたりしていた。


「……」


 竜次は黙ってそれを見ていた。


 虫なんかに感情なんか無い。竜次はそんな風に思っていた。

 しかし、目の前のモンスター共は、今の竜次を嘲笑っているかのように見えた。


 まるで、「引っかかった」とでも言われている気がした。

 黙ったまま、突っ立っている自分に、「ザマアミロ」って言っている気がした。

 カマキリは威嚇とは思えない歓喜の鳴き方をしていたし、ミミズの方は抱腹絶倒のそれだ。


「……」


 こうなることは、予想していなかった。

 何もするな、手を出すなと言っておいたはずだった。


 なのに、ミケが、将斗が、本当のボスモンスターを倒し、転移の条件を満たした。

 

 ボスを倒し、転移した。ならば本来は外に出られる。

 それなら、竜次は安心していた。


 だが、この世界で成長し、鋭敏になった感覚が、遠くで感じる仲間の気配はまだ、足元のその奥、遥か地下深くにあると感じ取っていた。


 どうして、こうなったんだ。


 これが、誰かが仕組んだ罠だということはわかった。

 不自然な転移だった。

 ボスを倒しても消えない魔物たちもそうだ。


 でも、間に合ったはずだ。

 守れる力なんて、十分あるのに。どうして。


 どうして手放した。



――ギギャッ、ギギギギギギギギッ!


 うるさい。

 あの不快な鳴き声が、耳に届く。

 感覚が発達してるから、余計な声も拾ってしまう。

 うるさい。


――ギッギギギギギギギギギギッ


 うるさい。

 耳に棒を突っ込まれて、掻き回されているみたいに、不快でたまらない。

 心の奥底に押し留めていた黒いものが、ドロドロと溢れてくる。


 ダメだ。もうこれは、使うな。



――ギギギギギァギギギギギャギギギギギギギギギギ



 うるさい。

 うるさい。

 ダメだ、耐えろ。

 うるさい。



――ギギギギギァギギギギギャギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ



 うるさい。

 うるさい。

 なんで見失った。

 うるさい。

 うるさい。

 うるさい。

 なんで自由にさせた。

 うるさい。

 うるさい。

 うるさい。

 うるさい。



――ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ









「――――――――あー」











 あいつが、近くにいないなら、いいか。











「――黙れ」


 怪物たちは、ピタリと動きを止めた。

 竜次から溢れ出す『何か』を感じ取って、本能的に。


 どこかでこれを見てる誰かは、きっと目の前のモンスターと同じように笑っているはずだ。許せない。腹の底から湧いてくるような『妬み』があった。


「返せよ」


 竜次は、己の怠惰を呪った。

 自分の強さに対する『おごり』が、仲間を危険に晒したのだから。


「なぁ」


 モンスター共は無視して、あのまま強引に駆け出していればよかった。

 噴き上がる『怒り』が、全身を焼き尽くすほど熱い。


「返せよ」


 もし何かあったら。ミケの笑顔が脳裏に浮かぶ。

 あの『いとしい』笑顔が失われるようなことがあってはならない。


「返せよ」


 いつもこれだ。


 ただミケとの普通の日常が『欲しい』だけなのに。

 

 周りがいつも、引き裂いていく。


 ……違う。


 引き裂かれるのは弱いからだ。


 弱いから、奪われる。


 なら、強くなればいい。


「――『大罪解放シンズ・アンリーシュ』」


 魂の底に閉じ込めていた、『底なしの渇望』を全て解放する。

 黒い紋章が、顔に浮かぶ。

 竜次を中心に、おぞましい黒い力が渦を巻いて部屋を満たす。


――ギッ……!?


