第68話 疑念の連鎖
噂は、静かに広がった。
「再接続網の担保は二重計上だ」
「小規模団体の資産は水増しされている」
出所は不明。
だが市場は敏感だった。
再接続網を経由する信用証の価格が、再び下落する。
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本部。
「内部資料が外に出ています」
補佐官の声は硬い。
「再接続網の流動性プール残高が拡散」
「事実か?」
「事実です。ただし文脈が欠落しています」
アーネストは目を閉じる。
数字は正しい。
だが切り取られている。
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会議室。
幹部が机を叩く。
「見たか。透明性は毒だ」
「中央管理に戻すべきだ」
「流動性プールを本部直轄へ」
ざわめきが広がる。
「それでは中央と同じだ」
アーネストが言う。
「中央にならなければ、崩れる」
別の声が返す。
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山岳都市。
若手商人が叫ぶ。
「内部が疑っているのに、外が信じるはずがない」
「再接続網は本当に安全なのか」
小さな不信が連鎖する。
保証がない制度は、
信頼がすべてだ。
その信頼が揺れる。
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夜。
港でマルクが言う。
「保証はなかった」
「だが疑いもなかった」
「今は両方ない」
アーネストは沈黙する。
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外洋帝国。
エリオットは報告を受ける。
「内部対立、拡大」
彼は微笑む。
「中央は疑いに強い」
「分散は疑いに弱い」
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再接続網の取引量が減少。
価格は持ちこたえているが、
活力が落ちる。
「このままでは緩やかな死だ」
補佐官が言う。
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アーネストは、肖像画の前に立つ。
「透明性は武器だと言った」
だが今、武器は自分を切る。
背後から声がする。
「透明性は、守りにもなる」
振り向く。
レティシアが立っている。
「疑いは消せません」
アーネストは言う。
「消す必要はない」
彼女は答える。
「疑いを受け止められる構造にしなさい」
「どうやって」
「中央にならずに、信頼を束ねる方法を考えなさい」
彼女はそれ以上言わない。
去っていく。
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夜明け前。
アーネストは決断する。
再接続網を――
公開討議にかける。
全加盟団体の投票へ。
中央命令ではなく、
合意へ。
市場は不安定。
内部は揺れている。
だが分散は、
合意なしには続かない。
雪が止む。
疑念は消えない。
だが、逃げない。
次は決断だ。
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