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第42話 見栄の対価/ep.897 罠

 日の届かない地下の一室。

 開けた空間には、長椅子が並び、その最奥の玉座に『その存在』は深々と座していた。

 そして、その前で一人、『その存在』を崇めるようにひざまづいている者がいる。


 玉座に座る者の手元で光る水晶、その奥には、歩く四人組の姿がぼんやりと映し出されている。


 『その存在』は顔を覆うフードのように深く被った布の隙間から、じっとそれを見ていた。


「何やら盤上に塵が舞い込んだようだが……我の微睡まどろみを妨げるほどの事象ではあるまい」

「左様でございますか。なれば此度の企ては当初の目論見通りに」

「うむ。だが、以前貴様が口にした別働の策。あれも進めておけ」

「……しかし、此度の策が実を結べば、そちらは杞憂に終わるかと存じますが――」


 玉座の上でそれを聞いていた存在は、ゆっくりと頭を上げた。

 外套が少し持ち上げられ、その奥を見た従者は体を震わせた。

 そこには、深淵を覗き込む様な圧倒的な恐怖が渦巻いていたからだ。


「し、失礼な発言をお許しください」

「よい……だが、手抜かりは許さん。万象の不足すらも網羅した備えがあってこそ、我は煩わしさから解放され、至高の安寧を得るのだ」

「仰せのままに……」


 従者はすぐに立ち上がり、逃げるように広間を去っていった。


「……とはいえ、案ずるには及ばんか。我が身じろぎ一つせずとも……この狂犬を解き放ち、本能の赴くままに喰らわせれば済む話よ」


 『その存在』は真っ暗なフードの奥から、水晶に映る先頭を歩く男――白峰竜次を見下ろした。

 怒りも、興味もとうの昔に泥の底に沈めてしまったかのような、生きることそのものにんだ虚無の視線が、彼に注がれていた。


 

******************************



 暗い洞窟の中を、天井から滴る水滴と、足音と微かな話し声が響いていた。


 将斗含む白峰竜次一行の四人は、ダンジョンの奥底を目指し歩いていた。

 その間、ずっとミケが色々な情報をくれる。


 今はダンジョンの話。

 ダンジョンは、魔物の湧く洞窟のこと。

 放っておくと、中の魔物がだんだん外に出てきて周辺に被害をもたらすことから、災害扱いをされている。

 被害を防ぐためにも、ダンジョンを閉じる必要がある。

 そして閉じる方法はただ一つ。最下層に潜むボスを倒すことのみ。


「――それで、竜次は今日もダンジョンを閉じるために派遣されて、ボス部屋を目指してるってわけにゃ!」

「へぇ、今はそういう仕事してんのか」


 小説を読んだ分、彼らのこれまでの旅は知っているが、五十巻から先は知らない。

 彼らには色々あったから、仕事をもらえない境遇にいたことも知っている。

 

 仕事ができているということは、魔人討伐の功績が認められ、彼らの旅もようやく報われたに違いない。

 そう考えて、将斗は少し安心した。


「でも、ここ結構広いよな。これで下層なんだろ。上層とか含めたら、一日そこらで終わる規模感かこれ?」

「……今日で五日目にゃ」

「あっ、そうなのか」


 ミケは死んだ目で天井を見上げていた。

 「日の光が恋しい」とか言い出している。

 五日間の洞窟暮らしは相当なストレスなのだろう。


「なんか忙しいのに最終日だけ来てごめんな……」


 そんな顔をされたから、将斗も申し訳ない気持ちになってきた。

 ただでさえ活躍していないのもあるから。


「おい、ペラペラ喋ってねぇで黙って歩け」


 前方を歩く竜次が、振り向いて叱ってきた。

 できる限り遅れないよう歩みを早めた。


 将斗は言えないでいるが、実は足の裏がジンジン痛み出していた。

 運動しなさすぎなのと、外出しなすぎの影響でか、おそらくまだ二時間ちょっとくらいしか経っていないのに、靴擦れが起きている。


 一歩ずつ足を出すたびに、ズキっと走る痛みに、『超強化』が欲しいと切実に願った。


「ニャー! 竜次は強いからいいけど、将斗はヒョロヒョロの一般人なんだよ? 弱い側のペースに合わせるべきにゃ」

「ミケさん。そのフォローが一番効いてるよ」

「知るか。その筋肉量じゃ、大して運動もしねぇで、家でゴロゴロしてたクチだろ。自業自得だ」

「ごめん、そっちの方が効く」


 

