第48話 中心ではない
再び、王都中央銀行。
重厚な扉が閉じる。
ダミアン・ロストフは、
以前と同じ席に座っていた。
「利回りは、高止まりです」
私は、率直に言う。
「ええ」
彼は、淡く笑う。
「だが破綻はしない」
「その通りです」
沈黙。
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「あなたは、王都を潰したかったのですか」
彼が問う。
「いいえ」
私は即答する。
「潰す必要がなかった」
「……傲慢だな」
「現実です」
彼は、わずかに目を細めた。
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「国家は、最後に徴税できる」
ダミアンは言う。
「信用圏は、最後に契約を切れる」
「ええ」
「どちらが強い」
私は、静かに答える。
「状況によります」
彼は、初めて笑った。
「正直だ」
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「王都は残る」
彼は、ゆっくり言う。
「だが、唯一ではない」
「ええ」
「それが、あなたの望みか」
「いいえ」
私は、首を振る。
「市場の選択です」
沈黙。
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「あなたは、王にならない」
ダミアンが言う。
「なれますよ」
「なりません」
私は、静かに続ける。
「中心は、作らない」
彼は、深く息を吐いた。
「国家は中心を必要とする」
「信用は、必要としません」
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「あなたは危険だ」
彼は、最後に言う。
「国家を否定しないが、
従属もしない」
「国家は、必要です」
私は、穏やかに答える。
「ただ、唯一ではない」
沈黙。
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別れ際。
「もし不況が来たら?」
ダミアンが問う。
「縮小します」
「国家は?」
「拡張するでしょう」
「どちらが正しい」
「どちらも」
彼は、小さく笑った。
「……分散か」
「ええ」
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帰路。
ユーリが、小さく言う。
「決着ですか」
「いいえ」
私は、空を見上げる。
「合意です」
国家は残る。
信用圏も残る。
世界は、一つではない。
王都は中心ではなくなった。
だが消えてもいない。
それでいい。
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夜。
私は、帳簿を閉じる。
信用圏は、制度として自立した。
清算機構は動き始めている。
私がいなくても、回る。
(ここまでか)
風が静かに吹く。
通貨戦は終わった。
勝者はいない。
ただ――
世界が、二つになった。
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