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序曲 1(2)
なんの合図もなくお気に入りのお菓子が店頭から無くなってしまったときや、気が合うと思っていた人がもう視線を合わせなくなった時みたいに、ある日突然、1度目が覚めたら眠れなくなってしまった。つまり、自分にとっては意味があったものでも、あちら側にとってはどうでもいい存在だったのだ。
僕はさっきまでいたところから見放されて、またこちら側へ来た。
顔を洗って、歯を磨く。
予定と持ち物を確認して、教科書を1冊引き抜いた。
まだ時間が余っているので、30分ほど走りに行くことにする。これもいつものルーチンだ。
家の者を起こさないようにして、そっとドアを開ける。
外に出ると一層冷気が体に纏って、拒絶されているように感じた。
靴紐を確認して、走り出す。
走っているあいだ、いつも子供の頃に見た夢を思い出す。
踏み込んだ足が生むリズムと、全身が感じる高揚感。
そして、体を包む圧力。
あそこにいる時、僕は自由に、一面真っ黒な草原を駆け回っていた。たとえ圧迫されたって、まったく気にしなかった。誰がなんて言ったって、走り続ける限り、僕は僕であり続けると思った。
でも、僕は抜け出した。
あの闇から、離脱した。
そして、毎朝必ず走っている。
いつか存在ごと無くなるのを、怖がっているからかもしれない。