******************************



 道中何度か魔物と遭遇するも、竜次は涼しい顔で全滅させていた。

 少し前のモンスターハウスのように大量の魔物が湧くことがなかったから、ミケ、シロ、将斗は後方で見ているだけとなっていた。


 いよいよどこかで活躍しておかないと、本当にただの荷物になってしまう。というかなっている。

 将斗は焦りに焦るものの――


「リュージ、少し休もう? ここまで来たらもう急ぐ必要もないにゃ」

「バカが。俺はここから早く出たいんだよ。さっさと倒して、こんなとこ出て帰る」


 竜次の左手をミケが引っ張り、休憩を促している。

 しかし、竜次は先に進もうとズリズリと彼女を引き摺っていた。


 その前方には巨大な乳白色の門がそびえ立っていた。

 自然の洞窟の中に突如現れた異質な人工物。

 そう。これがボス部屋の入り口だ。

 

 つまり最後まで、将斗は活躍することもなく、ボス部屋に辿り着いてしまったのだ。


「ただでさえよく分かんねぇ奴も連れてることだしな」


 竜次が視線だけこちらに向けて、そう言う。


「……す、すまん。あ、荷物とか持つ?」

「それはそこのチビの役目だろ」

「ん!」


 シロが将斗の足元で少し強めに返事した。

 表情の変化が小さいのでよくわからないが、怒っているように見えた。

 チビとは言われたくないのかもしれない。


「そうだよな……あ、肩凝ってない?」

「ねえよ」

「……じゃあもう靴舐めるよ」

「いらねぇ……おい、かがむな。しようとすんな」


 せっかくしゃがんだというのに、将斗は右膝で押し除けられた。

 この辺で少しでも何かできる姿勢を見せたいと必死だったのだが、もう手はないらしい。


「……俺だけ、何もしてないから申し訳ないんだよ。なんかない?」

「ねぇよ。黙って着いてくればいい」


 すると隣でにゃーにゃー言っていたミケが、竜次の頬をつまんだ。


「素直じゃないにゃ〜。本当は私たちが怪我しないか心配だから、早く出てあげようとか思ってるんじゃにゃいの?」

「勝手に人の気持ちを語んな。口閉じてろバカが!」

「にゃっ……」


 ミケの手が乱暴に払い除けられる。


「――?」


 将斗は見た。

 ミケの顔がほんの一瞬無表情になったのを。

 竜次に抱きついたり、ちょっかいを掛ける時も常に笑顔だったから、妙な違和感を覚えた。

 しかし、すぐに目を細めて口角を上げて、


「にゃー! それでニャーが黙ってるとお思いかにゃ? リュージ道を何年進んできたと思ってるの? 今じゃニャーの方が、リュージよりリュージのことをわかってるんだから! 例えば――」


 ペラペラと竜次のことを語り出して止まらなくなってしまった。

 早口で、賑やかに語り続けている。

 竜次はというと、ため息でも吐くのかと思いきや、ただひたすら黙ってミケを眺めていた。


 その視線に気づいたからかミケは途中で口を閉じた。

 「な、なあに?」と、くねくねと体を曲げて、言葉を待っていた。

 竜次は独り言でも言ってるのかと思うくらいの声量で呟き始めた。


「――ミケ。お前……」

「な……何にゃ? 何かにゃ? ミケで役に立てるのなら何でもするにゃ。何か作ろうか? それともた・と・え・ば――」


 一方ミケはマシンガントークが止まらない。

 レヴィの上を行く速さで矢継ぎ早に言葉を並べていく。

 

 竜次は彼女と向かい合っていたが、止めはしなかった。


 この空間でただ一人、ミケだけが喋り続けている。

 ムードメーカーといえば、聞こえはいい。

 

