第66話 制裁の波
外洋帝国は、迷わなかった。
【山岳地域への経済制裁発動】
・外洋船の寄港停止
・保証信用の新規発行凍結
・軍需優先枠の再配分停止
発表は冷静。
市場は冷酷。
保証信用の価格が、急落する。
「……早い」
補佐官が呟く。
安心は速い。
だが、崩れるのも速い。
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山岳都市。
港が静まる。
外洋軍艦は残るが、物流は減る。
保証はある。
だが流通が止まれば、保証は意味を失う。
「軍は守る」
エリオットは言う。
「だが経済は市場の選択だ」
冷たい。
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山岳若手商人団。
「独自信用証、再発行開始」
簡素な台帳。
担保は地域資源。
保証なし。
市場は疑う。
価格は不安定。
「暴落する」
補佐官が言う。
「可能性は高い」
アーネストは目を閉じる。
中央は保証を止めた。
分散は、まだ整っていない。
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分散連合本部。
幹部が言う。
「山岳を切り捨てれば、制裁は止まる」
「市場も安定する」
沈黙。
アーネストは言う。
「切れば、我々は中央と同じになる」
「ならば?」
「支える」
「保証するのか」
「しない」
ざわめき。
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夜。
彼は地図を広げる。
山岳だけでなく、
複数の小規模団体が揺れている。
中央保証は重い。
単独分散は弱い。
ならば――
分散同士を繋ぐ。
中央を介さず。
彼は呟く。
「再接続網」
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構想。
・小規模団体同士の相互保証
・担保の地域共有
・流動性プールを分散管理
・優先順位は各地域裁量
中央は監査のみ。
保証は持たない。
「……危険だ」
補佐官が言う。
「成功すれば、中央は不要になる」
アーネストは答える。
「それが目的です」
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山岳独自信用証、急落。
市場は荒れる。
だが若手商人は言う。
「順番は自分たちで決める」
不安定。
だが選択はある。
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外洋帝国、第二波声明。
【連合が再接続網を構築した場合、全面関税強化】
圧力が強まる。
中央は力で押す。
分散は、どう押し返す。
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深夜。
アーネストは茶屋跡に立つ。
誰もいない。
だが声が残る。
「中央に勝とうとするな」
彼は理解し始める。
勝つのではない。
耐える。
中央は速い。
分散は、しぶとい。
雪は再び降り始める。
保証は崩れた。
分散は、まだ形にならない。
だが――
芽は、出た。
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