表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された悪役令嬢ですが、帳簿を燃やした王都が先に滅びそうです 〜追放先の辺境で実務改革を始めたら、国家より信用が強くなりました〜  作者: 篠宮しずく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/106

第38話 海は王都のものではない

海図は、王都の法律を知らない。


「ヴァルハイム王国より、正式使節が到着しています」


ユーリの報告に、会議室の空気がわずかに変わる。


ヴァルハイム。

大陸西岸を支配する港湾国家。

海運、造船、保険、仲介貿易。


王都よりも、金の流れを知っている国だ。


「目的は?」


「為替制限に関する協議、と」


私は、短く頷いた。


「通す」


---


応接室に現れたのは、若い女性だった。


装飾は控えめ。

だが、視線が鋭い。


「エレナ・ヴァルハイムと申します」


第二王女。

そして、実質的な商務責任者。


「信用証書を拝見しました」


挨拶の後、彼女は単刀直入に言った。


「面白いですね」


「危険でもあります」


私は返す。


「だから来ました」


彼女は、迷いなく続けた。


「王都は為替で封じました」

「ですが、海上決済には及びません」


「貴国は王都通貨を一部採用している」


「ええ」


エレナは微笑む。


「ですが、義務ではありません」


---


会議は即座に本題へ入った。


「信用証書を、海運保険の担保に使えますか」


「条件付きで」


私は答える。


「資源準備高との連動が前提です」


「どの程度の比率で?」


フェリクスが横目でこちらを見る。


私は、静かに提示した。


「三割」


エレナの目が細まる。


「低いですね」


「保守的です」


「大胆ではない?」


「崩れない方を選びます」


沈黙。

そして、彼女は笑った。


「気に入りました」


---


「王都は、海を制御できません」


エレナは、地図を指でなぞる。


「港湾国家は、税よりも流通を優先します」

「止めれば、自国が損をする」


「つまり」


ユーリが、息を飲む。


「海路での信用証書決済を、認めると?」


「限定的に」


エレナは訂正する。


「試験運用です」


---


王都。


「ヴァルハイムが、動いた?」


ダミアンの声は、初めて硬くなった。


「海上決済で信用証書を受理した模様です」


「……海を押さえられない以上」


彼は、短く息を吐く。


「為替封鎖は、陸路限定になる」


側近が、慎重に言う。


「国際取引が、王都を経由しない可能性が」


「可能性ではない」


ダミアンは、静かに言った。


「始まった」


---


辺境伯領。


「これで、王都通貨を通さない越境決済が成立します」


ユーリの声は、震えていた。


「ええ」


私は、頷く。


「陸は国家のもの」

「海は、商人のもの」


フェリクスが低く笑う。


「王都は、関所国家だ」

「海は、関所を作れない」


---


夜。


私は、帳簿に新しい項目を加える。


【海運担保決済】


数字は、まだ小さい。

だが意味は大きい。


王都は為替を止めた。

だが、海を止められない。


通貨は、国家の内側で強い。


信用は、外側で強い。


私は、静かに呟いた。


「為替の壁は、越えた」


戦いは、まだ終わらない。


だが――


王都は、包囲された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