第60話 停止通知
「山岳信用団体《セディアン連合》――基準未達につき、接続停止」
アーネストは、静かに印を押した。
机の上の数値は明確だった。
担保比率不足。
準備金積立遅延。
流動性指数、下限割れ。
規則通りだ。
「通知は即日発効で」
補佐官がためらう。
「猶予は」
「前回与えました」
彼は即答する。
「基準は例外を認めれば崩れる」
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三日後。
山岳都市から報告が届く。
・主要市場停止
・物資決済遅延
・医薬品搬入滞留
「物流が詰まっています」
ユーリが眉をひそめる。
「接続が切れれば当然です」
アーネストは答える。
「短期的混乱です」
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だが五日目。
外洋帝国の艦船が、
山岳沿岸港へ入る。
「信用保証協議団の到着」
報告が走る。
「軍事保証型信用制度の説明会を実施」
アーネストは立ち上がる。
「接触禁止通達を」
「既に会談済みです」
沈黙。
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山岳都市・議場。
マルク・セディアンは、苦しげに言う。
「連合は我々を切った」
「外洋帝国は保証する」
議場が揺れる。
「保証は軍港提供が条件だ」
「それでも今よりましだ」
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分散連合本部。
「二団体が外洋制度への参加を表明」
報告が冷たく響く。
「軍事保証付き信用は市場に好評です」
利回り安定。
価格上昇。
数字は嘘をつかない。
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アーネストは、肖像画を見上げる。
「あなたは中央を壊した」
だが今、中央は戻っている。
しかも強く、速い。
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夜。
補佐官が低く言う。
「……我々は負けたのでは?」
「違う」
アーネストは答える。
「規則は正しい」
だがその言葉に、
確信はなかった。
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山岳地域の小商人が叫ぶ。
「保証があるなら安心だ」
市場は安心を選ぶ。
分散は、時間がかかる。
中央は、即効性がある。
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報告が最後に告げる。
「セディアン連合、外洋帝国制度へ暫定接続」
アーネストは、初めて言葉を失った。
規則は守られた。
だが――
地域は失われた。
数字は正しい。
だが世界は、別の選択をした。
分散は、初めて明確に敗れた。
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