 虫は初めて、恐怖を覚えていた。

 死そのものを、その長い生涯の中で初めて目撃した。

 すぐに甲殻を振動させ、パニックに陥ったように鳴き叫んだ。


 合図によって広間の壁から、魔物共が湧いてきた。


 その数は、少し前に戦ったモンスターハウスの量を遥かに凌駕する。


 だが――


「――もっとだ」


 足らない。


 そんなんじゃ足りない。


 もっと出せ。


 もっと喰わせろ。


 俺をもっと、強くするために――。



*****************************



 将斗たちは気づけば暗い洞窟の中に立っていた。


 ダンジョンのどこかに戻されたかと、思った。


 しかし、今まで歩いてきた道とは見るからに違っていた。


 天井は身長の何倍も高いところにあった。

 手を伸ばしても届かない両側の壁には青い水晶が()()()に並んでいる。


 そして地面は、綺麗に切り揃えられた石の絨毯が敷かれていた。


「自然物じゃなさすぎるよな……これ」


 将斗は、隣で同じように呆然としていたミケに尋ねた。


「これは、見たことないにゃ……」


 彼女はそう言うと、足元にあった小型テレビを弄り始めた。

 何かするつもりだろう。


 将斗はその間に周りを確認する。


 石の絨毯は向こうまで続いているが、その先はよく見えない。

 振り返ってみると、すぐ近くに壁があった。


 後退することはできない。


 だが逆に、前進する気にはなれない。

 この異常事態で、無闇に動くのは得策ではない気がしていた。


 足元のシロは、将斗の足にいつもより強くしがみついていた


「シロ、大丈夫か?」

「……ん」


 首を振って、彼女は石畳の先を見ていた。

 向こうに何かを感じ取っているようだった。


 すると、ミケの小型テレビがピーピー鳴り始めた。


「ダメにゃ、竜次の場所がわかんない」

「え、それ、そういう探知機能あんの?」

「ううん、今つけたにゃ」

「今……?」


 まだ一分も立っていないのに、仲間の場所を検知する機能をつけられるその技術力は一体何なのか。


 彼女の手腕に尊敬しつつ、将斗は背中を汗が伝うのを感じた。


 これはまずい事態だ。

 分断されてしまった。


 竜次がいれば怖くなかったダンジョンも、彼がいなくなった途端、急激に寒気を覚える。

 それほど彼に頼っていた事実も浮き彫りになって、将斗は唇を噛んだ。


「――……ん」

 

 シロが、突然天井を見上げた。


「……いる」

「え、もしかして、竜次のことか?」

「ん……うえにいる」

「マジか」


 全く違う土地へ飛ばされたわけではなかったらしい。

 ひとまず、将斗は安心した。


 しかし、一方でシロの顔は少し暗い。

 探知機が検知できなかった位置だとすると、そう簡単に来れる距離ではないということが理由かと、将斗は推測した。


 とにかく、状況を整理して考える。

 今できるのは、前に進むだけ。

 石畳の奥に何があるかはまだわからない。


 しかし、そんな無謀なことはできない。


 ならば――。


「とりあえず、待つか?」


 将斗は地面を指差して、ミケに提案した。


 先に進んでどうなるかわからない。

 その上、この中で一番戦えるのはシロだ。


 しかし、彼女は竜次の存在に気づいた後も、前方を奥をじっと見つめている。

 魔人である彼女ですら、不安に思う存在が、あの奥にいるのだ。


 ならば進むべきではない。


「……うん、そうだね」


 ミケは一度頷いて、腰を下ろそうとした。

 しかし、その動きがピタリと止まる。


 シロと共に座ろうとしていた将斗は、同じように動きを止めた。


「どうした?」

「……やっぱり行こう」

「え? いやいやいや――」


 その発言に、首を大きく振った。


「流石に無理じゃないか。なんかヤバそうなのがいそうだし」

「ニャーの武器があれば行けるにゃ。大丈夫着いてきて」

 

 ミケはそう言って歩き出した。

 将斗は咄嗟にその手を掴んだ。


 彼女は引っ張られて、足を止める。

 

「なに?!」

「えっ、ごごめん」


 ミケが強く振り向いた。

 将斗は、驚いて掴んでいた手をすぐに引っ込めた。


「悪い。でも、危ないと思うぞ。ここは竜次が来るのを待った方が――」

「大丈夫って言ってるでしょ、心配しにゃいでよ!」


 ミケが語気を強めて言う。

 目は睨むようにこちらに向けられていて、将斗は少し後ろに下がった。

 何か、雰囲気が変わったような。そんな気がした。


「そ、そんな怒らなくてもいいだろ? 俺はただなんかヤバそうって思って」

「ダンジョンのことを知ってるのはニャーの方。ニャーのいうことが信じられないの?」


 信じられないわけではない。

 確かに彼女は、竜次やシロほどではないが、実力がある。


 経験値でいえば将斗よりはるかに彼女の方がある。

 しかし、それでも何かおかしいと、将斗は感じ初めていた。


「そりゃミケの方が色々知ってるだろうよ。だけどそんな無闇に動いていい場所じゃないんだろ、ダンジョンって場所はさ。とりあえず話し合いくらいは――」

「そんな怠けてちゃダメなの」


 聞く耳も持たないのか、彼女は歩き始めてしまう。


 慌てて後を追って止めようとするが、シロが足を引っ張ってきた。

 しきりに首を振っていた。

 

