第47話 高止まり
数字は、落ちなかった。
「王都国債利回り、依然として高水準」
ユーリが報告する。
「金準備の減少は止まりましたが、
調達コストは下がりません」
「信用圏は?」
「安定しています」
微増。
小さいが、確実だ。
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王都中央銀行。
「利回りが下がらない理由は?」
側近が問う。
ダミアンは、静かに答える。
「市場が“疑い”を残している」
「破綻懸念ですか」
「違う」
彼は、ゆっくりと言う。
「選択肢があるからだ」
沈黙。
「信用圏が、代替になっている」
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ヴァルハイム。
ソフィアが分析資料を閉じる。
「王都は持ち直しました」
「だが基準金利が上がったまま」
エレナが微笑む。
「王都は強い」
「ええ」
ソフィアは頷く。
「だが、以前より“高くつく”」
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北方同盟。
「王都は破綻しない」
ヘンリクは言う。
「だが、以前ほど安くない」
側近が問う。
「信用圏は?」
「安定」
彼は短く答える。
「分散が正解だ」
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辺境伯領。
私は、静かに利回り曲線を眺める。
王都は、生き残った。
崩れない。
だが――
以前より、常に高い。
それは罰ではない。
市場評価だ。
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ユーリが、慎重に言う。
「……勝ったのですか」
私は、首を振る。
「いいえ」
「では」
「世界が、分散しただけです」
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王都中央銀行。
ダミアンは、資料を閉じる。
「完全勝利はない」
「信用圏を潰せませんでした」
「潰す必要はない」
彼は、低く言う。
「王都は残る」
「だが」
「中心ではない」
沈黙。
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夜。
私は、帳簿を閉じる。
信用圏は、巨大になった。
だが国家も消えない。
通貨戦は、終わらない。
ただ、構造が変わった。
国家は唯一ではない。
信用は従属しない。
窓の外、街は静かだ。
世界は崩壊しなかった。
だが――
二つになった。




