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いつかの五月に  作者: 小鳥遊 理
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その2

梅田での再会・・そして・・・

別れてしもたから、よけいここへ来にくかったのかもしれんなぁ・・・・・・・」

「地元の子と一緒になって、何年目かに一度電話があったけど、

会うの断ってしもたからその後、音信不通やさかい、東京で元気にしとるとお

もとるけど・・・・」

「もう45やで、僕も。子供も、17や、時のたつのは早いものやなぁ」

「わしかて、55やでぇ」「えー10しかちがわなんだんかいな」

そんな会話ののち、今度は、家族を連れて再会することを約束させられて

懐かしい店を後にした。


  寺田町の駅から、作品展のある、心斎橋まで、遠い記憶と、短い道筋をたどりながら・・・

地下鉄の階段を駆け上がると、デザイナーになれると、信じきった真っ直ぐな瞳達の

出迎え・・・・、20年以上も前は、俺もこうだったかな、と、くすぐったい思いにかられながら

作品の稚拙さが、妙にあったかかった。     小一時間ののち、環状線に乗った。

  俺にとっては、阪急ファイブでの、四人展が、デザイナーとしての初めで、終わりだった

かもしれない・・・・・。マミの京都でのワコールレセプションやら、企画会議に明け暮れた

日々。そういえば何年かまえ、ジャパンショップに無理やりついてきた由梨子は、未だに

高島屋の企画やってるんだろうなぁ。

大阪・神戸・京都・札幌・仙台・東京・金沢・・・よくもまぁ、彼女達は、俺みたいなエー

かげんな男のどこがよかったのか?  それにしても女は、強い、いや彼女たちが

特別なのか・・・・芸大の助教授、ワコールのチーフデザイナー、ゼネコンのディレクター

制御メーカーのオーナー、スウェーデン大使館特別補佐官、製薬会社のバイオ研究

主任研究員、CGデザイナー、絵本作家兼染色家、・・・・・・・

変な女ばっかり・・・ただの女性はおらんのかいなぁ・・・と、かみさんの顔を思い出したら

またまた、くせもんぽい。

 自分の才能の無さに、変にホッとしながら、車窓をながめているうちに梅田に着いた。

涼子の待つ新阪急ホテルへの地下街をあるきながら、眩暈に似たデジャブーを感じながら

ワコールに勤めていたマミとの短い同棲生活を反芻した・・・・・・・僕の勤務していた会社

のクライアントでもあった、ワコールのデザイナーだったマミと、打ち合わせに不便だからと

カメラマンの公平との二人暮らしの長屋に、ひと部屋借りて、京都本社へ出向していた彼女との、奇妙な三人の生活。公平は、僕より4歳年下だったので、兄貴!!と、慕われ

彼女にも、あねさん呼ばわりで、ヤクザじゃないのよ、と、いつも面白おかしくすごしていた。

半年ほどの、同凄生活だったが、一番僕を理解してくれていた人だった・・・・・。そんな記憶

を辿って・・・。雑踏に押されながら、ホテルの喫茶店に、たどりついた。

「 意外と早かったわね! 名古屋で展示会見て、それから南行ってって晴美

ちゃんから、聞いてたから・・・」

「 おまえさんこそ、学会の集まりが、神戸であったらしいじゃないか?」

「ねぇ、上いこうよ、」

珈琲の香りも、粘るような暑さを感じていた・・・・・・

涼子のあとをついてエレベーターに乗った。てっきりラウンジかどこかの料亭かと

思っていたが、上階のフロアーで、降りた。

「 さぁどうぞ!」 「なんだいここは?」

「私の、缶詰部屋よ、執筆に追われる生活をしてると、あちこちにいるのよね。」

ホテルを家がわりに、使うというのは聞いたことがあるが・・・・・

「生活とは、無縁の匂いだね」

「由美子、最近逢った?」

「いや、音信不通状態だけど、どうして?」

「臣ちゃん、今度は院生、だって。」「何を言いたいんだ?」

「本当は、誰の子かなぁって晴美とも話してたんだけど・・・・・・」

「おいおい今更そんな話したって、DNA鑑定でもやれってか?」

「由美子が、違うって言うのを、どーせー言うんじゃ(笑)」

「あーぁ疲れちゃった・・・・お風呂、入らない?」

「そーだな、田舎から急に人ごみの中で、疲れた」

本当に疲れていた、田舎暮らしが身についたせいか、いつのまにか人ごみに

流されることが、苦痛になっている自分に気がついた・・・・・・。

昔は、その孤独のなかが、好きだったのに。

バスタブに浸かって、トイレと、フロが一緒なんて、誰が考えたんだ・・・

などとボーっとしてると・・・「入っていい?」

「おいおい、何だよ?!」制止する暇もなく、涼子がすっぱだかで飛び込んできた。

「一緒に御風呂入るなんて、白馬以来だネ」

ホテルの風呂にしては大きめだが、大人二人じゃ狭いバスタブに

涼子は、もつれこんできた、「どーした?」「いいじゃない、結構なバツイチが

相手なら、それとも妻に操をたてる、旦那さまかな?」

「私となら、浮気にもならないでしょ、マミヘイや、由美子なら、あぶないけど・・・」

「大学の助教授さまが、こんなただのおっさんに、抱かれたいってか」