 やはり、奥に行くべきではないのだ。


 将斗は少し強めに彼女の背中に向けて言葉を投げる。


「待てって。シロが何かあるのに気づいてんだぞ。これやっぱりヤバいんだよ」

「だったらそこにいればいいにゃ。何もしないでいるなんて、ニャーには出来ない」

「はぁ? ちょっとミケ! ……ごめん、シロ。ちょっと追いかけるぞ」


 シロが頷くのを見て、将斗は彼女を小さな体を抱き抱えると後を追った。

 こっちの方が早い。


 すぐに追いついてミケの肩を掴んだ。


 いつもなら、女性の体に触れるのはアウトだから絶対にしない。

 だがそんなこと気にしている場合ではない。


 明らかに、彼女の様子がおかしいからだ。


「どうしたんだよミケ。なんか変だぞ。危険じゃないならちゃんと説明してくれ。聞くから」

「ほっといてよ!」


 ミケが、腕を強く振って将斗の手を振り払う。

 強い力だった。

 生じた痛みに、思わず反対側の手で押さえた。


 やはり、おかしい。

 

 出会ってからいつもニコニコしてた彼女だ。

 それが、急に怒ったり、こんな突拍子もない行動に出るのは、何かあると将斗は思った。


「やっぱおかしいって。頼むから冷静になってくれよ。あれだ、俺前に催眠魔法とか食らったことあるけど、そういうのかもしれない。何かの影響を受けて、おかしくなってるんじゃ――」


 その言葉を聞くなり、ミケが大きく息を吸った。



「私はおかしくない!!」



 血相を変え、一人称すら変えて叫んだその言葉に、将斗は後ずさる。

 明らかに変だ。

 だが、彼女のあまりの気迫に言葉が出なかった。


「私は戦える!」


 そう言ってミケは、将斗が抱えるシロの体に腕を突っ込んで、何か大きいものを取り出した。


 背中に背負えるホルダー付きのリュック型の金属の箱と、アタッシュケースのような取手のついた黒い箱が二つ。


 それらは華奢な彼女には不釣り合いなほど巨大で、冷たい質量を持っていた。

 それをバックパックのように背中に背負いつつ、両手を黒箱で塞いだ彼女は、重さに足元をふらつかせながらも、すぐに歩き出してしまった。


 それに驚いていた将斗だったが、彼女を止めるべきだということを思い出し、走って彼女の前に躍り出る。


「この先何がいるかわからないんだぞ。シロだってこんなに怯えてる。そんな装備でいいのかよ」

 

 そう言った瞬間、ミケの目が細くなったかと思うと、彼女のバックパックから伸びたサブアームが将斗の目の前に伸びてきた。


 その先端には銃口が付いていて、どこかにある引き金を引かれれば最後、おそらく命はないだろう。


「……何、すんだよ」


 狙われている額がじわじわと熱を持っている。

 だが、こんなのに怯えている暇はない。


 確かに、高い技術が使われている。

 これなら、ある程度は戦えるだろう。


 だけど、どれだけ高性能だろうが関係ない。

 今の精神状態の彼女を一人で行かせるのは、絶対にあってはならないと思ったからだ。


「どいて、ニャーの腕も竜次と同じように進化してる。竜次が居なくたって私が戦えることを証明するの」

「証明って……やめとけよ。あいつが優しい奴だって知ってるだろ。ミケの身に何かあったらきっと――」

「やらなきゃ、置いてかれちゃう!」


 ミケは大声で言うと、持っていた箱の中身をガチャガチャと言わせながら肩を落として、俯いた。


「置いてかれちゃうの……」


 二度目のそれは小さな声だった。

 それが彼女にとってどれほど辛いことなのは、二度も言われれば将斗でもよくわかった。


 将斗のように、彼女も竜次との間に距離を感じていたのだ。

 強者である彼の戦いをただ端っこで見ているだけで、何もできない、返せない自分に、焦りを覚えていたのだ。


 きっと、彼女がずっと笑顔で賑やかだったのは、その気持ちを抑えるため。

 竜次を見失って不安になったいま、その抑圧された感情が、解放されてしまったのだ。


 だからその情動のままに、無謀な行動に出ようとしてしまっている。

 その気持ちは、将斗も共感できた。

 

