第73話 分裂
分散連合本部の会議は、長引いていた。
議題は一つ。
外洋帝国の提案。
共同監査機構。
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「現実を見ろ」
幹部の一人が言う。
「再接続網は不安定だ」
「市場は疑っている」
別の幹部が頷く。
「外洋の提案は合理的だ」
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リゼットは机を叩く。
「合理的?」
「それは中央よ」
「分散連合を作った意味が消える」
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「意味より安定だ」
冷たい声。
「都市が崩れれば理念は無意味」
沈黙。
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マルクが言う。
「我々は中央から離れた」
「また戻るのか」
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「戻るのではない」
幹部が返す。
「進化だ」
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議論は割れる。
外洋提案支持。
分散維持。
半々。
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そして初めて、言葉が出る。
「投票だ」
会議室が静まる。
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「共同監査機構への参加」
「賛成か、反対か」
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リゼットは立ち上がる。
「これは制度の選択じゃない」
「未来の選択よ」
誰も返さない。
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投票は三日後に決まる。
連合全体投票。
再び。
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会議が終わる。
廊下は静かだ。
リゼットが歩いている。
後ろから声。
「揺れているな」
振り向く。
レティシア。
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「止めないの?」
リゼットが言う。
「止められません」
「分散だから?」
「ええ」
レティシアは微笑む。
「中央なら命令できた」
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リゼットは苛立つ。
「それを防ぐための制度でしょう」
「だから試されている」
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遠くで鐘が鳴る。
夜の港。
外洋帝国の船が灯りを揺らす。
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外洋使節館。
カタリナが報告を受ける。
「連合内部、分裂」
彼女は頷く。
「当然です」
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エリオットが言う。
「分散は美しい」
「だが人は安心を選ぶ」
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「あなたはどう思います?」
カタリナが聞く。
エリオットは窓を見る。
「もし彼が戻らなければ」
「中央が勝つ」
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山の茶屋。
帳簿を閉じる音。
アーネストが立ち上がる。
数字は語っている。
再接続網は崩れていない。
ただ――
重すぎる。
彼は呟く。
「軽くすればいい」
その瞬間。
構想が繋がる。
担保共有ではない。
担保分散。
中央でもない。
完全分散でもない。
新しい形。
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雪がやむ。
投票まで、三日。
分散連合は
中央になるか
分散を続けるか
選ばなければならない。
そして――
一人の男が
戻る準備をしていた。
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