第69話 僅差
投票は、七日間にわたって行われた。
分散連合すべての加盟団体。
小規模から大規模まで。
再接続網の正式承認。
中央保証なし。
地域裁量優先。
担保相互共有。
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本部の大広間には、
各地の代表が集まっている。
結果は逐次掲示される。
賛成。
反対。
保留。
数は拮抗した。
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「山岳のために全体がリスクを負うのか」
「今守らなければ、次は我々だ」
議論は激しい。
リゼットが立つ。
「分散は、弱い者を切らない制度です」
幹部が返す。
「だが全体を危険に晒す制度でもない」
空気が張り詰める。
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最終日。
集計が終わる。
賛成:52
反対:48
僅差。
可決。
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拍手は起きない。
安堵もない。
ただ、静かな緊張。
アーネストは息を吐く。
「始まる」
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再接続網、正式発動。
担保共有率は、ノアの提案通り。
想定より高い。
「中央に対抗するには、規模が必要です」
ノアは言った。
アーネストは迷った。
だが押し切られた。
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初週。
取引は増加。
山岳信用証、反発。
市場は様子見。
外洋帝国は沈黙。
嵐の前の静けさ。
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第二週。
平原団体の流動性が減少。
担保共有により、
予備資産が拘束される。
「想定内です」
ノアは言う。
「一時的です」
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第三週。
沿岸小規模港で決済遅延。
再接続網の流動性プールが逼迫。
「補填しますか?」
補佐官が問う。
中央補填。
それは――
中央化。
アーネストは首を振る。
「ルール通り」
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第四週。
一団体が、接続停止寸前。
担保共有が重すぎた。
山岳を守るための制度が、
別の地域を圧迫する。
リゼットが低く言う。
「あなたは急ぎすぎた」
沈黙。
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夜。
アーネストは帳簿を睨む。
数字は崩れ始めている。
中央は速い。
分散は遅い。
だが今の分散は、
無理に速くしようとしている。
ノアが言う。
「拡張すれば安定します」
それは、かつて自分が言った言葉。
効率は正しい。
だが重い。
彼は気づき始める。
自分は――
中央と同じことをしているのではないか。
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遠く、外洋帝国から声明。
【再接続網は構造的に不安定】
市場は再び揺れる。
僅差の可決は、
僅差の崩壊でもある。
分散は選ばれた。
だが安定は、まだ遠い。
嵐は、これからだ。
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