 しかしそれは、なにも今でなくてもいいはずだ。


「ミケ、とりあえず一旦――?」


 彼女は固まっていた。

 その顔を驚愕に染めて、将斗の後ろを見ていた。


「に、逃げて……」

「え?」

「将斗逃げて!」


 咄嗟に振り返った。



 そこには――

 足音も、気配すらなかった。まるで影が実体を持ってそこに湧き出たかのように。

物語から飛び出してきたような、見上げるほど巨大な黒い竜が、悠然と『立って』いた。


 そいつはただ、静かにこちらを見下ろしていた。

 そのギラついた眼光は、将斗の方に一直線に向けられていた。

 広げられた翼は、一振りでこちらを吹き飛ばせるほど大きい。


 その全身を見て、生物としての圧倒的な『差』があることを自覚させられた。

 こういう時、人間は動けなくなることを将斗は身を持って知った。


 動けるのなら、今まさに()()()()()()()()()()()()()に対して、何か対処できたはずだから。

 呆然としたままの将斗は、『硬化』で身を守れることすら忘れて、それをただ見ていることしかできなかった。


――しかし、腕を何かがすり抜ける。


 シロが、黒竜の腕に向かって飛び出していた。

 攻撃の軌道上に、彼女が入る。


 身を挺して庇うように。


「シロ!」


 将斗は声を上げた。

 このままでは、あの少女は撃ち落とされる。

 そう思ったのも束の間、黒竜の手が開いた。


「――?!」


 黒竜の手は、シロを掴んでいた。

 ギュッという肉が搾り出されるような音がした。

 しかし、流石は魔人だ。シロは潰れていない。


 黒竜の手の中で、必死にもがいていた。

 しかし、黒竜は硬く握っていて、決して離さない。


「……かっは」


 少女の体は握りしめられ、辛そうな声を漏らしている。

 黒竜はそれを顔の前に持っていき、笑うように口角をあげると、その手を大きく振って後方へ――彼女を洞窟の奥に放り投げた。


 風を切って、小さな体が見えない速度で飛んでいく。


「「シロ!!」」


 ミケと将斗は同時に叫んでいた。

 すると、間髪入れずに黒竜が床を踏み壊しながら、投げたシロの後を追って飛んでいった。

 

 巨体が飛び出した風圧で、将斗は倒れた。

 しかしすぐに起き上がって、呆然と立ち尽くしているミケに、将斗は聞いた。 


「……なんだよ今の!」

「こ、黒竜……噂でしか、聞いたことなかったのに」

「それは、どのくらい強いんだよ」

「……竜次なら、勝てる」

「んなことわかってるよ!」


 そういう答えは求めてない。

 わかりきったことを言ってきたことや、シロが連れ去られた焦りが、語気を強める。


「シロなら、どうなんだって意味だ!」

「わかんない、けど。勝てないかもしれない」

「……っ!」


 息を呑んだ。

 今この中で一番強いあの少女が、勝てないかもしれない?


 将斗はそれが信じられなかったが、体を震わせているミケを見て確信に変わる。

 急激に焦燥感が湧き上がって、今にも走り出しそうだった。


「行かないと」

「……で、でもっ」


 今度は将斗をミケが止めてきた。

 彼女は震えていて、完全に恐怖しきっていた。


 獣人だからか本能的な部分は、人一倍強いのかもしれない。勝手にそう思った。


 だが、それが本当だったとしても、配慮している暇はなかった。


 将斗はすぐに振り向いて理由を先に言った。


「あいつの狙いはシロなんだよ!」


 その言葉に、ミケが目を開いた。


「な、なんでわかるの」


 その言葉に、将斗は黒竜の動きを思い返す。

 あの怪物の視線は全て、()()()()()()()()()()()()()()()


「あいつは俺たちの事なんか全く見てなかった! あいつの狙いはシロだったんだよ!」


 シロを投げた後も、黒竜の視線はずっとその後を追っていた。

 無防備に立ち尽くしていたこちらには一才目を向けることなく、飛んでいってしまった。


「理由は知らない。だけどあいつはずっとシロしか見てない。このままだと、あの子が危ない!」


 将斗は答えを待つこともなく、黒竜の後を追う。

 

「ま、待って!」


 後から追いかけてくる音がする。

 将斗は振り返る余裕も持てないほど、全力で洞窟の奥へと走り出した。

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