第45話 信用のひび
減少は、小さい。
だが確実だった。
「流通量、二・七%減」
ユーリの声は、静かすぎた。
「主に中規模商会が、王都国債へ分散」
「理由は?」
「利回りと、国家保証」
私は、頷く。
(合理的だ)
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会議室。
空気が、わずかに違う。
「信用圏は安全だ」
「だが王都も潰れない」
商人代表が、慎重に言う。
「分散するのは、自然です」
反論はできない。
信用は、強制しない。
それが原則だ。
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ソフィア・レヴァインは、冷静だった。
「これは攻撃ではありません」
彼女は資料を示す。
「市場は、最終清算能力を見る」
「税を持たない以上、信用圏は劣後します」
ユーリが、歯を食いしばる。
「ですが破綻率は低い」
「不況時です」
彼女は、淡々と続ける。
「同時に損失が発生した場合、
誰が最後に責任を負いますか?」
沈黙。
誰も、答えられない。
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北方同盟。
「一部資金を王都へ戻す」
ヘンリクは、簡潔に言った。
「両方持つ」
合理的だ。
信用圏は、止めない。
止められない。
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王都中央銀行。
「信用圏からの流出、拡大傾向」
ダミアンは、ゆっくりと頷く。
「恐怖は、静かに広がる」
「攻勢に出ますか」
「いや」
彼は、静かに言う。
「待つ」
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辺境伯領。
夜。
私は、一人で帳簿を開く。
信用は積み上がっている。
だが、盤石ではない。
(制度は、私の信用に依存している)
それが問題だ。
もし私がいなければ。
もし判断を誤れば。
信用圏は、揺れる。
窓の外、街は穏やかだ。
だが市場は、穏やかではない。
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ユーリが、扉の外で言う。
「……どうしますか」
私は、すぐには答えなかった。
国家は、債務で縛る。
信用圏は、契約で結ぶ。
だが契約は、最後の責任を曖昧にする。
(清算機構が必要だ)
私は、ゆっくりと口を開いた。
「再設計します」
「何を」
「最後の責任を、明確にする」
初めて、制度が変わる。
通貨戦は、次の段階へ入る。
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