 だが、どこか空回りしている。

 将斗の目では彼女の姿がそう映った。


 竜次は目を閉じてから、諦めたように顔を逸らした。


「……もういい。何でもない。とにかく行くぞ」


「えー」だの何だのをミケは言い続けていたが、竜次は止まることなく、歩いていき、躊躇なくボス部屋の扉を開けた。


 全員で通り抜けている時、将斗は扉の中央部分に、蝶の形を模したエンブレムが付いているのを見た。



******************************



 地上と空で、怪物が咆哮を上げている。

 その二対の怪物と相対しているのは、我らが白峰竜次。


 彼は何十階建ての高層ビルくらいには縦に伸びたこの巨大な部屋で、激闘を繰り広げていた。


 地上にいるのは、モンスターハウスで見たサンドワーム、それが八岐大蛇のように一つの胴体から何本もその頭を生やした化け物。

 竜次がその力で何度も頭を潰しているが、すぐに胴体から別の頭部が再生し始め、死ぬことがない。


 空には複数の昆虫の特徴を合体させたような化け物が飛んでいた。カマキリの刃を腕に持ち、蠍のような大顎、羽はトンボのように高速で羽ばたいていて、腹の先端には蜂の様な針が見え、その先端から紫色の液体が滴っている。

 体表は、水晶からの光を金属のように反射している。その甲殻は恐ろしく硬いらしく、竜次が投げた飛び道具を跳ね返している。


 怪物たちの猛攻を掻い潜り、竜次は攻撃し続けている。


 その様子を、ボス部屋の端で、将斗ら三人は固まって見ていた。


「あれ、一人で大丈夫か?」

「……多分大丈夫にゃ」

「多分かよ」


 竜次は素早く動くので、攻撃を受けることはない。

 だが逆に彼の放った攻撃は、決定的な一撃には至っていない。

 膠着状態だ


「なんか、遠距離で狙える道具とかないか、なんかライフルとか……って何してんの」


 振り返ると、ミケが地面の上でガチャガチャと何かをいじっている。

 覗き込むと、液晶のようなものがついた――小型テレビの様なものの配線を引っ張っては繋げたりして、組み立ていた。


 どこから出した。

 それはおそらくシロに持たせていたということで理解できる。

 だが、異世界では見ることのないであろうメカニカルなフォルムには驚くほかない。


「ちょっと集中してるから後にしてにゃ」

「そ、そうか」


 そう言って後ずさると、ミケの手元でバチバチと火花が上がり始める。

 なぜ何もない場所でアーク溶接っぽいことができるのかと思いつつ、できてるからいいだろと、深く考えない様にして、竜次の方を見る。


 やはり戦いに進展は見られない。

 魔物も、竜次も互いに決定打を放てていない状況だ。


 ふと、足元にシロがいるのを思い出し、


「シロがどっちか相手するのは?」

「じゃまになる……」

「そうか」


 竜次一人に背負わせているこの状況が、将斗はどうしても受け入れられない。

 何かできないかと思案するが、シロですら邪魔になってしまうなら、自分にできることなどあるはずがなかった。


 前の世界なら、いて欲しいだとか、いてくれてよかっただとか、将斗がいる意味があった。

 今はこうして後ろで待機しているのみ。

 自分が来た意味を証明できずにいるだけ。


 将斗が歯噛みしていると、後方で金属が床に落ちる音がした。


「できたにゃ!」


 ミケが工具を放り投げた音らしい。

 振り返ると、小型テレビには、中心から輪っかが外に向かって並んでいるのが写っていた。まるで、探知機ソナーのようだった。


「な、何これ」

「探知機にゃ」

「本当に探知機なことあるんだ……」


 なぜ異世界にこんな高度なものが。

 ミケが発明が得意とは聞いているし、銃くらいなら作っても納得いくのだが、ここまで来ると、何かそういうスキルでもあるのだろうか。『発明王』とかそういうものが。

