第97話 遮断
「接続禁止だ」
その一言で、
港の空気が凍った。
---
外洋の監査官が、
冷たく言い放つ。
---
「分散接続による決済は無効」
---
ざわめき。
---
「何だそれは!」
「そんなルールは――」
---
「今、決まった」
---
一切の感情がない声。
---
「軍事保証の対象外とする」
---
沈黙。
---
つまり、
---
「守らない」
---
それだけの意味だった。
---
港。
---
後付け接続で成立しかけていた取引。
---
帳簿が閉じられる。
---
「……無効だ」
---
「ふざけるな!」
---
「保証がないなら、通らない」
---
止まる。
---
また止まる。
---
分散連合本部。
---
ユーリが叫ぶ。
---
「接続拒否です!」
---
「外洋保証が入らないと、大口が通りません!」
---
マルクが舌打ちする。
---
「潰しに来たな」
---
リゼットが言う。
---
「当然よ」
---
「見逃す理由がない」
---
沈黙。
---
アーネストは窓を見る。
---
さっきまで動いていた流れが、
また鈍る。
---
「……止まる」
---
ユーリが呟く。
---
「せっかく繋がり始めたのに」
---
リゼットが言う。
---
「外洋が“繋がせない”」
---
それが答えだった。
---
自由は、
力で制限される。
---
マルクが言う。
---
「どうする」
---
沈黙。
---
再び選択。
---
戦うか。
---
従うか。
---
アーネストは静かに言う。
---
「回避する」
---
ユーリが顔を上げる。
---
「どうやって」
---
アーネストは答える。
---
「保証を使わない」
---
沈黙。
---
マルクが笑う。
---
「無茶だな」
---
「保証なしで大口は無理だ」
---
「無理じゃない」
---
アーネストは言う。
---
「分ける」
---
ユーリが息を呑む。
---
「……さらに?」
---
「もっと細かく」
---
「保証がいらないサイズまで」
---
沈黙。
---
リゼットが呟く。
---
「極小分散」
---
アーネストは頷く。
---
「一つを百に分ける」
---
「百をそれぞれ成立させる」
---
「あとで繋ぐ」
---
マルクが言う。
---
「それ…」
---
「時間がかかるぞ」
---
「いい」
---
アーネストは言う。
---
「速さじゃ勝てない」
---
沈黙。
---
「でも」
ユーリが言う。
---
「これなら…保証いらない」
---
港。
---
試験。
---
大口契約。
---
分割。
---
さらに分割。
---
小さな取引に分ける。
---
「これならいける」
---
一つ。
---
成立。
---
また一つ。
---
成立。
---
少しずつ。
---
だが確実に。
---
流れが戻る。
---
「……通ってる」
---
誰かが言う。
---
外洋の監査官が見る。
---
止められない。
---
ルール違反ではない。
---
ただ、
---
細かいだけだ。
---
リゼットが笑う。
---
「抜け道ね」
---
アーネストは言う。
---
「構造だ」
---
沈黙。
---
「力は大きいものを止める」
---
「小さいものは止められない」
---
港。
---
小さな流れが増える。
---
分散が
再び動く。
---
今度はもっと細かく。
---
もっと見えにくく。
---
ユーリが言う。
---
「広がります」
---
マルクが頷く。
---
「止められないな」
---
リゼットがアーネストを見る。
---
少しだけ笑う。
---
「……一緒にやる?」
---
沈黙。
---
完全な合流ではない。
---
だが
---
戻ってきた。
---
アーネストは頷く。
---
「やろう」
---
港。
---
小さな流れ。
---
だが無数。
---
それが
全体を動かし始める。
---
その時。
---
ユーリが固まる。
---
「……まずいです」
---
全員が振り向く。
---
「外洋が」
---
「ルールを変えます」
---
沈黙。
---
「最低取引量を設定」
---
空気が凍る。
---
小さな分散を
潰すルール。
---
マルクが呟く。
---
「本気だな」
---
戦艦が
さらに前に出る。
---
静かに。
---
だが確実に。
---
分散は
また試される。
---
今度は
逃げ場がない。
ついに「力」と「分散」が真正面からぶつかり始めました。
小さくすることで生き残る分散と、
それすら許さない外洋。
この戦いは、単なる制度ではなく
「自由がどこまで許されるのか」という話に変わってきています。
ここから一気にクライマックスへ向かいます。
面白いと感じていただけたら、ぜひブックマークと評価で応援いただけると嬉しいです。
次話、分散はこの制限をどう超えるのか。




