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召喚獣

とうとう私の家というものができた。

賃貸ではあるし、家具なども備え付けをそのまま使うので、他人の家感が満載だが、我が家である。

そんな我が家にガイランクさんはやってきていた。


そもそも家の最終手続きとデートの日が被っていたので、ガイランクさんにも同行してもらっていたのだ。

そんなガイランクさんは、我が家の椅子に座り、何やら悩んでいた。

「どうかしたんですか?」

私が尋ねても上の空で返事をするだけであった。


思えば今日、会った時からそうであったのだ。

家を借りる手続きであまり気にしていなかったが、それも終わった今、心配になってきた。



「⋯⋯、あのな、重いかもしれないが」

やっとの思いで重い口を開いたガイランクさんは、懐から1枚のカードを取り出した。

「なんですか?これ」

私はガイランクさんからそのカードを受け取る。


そこには真っ白なふわふわの被毛の狼のイラストが描かれていた。

すらりとした体型ながらもがっちりした筋肉からフェンリルのかっこよさが垣間見れる。

「召喚カード」

「は?」

ガイランクさんの零した言葉に私は素っ頓狂な声を出してしまう。


「フェンリルって魔物なんだが、そこそこ希少で強い」

ガイランクさんが説明を始めるが、私はそれどころではなかった。

「ちょ、ちょっと、希少でってめちゃくちゃ高いって聞いてますよ?」

「金で買ったんじゃねぇし。前、恐竜出してもらってかっこよかったから、伝説のフェンリルも見てみてぇって思って」


自分の知的好奇心により、ケンタウロスからドロップした弓矢と、このフェンリルの召喚カードを交換したらしい。

それだとしても、こんな高いものほいっと渡されても困るのである。

「俺が持ってても使えるもんじゃねぇし。受け取って欲しい」

「いや、でも」

「ほんと、迷惑かもって今日になって思ってきたんだが、交換した時は興奮しててそれどころじゃなくてな」

必死で言い募るガイランクさんがなんだか可愛く見えてきた。

……テレビショッピングで騙されそうなタイプである。


気軽に渡せるプレゼントではないのはわかっているが、それでも受け取って欲しいと懇願され、私はしぶしぶそのカードを受け取った。

「とりあえず、召喚してみましょうか」

私がカードを片手にそう呟くと、ガイランクさんはワクワクした顔でこちらをみる。


家にいきなり大きな魔物が出て家が壊れるのを恐れ、町から降り、森の開けた場所へ向かった。

以前、リュイくんとご飯を食べた場所でもある。

その場所で、私はカードを構え、フェンリルを召喚した。

しかし、その場に出て来たのは、イラストとは全然違った生物であった。


「……ポメ?」

真っ白なふわふわした被毛は同じだが、見た目はポメラニアンである。

狼の3倍は大きいと予想していたサイズは20cmほどの小型犬のサイズ、すらりとした体型は見る影もなく、もふもふとした体型となっていた。

かっこいいフェンリルを想像していたガイランクさんは膝から崩れ落ちていた。

「偽物かよ」



尻尾をふりふりするポメは私の足元でチョロチョロと動いている。

私は屈み、ポメをなでなでする。

ポメは千切れんばかりに尻尾を振って喜んでくれた。

「かわいい」


「かわいいけどよ、フェンリル見たかった……」

ガイランクさんもポメの頭をガシガシとなでる。

力が強すぎるのか、ポメは嫌がり、毛を逆立てた。

「無礼だぞ!」

そして突然喋る出したのだ。


私はガイランクさんと目を合わせながらびっくりする。

「喋った」

「オレは、高貴なるフェンリルだぞ。人間の言葉くらい喋れる」

ポメはどこか得意そうな表情をしてこちらを見る。

見た目犬なので、威厳など感じない。


「このイラストと全然違うけど?」

私は召喚カードをポメの前に差し出して見た。

「ほお、懐かしい。これは300年ほど前の姿だな」

関心したようにポメは昔話を始めた。


ポメことフェンリルのウーガは、300年ほど前までは、このイラストのような姿で自由であったそうだ。

しかしとある冒険者との戦いにより、瀕死になりちょうど通りかかった魔術師により、姿をポメに変えられてしまう。

実験体として数々の悪逆非道が行われ、最後には金目当てに召喚カードに落とし込まれ売られたのだ。

幻影の呪文により姿が変えられているだけなので、召喚カードのイラストには本来の姿が印字されていたのが運の尽き。

希少な品と高値で売買されるが、いざ召喚してポメが出てくるとみな一様にそのことを隠して売りに出すということが繰り返されたそうだ。


疲弊したウーガは心を閉ざし、たまに召喚されるという日々を過ごしてきたのだ。

「じゃあなんで、私には尻尾を振ってくれたの?」

「異世界の民よ、お主になら、この魔術師の術が解けるのでないかとおもってな」

オレを本来の姿に戻してほしい。ウーガの頼みを私は軽々と引き受けた。


心配そうにガイランクさんがこちらを見ているが、サムズアップしてみせる。

『為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり』だからね。

それにポメ、可愛いからね。

「俺も手伝うよ」

ガイランクさんはそんな私を見て、ため息をついたが手助けをしてくれることとなった。


希望としては次のスキル獲得で、それらしい項目があるのが望ましいが、地道に調べることも忘れないようにしようと思う。

ちなみにガイランクさんはこの召喚カードを交換した相手が同じ職場らしく、文句を言ってやると意気込んでいた。



私の召喚では、召喚のタイミングのみMPが消費され、その後出しっぱにしていてもMPは減らないのである。

そのため、ウーガはずっと外に出て私の側について生活することになった。

私は今日1日で新しい家に、可愛い番犬をゲットすることができたのである。



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