 将斗は疑問に思いつつも、彼女の話を聞いた。


「将斗、ボス部屋の扉に『蝶』のマークが付いているの見なかった?」

「見た見た。あれがどうした」

「ボス部屋のマークって大体ボスの姿を模してるの。でもあの二体は蝶には見えないにゃ」


 彼女の言う通り、地上にいるのは八岐やまたのミミズだし、空にいるのはカマキリだ。

 蝶らしきフォルムはしていない。


「つまりどこかに、本当のボスがいるにゃ」

「でも、蝶々なんている様には見えないけど」

「いや、いる」


 そう言ってミケが指差す小型テレビの画面には、点が四つ。

 動かない点が一つ。これがミミズだ。

 動き回る点が二つ。これが竜次と、カマキリだろう。

 

 そして、その側をゆっくりと移動している点が一つ。


「まさかこれ? でも、見えないぞ」


 点の位置から逆算して、それらしき場所を見るも何もいない。

 将斗の発言にミケは首を振った。


「反応があるなら、そこにいるにゃ。多分見えなくしてるかも」


 そう言ってミケが腰の銃を投げてきた。

 将斗は慌てて受け取って彼女を見るとフフンと笑っていた。


「これは?」

「活躍したいんでしょ? いいとこ見せたいでしょ?」


 その言葉に心臓が高鳴る。


「ニャーも同じ。一緒に竜次を見返してやろうよ」

「――乗った!」


 ミケに見抜かれていたことに恥ずかしさがあったが、チャンスを貰えたことは嬉しいことだった。


 将斗は強い返事の後、意気込みついでに銃の上の辺りをガシャっと引いた。


 ……すると中から弾が半分顔を出して、引っかかって止まった。


「ごめん、詰まった」

「もぉぉぉぉぉぉぉ!」



******************************



 ミケが小型テレビに繋げたキーボードでカタカタと入力していた。

 その後ろで、将斗は銃を構えていた。


「将斗と竜次って同じ世界から来てるよね。時計わかるかにゃ? 確か十二分割するから……二時の方向を向いて。で、顔を上げてって――そうそこ、あ、ちょっと下にゃ。そうそこ」

「ここ?」

「うん。その先に二股に割れてる水晶が刺さってるでしょ? あれを狙うにゃ」


 彼女のいう通り、銃口の向こうに、二股に割れた水晶が見えた。


 かなり上部を狙うことになった。肩よりも上で銃を構えている。

 将斗は筋肉がないから銃の重みで腕が震える。

 しかし、両手でしっかりと持って、ブレないように耐える。


「ボスは多分、この動きからして、そこを通るにゃ。合図をしたら引き金を引いて」

「了解」


 そう言って、構え続けた。


「さん――に――」


 カウントダウンが始まる。

 将斗は息を吐いて、心を落ち着かせた。


「いち――今にゃ!」


 引き金を引くと同時に、腕にかかる衝撃で目を瞑る。

 発射音に耳が甲高い音を拾って痛むが、目はすぐに開いて、弾丸の行方を探す。

 

 すると、十時の方向にあった水晶が砕けるのが見えた。


「大外れにゃ」

「ごめん……これ『狙撃』がおかしいだろ」


 そんな方向に銃口は向いていない。

 弾が勝手に飛んでいったとしか考えられない。

 

 明らかに戦闘に支障をきたすスキルに、将斗はキレそうだった。


 しかし、ミケは冷静に何かを入力し始める。


「……将斗もう一回同じ水晶を撃つにゃ」


 言われた通り、二股の水晶を撃つ。

 すると今度は、別の、それまた別の水晶を狙う様に指示され、撃っていく。

 どれも弾丸の着弾は明後日の方角だった。


 ミケは何度かの指示のあと、息を大きく吐いた。


「よし、将斗。今度は三時の方角のあれを狙うにゃ」

「え、ほぼ天井じゃん」


 彼女が腕をピンと伸ばした先、ほぼ天井に近い場所の水晶を指さしていた。

 将斗は痛み始めている肩を撫でてから、両手を掲げて、狙いを定めた。

 

