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ユニ -モチーフ・桐歌-  作者: オッコー勝森
第四話:花屋地下修練場

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17/21

田峰・1


「姉ちゃん。髪真っ青になってる。根本から」「本当? うわ」


 小太郎から手鏡を受け取り、ゲンナリする。溜息が出た。まあ、青プリン状態のDQN感が消えただけマシと思おう。

 引き続き場所は病室。先ほど一ヶ月の入院という沙汰が下され、その間は帰宅出来ないことが決まった。部屋のノートパソコンを持ってきてくれた小太郎には感謝しかない。

 学校はしばらくリモートのみ。校舎は倉庫の修理が終わるまで閉鎖とのこと。パソコンルームにタブレットを隠したままなのが辛い。みこちゃんを騙して取りに行かせるか。

 お従姉ちゃんが口を開く。


「えっと。染髪料とか持ってこようか?」

「大丈夫よ。病院側が用意してくれるらしいわ」

「お姉ちゃんに出来ること、何かあるかな? リンゴ剥くとか」

「ここを血まみれにする気?」「シェーバー使えばなんとかなるし!」


 ピーラーだよお従姉ちゃん。リンゴから髭やすね毛が生えてたら色々と台無しだ。その不器用さと貧相な語彙力で海辺のオシャレなホテルのフロント係が務まるのか、いつも心配になる。

 水柱が昇った日、お従姉ちゃんの勤めるホテルも海底人たちの攻撃対象となった。が、ホテル上階に避難していた彼女は、海底人の姿を見ていない。襲撃は人間のテロリストによるものと教えられているようだった。

 図太くかつ鈍いため、精神的なショックは受けてなさそう。良かった。

 家族の帰宅後、健康的な病院食に舌鼓を打ちながら、暗い窓の外をぼんやりと眺める。一ヶ月の入院は、「安静にしておくように」という意味合いももちろんあるだろうけれど、ユニの力(ブロック)所有者の観察期間でもあるのだろうなと推測出来る。どう振る舞おう。AUFOの出方次第か。

 掌に顎を乗せる。天久保は無事だろうか。

 扉がノックされた。


「どうぞ」「さっきぶり〜。田峰優香と言います、よろしく」


 白衣の女だ。目覚めた直後にやってきた二人の片割れ。此度は単独だ。熊男はいない。早速サンプルを取りに来たのだろう。スタイリッシュなケースに入ったタブレットを取り出し、「体の数値はもう取ったから」という前置きの下で質問を始める。


「髪の色が変わり始めたのはいつから?」「八年前からです」

「綺麗な色だよね。色が変わり始めた頃、何か特別なことはあった?」

「お父さんとお母さんが、テロリスト(・・・・・)に殺されました」

「なるほど、辛かったね」


 事務的な慰めだった。淡々と文字を入力するだけで、驚きも憐れみもない。


「次に色が変化したのは?」


 次? 確かに変化は段階的だったけれど。とりあえず嘘を吐こうとして、小太郎やお従姉ちゃんに裏取りされればすぐにバレると思い直す。


「水柱が上がった日の、翌朝だわ」

「ふむ。いつからユニのメッセージを受け取るようになったの?」

「ここ最近だわ。一年半くらいから」


 ちょうど、SNSアプリWorkHorseを使い始めた辺り。白衣の女、田峰は、少し驚いた様子でタブレットペンシル握る手を止めた。


「ブロック発現の時期と随分ズレてるね〜」「普通は同時期なんですか?」

「うん。『普通』が分かるほどのサンプルは集まってないけど。君含めて八人。歌で人を眠らせたり、言霊を具現化させたり、命令口調で話して他人を操作したり、みんな興味深い超能力を持っているよ」

「あの」「ん?」

「超能力があると言われても。自分のそれがどういう力なのか知らなくて」

「え? 髪の色、もう完全に変わってるじゃない。つまり、ブロックの能力を三回以上行使したということでしょ? なのに知らないの?」


 なんだって?

 髪に触れる。超能力を三回以上使った? 覚えがない。いや。海底人どもに津波対策用吸水ポリマーを浴びせてやったのち、私のいる倉庫に向かって猛スピードで駆けてきた「ホホジロザメ」が、気づけばなぜか、仲間たちとともに海へと帰っていた。あの時ブロックの能力を使った可能性はある。

 今日、鯛頭の海底人に襲われた際にも。

 しかし、思い当たるのは二回だけ。両親が殺された直後に色が変わり始めたことを踏まえると、恐らくその頃にも一回使ったのだと考えられるけれど。


「今まで見てきた子たちについて、ブロックの行使には必ず『発声』が伴っていた。喉元に特殊なマークが浮かび上がっているくらいだし、これはブロックについての共通ルールと見ていいと思うのよ」


 田峰は身を乗り出しながら、こう続ける。


「桐歌ちゃんが望むなら、ブロック検証のための場を用意してあげてもいいわ」


 仰け反った。

 申し出について考える。すでにブロック所有者であることはバレた。自分だけで能力の検証を行うにはリスクが伴う。悪い話ではない。


「では、お願いします」

「そう来なくっちゃ。無理言って桐歌ちゃんの入院を延ばした甲斐があったというものだわ〜。学校はリモートらしいし、問題ないでしょ?」

「入院費をそちらで出してくれるなら」


 互いに微笑んだ。


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