第82話 中央の反撃
世界市場が開いて二週間。
港の空気は明らかに変わっていた。
以前は信用証だけだった決済に、
新しい通貨が混じり始めている。
砂漠国家の金本位通貨。
商人たちはそれを「砂金貨」と呼び始めていた。
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港の倉庫。
商人たちが帳簿を見比べている。
「信用証は便利だ」
「だが遠距離取引は金の方が安心だ」
「担保分割は理解が難しい」
小さな声が広がる。
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分散連合本部。
ユーリが報告書を机に置いた。
「長距離交易で金貨決済が増えています」
アーネストは目を通す。
「沿岸と砂漠の取引か」
「はい」
「信用証の比率は?」
「地域内では維持」
アーネストは頷く。
「予想通りだ」
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その時、扉が開く。
リゼットが入ってくる。
「港を見てきた」
彼女は言う。
「金貨が広がっている」
マルクも続く。
「山岳の鉱石取引も金貨を求められ始めた」
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沈黙。
アーネストは言う。
「問題ではない」
リゼットが眉を上げる。
「問題じゃない?」
「通貨は競争するものだ」
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ユーリが言う。
「ですが」
「さらに別の動きがあります」
彼女は新しい報告書を出す。
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「外洋帝国です」
空気が止まる。
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「軍事保証証の発行」
マルクが言う。
「軍事保証?」
ユーリが頷く。
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「外洋帝国の艦隊が担保になります」
沈黙。
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「つまり」
リゼットが呟く。
「海軍が信用保証」
ユーリは答える。
「そうです」
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港。
巨大な外洋帝国の戦艦が停泊している。
商人たちはそれを見上げる。
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「この証券は」
外洋の監査官が言う。
「帝国艦隊が保証する」
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「海路取引はすべて守られる」
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ざわめき。
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商人が言う。
「それなら安心だ」
別の商人。
「海賊も怖くない」
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軍事保証証。
それは信用ではなく
力だった。
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分散連合本部。
リゼットが机を叩く。
「軍事信用!」
マルクが言う。
「中央保証より強い」
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アーネストは静かに言う。
「強い」
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「だが重い」
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ユーリが聞く。
「どうします?」
アーネストは窓の外を見る。
港には三種類の通貨が動いている。
信用証。
金貨。
軍事保証証。
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そして遠くの王都では
国家通貨がまだ流れている。
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世界は四つに分かれた。
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信用。
金。
軍事。
国家。
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アーネストは小さく息を吐く。
「ようやく世界市場だ」
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リゼットが笑う。
「嬉しそうね」
「市場は競争している時が一番健康だ」
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その時。
ユーリが言う。
「報告があります」
「王国が動きました」
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沈黙。
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「国家銀行が新通貨を準備しています」
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マルクが呟く。
「国家も参戦か」
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窓の外。
港の船が揺れる。
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世界の金融秩序は
四つの制度で争い始めた。
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信用。
金。
軍事。
国家。
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アーネストは呟く。
「面白くなってきた」
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世界の市場は
今、
本当の競争を始めていた。
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