「これ意味ある? 頭ない時のガンダムくらい上げてんだけど」

「よくわかんないけど、それでいいにゃ。いい? あと十秒後に撃って」

「お、おう」


 腕が辛いのを我慢しながらカウントダウンを待つ。

 時間が来て、ミケが口を開く。

 

「さん――」


 再びカウントダウンが始まる。

 

「に……いち……」



「今」


 引き金を引いた。

 ――直後。


「――――――――――――――――――――!!!!」


 甲高い断末魔が広間に響き渡る。

 見上げると()()()の方向で、何かが落下している。


「あれ!」 


 普通のよく見る大きさの紫色の蝶が、体に穴を開けたまま落下していた。


「蝶ってことは!」

「やった! やったにゃ!」


 ミケが飛び出してきて、右手を掲げている。

 将斗は、同じように手を掲げて、強くハイタッチをした。


「よっしゃ! でもなんで当たったんだ」

「ちょっと面倒だったけど、将斗の狙いに対する弾丸の軌道を逆算したのにゃ」

「……要は補正してくれたんだな。全然違う方向なのはマジで納得いってないんだけど」


 要補正の『狙撃手』は早いところ捨てたいと思いながら、小さくガッツポーズをした。

 ようやくそれらしい活躍ができた。

 ミケには感謝しなければならない。


 小説で得た情報では、ボスを倒せばそれ以外の魔物は自動で死ぬ。

 あとは、足元に魔法陣が現れたあと、地上に転移される仕組みとなっているはずだ。


 竜次が地上に降り立った彼は二体の魔物を捌きながら、将斗たちを見ていた。 


「何してんだお前ら!」


 竜次が、必死の形相で叫んでいた。

 こっちに手を伸ばしながら、向かってこようとしているが、二体の魔物の猛攻によって、行手を塞がれている。


「逃げろ!」


 その言葉と、ただならぬ雰囲気に、将斗の胸を締め付けるような不安を覚えた。


 それと同時に、将斗たちの足元が光り出す。

 見知らぬ言語が並べられた、巨大なサークル。

 ――転移用の魔法陣だ。


 だが、竜次の足元にはそれはない。


 突然、体の横から衝撃が加わる。

 体をくの字に曲げ空を飛んでいた。

 だが不思議と痛みはない。

 見ると、シロが腕を広げ、将斗とミケを抱えて飛んでいた。


 おそらくは魔法陣から逃げるため。だが――


「――?!」


 シロの表情が僅かに驚きの色を浮かべた。

 魔法陣は将斗たちにピタリと追従して移動してきていた。


「な、なにこれ! こんにゃの知らない!」


 ミケが叫ぶ。

 これは異常事態らしい。


 魔法陣の発光が強くなり、眩しさに目を開けていられない。

 さらには光の粒に体を包まれいく。


「ミケ! シロ!」

 

 遠くで竜次が叫んでいる。


 将斗は悔しさに唇を噛んだ。


 どうして竜次だけ転移できない。

 なぜ、二体の魔物はまだ生きている。

 ボスは倒したはずだ。

 何を間違えた。

 一体何を。


 何もわからない。

 だが、一つだけ確かなことがある。

 自分が活躍したいなんていうちっぽけな見栄で引き金を引いた結果、最悪の罠を起動させてしまったということだ。

 

 将斗は、竜次にどんな顔をすればいいのかわからずにいた。

 彼の大切な仲間を巻き込んで、彼だけを死地に残してしまう。

 その罪悪感に胸が潰れそうになる。


 だが――


「将斗!」


 竜次の声が、自分の名を呼ぶ。

 将斗は驚いて、光の向こうの彼を見た。

 

 ミケでも、シロでもない。

 あいつはこんな時でも、一番弱くて、素性も知れない『お荷物』の安否を真っ先に心配したのだ。


「あいつ、マジで優しいじゃんか……」


 届くわけもないが、そう呟いた。

 なんて底抜けにお人好しで、不器用なヒーローなんだろうか。

 俺なんかの名前を呼んでる場合じゃないのに。


 情けなさと、どうしようもない焦燥感を胸に抱えたまま。

 将斗は光に包まれて、将斗たちは広間から姿を消した。

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