第40話 資源を揺らす者
北方の価格が、三日で跳ね上がった。
「……鉄鉱石、二割高」
「穀物先物も上昇しています」
ユーリの報告は早い。
「偶然ではありません」
私は、即答した。
「中央銀行ですか」
「ええ」
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王都中央銀行。
ダミアンは、淡々と指示を出していた。
「北方同盟との先物契約を増やせ」
「現物は押さえなくていい」
「価格を動かせば十分だ」
「信用圏は資源連動を始めました」
側近が言う。
「だからだ」
彼は、冷静に答える。
「資源が不安定なら、信用も揺れる」
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辺境伯領。
「準備高に影響が出ます」
ユーリが緊張した声を出す。
「三割担保の前提が、崩れる可能性が」
「崩れません」
私は、帳簿を開く。
「我々は現物を持っています」
「ですが、市場価格が」
「市場は揺れます」
「倉庫は揺れません」
沈黙。
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フェリクスが、低く言う。
「先物操作だな」
「ええ」
私は、頷く。
「価格だけを揺らしている」
「どう出る?」
「買いません」
ユーリが、目を瞬かせる。
「買い支えない?」
「価格防衛は、国家のやり方です」
私は、静かに続ける。
「我々は、保有量で示します」
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数日後。
市場はざわついていた。
「信用証書、大丈夫か?」
「資源価格が動いている」
だが、公式発表は簡潔だった。
【準備高:変動なし】
【担保率:維持】
「……現物確認済み」
商人が、倉庫を見て呟く。
「減っていない」
「価格は?」
「市場の話だ」
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北方同盟。
代表ヘンリクは、報告を受けていた。
「王都が価格を吊り上げている」
「信用圏は?」
「買い支えていない」
ヘンリクは、目を細める。
「……面白い」
「どうされますか」
「様子を見る」
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王都中央銀行。
「価格が効いていません」
側近が言う。
「信用証書の流通量、微増です」
ダミアンは、机を指で叩いた。
「現物主義か」
彼は、小さく息を吐く。
「価格を守らないとは」
「次の手は?」
「揺らすのは価格ではない」
彼は、静かに言った。
「供給だ」
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夜。
私は、北方同盟からの問い合わせを読む。
【直接協議の提案】
ユーリが、息を呑む。
「資源国家が、動きます」
「ええ」
私は、地図を広げる。
「資源を揺らされるなら」
指を置く。
「資源と組む」
戦場は、通貨から資源へ。
だが、原理は同じ。
強制か。
選択か。
私は、静かに呟いた。
「通貨戦は、まだ序章です」