「そー昔とちがって、頭は薄いは、腹は出てるは、ただのおっさんでも

ナツは、ナツじゃない!」

「おまえって昔から、変な奴だったけど、やっぱり変だよ・・・・」

「私ねぇ、由美子と一緒のお嬢さんだったけど、親に反発して芸大の院まで

行って、由緒ある野村を蹴って、今の道進んでるけど、後悔は、してないわ、

只、親の薦める相手と、結婚したのだけが間違いかな、昔、貴方が、

「おまえたちの常識は、世の中の非常識だぞ」なんて馬鹿にされてたけど

人と人のつながりとか、大事な事って貴方が教えてくれたって思ってるの

彼も、非常識の固まりだったから、蹴っちゃった」

「もう別れてどれくらいたつんだ?」

「7年、子供作らなかったのも、一つの原因だけど、よかったわ今思うと。」

「32で、別れて、もうじき40、学生教えてると、若くなるわよー」

「元、ミス着物も、もー40かー・・・・・・」

「変な感傷のしかたしないでよー、さっ、背中流してあげる・・・・」

もともと背が高いと思ってたが、「お涼さん、背どんだけや?」

「167センチ、バスト87、ウェスト61、ヒップ88、ウェイト52キロ、視力0.7

以上!!」

おもわず 、吹き出してしまったが、昔と変わらず素敵な体型を、バスタブから

見つめてしまった。「さぁ、お代は見てのあとからよ、上がった、上がった」

背中といわず、体中、丹念に洗ってくれる涼子に

「おいおい、子供じゃないんだから・・・・・」

「いいじゃない、少しの時間私にくれても、昔から、由美子に、真美江に譲りっぱなしだったから、一度くらいこのすかんたこを自由にしたかったんだから」

「嘘だろ、そんなそぶりみせなかったくせに・・・良く言うよ、圭たちに囲まれて、

女王様、しもべたちっう雰囲気で、俺なんかかやの外だったぜ」

「全然、生きるベースの違うマイペースな貴方が、怖かっただけよ」

「なんでしがねぇ貧乏学生だった俺に、おまえらみたいな金持ちのお嬢様が

よってくんのか、おりぁ全然わからん・・・・」

「ナツ、貴方誰に対してもものおじしないし、自分の世界へは、誰も

入れないけど、公平っていうのとはちょっと違うかもしれないけど、本当の意味で

やさしさってのかな、わかるのよ・・・女の直感かな。馬鹿な男、多いけどね・・・」

「さぁ、シャワー浴びたら、ルームサービスきてるから、あがるわよ!」

おもいっきり、冷水をこっちめがけて浴びせて、さっさとでていった涼子の後ろ姿を

白い靄の中で見送りながら、遠い記憶を辿った・・・・・・


あれは大学一年の秋だったか、隣の下宿にいた京大生の連れに、コンパが

あるけど、一緒に行かないかと誘われたのが、そもそもの始まりだった。

こちらは、産大生だったから、精華短大の寮生の子達とは、よく遊んだけれど

京大生主催のコンパは、初めてだった。

「 圭ちゃん、俺なんかさそうより、一緒の京大生さそえばええのに・・・・」

「 まぁそういうなって、うちのやつら、つまらん、なっちゃんが俺は好き!!」

「 おいおい、ホモはいややぞ、ケツ痛いし、変な奴・・・・・」

このころから、圭一郎をはじめとした、現在、官僚やら、教授やら、医者、

会社の幹部候補生などの、ネットワークに、何故か人生相談相手?

みたいな役で、コミュニケーターとして、一員に入ってしまうのだが、

多分、俺のような馬鹿と、話してると、ホッとするんだろうと、思うが、変な

金持ちグループではある。

その、コンパで、由美子と、出会ったのは、ひとつのターニングポイントだった

 京都女子大生の塊からはずれて、ポツンと、所在なさげに立ってる美しい人がいた。

周りには、それとなくガード役ぽい京大生、数人。  圭が、すっと近づくと、その輪が

ひろがった、

「 おい、姫、紹介するよ。僕の悪友」、「あらっ、圭ちゃんが、友達なんて言う貴重な御方は、どなたかしら」

「圭ちゃん、家でて、一人わざわざ上加茂に下宿して楽しそうネ!」

「お父様、よく許してくれたものネ、うらやましいわ」

「僕が、京大行く条件だったからね、親父は、東大行かせたかったんだろうけど

僕は、京都っ子さ」  といって、くったくなく笑う圭一郎も、財閥の系統のご子息

だったが、俺とは、妙に気があった。圭一郎と、幼馴染だという由美子は、電子機器

会社のオーナー一族の娘だった。

  あの出会いが無かったら、僕の大学生活も、違ったものになっていただろうけど

一部上場企業のお嬢様と、貧乏三流大学生・・・どう考えても不釣合いなカップル

誕生は、少なくとも、彼女には後で考えるとずいぶん違う人生になってしまったかもしれな

い。

涼子の呼ぶ声に、遠い記憶から・・・醒めた。

「なーに、ぽーとした顔して。昔から湯当りするほうだったけど、大丈夫?」

「おまえたち、何画策してんだ?昔の男ひっぱりだして、ギロチンでも

  かけようってのかい?」

「いーぃナツ、そんなつもりだったら、とっくに抹殺されてるわよ(笑)」

「貴方は、何故か私達にとって、初めての人なのよ。貴方に言わすとそれがどーした

って、いうだろうけど、私達は、それが嬉しいの、貴方で、よかったって、思ってんだから」

「へっ、仮性包茎で、早漏気味が、よかったってのかぁ、情けないね」

「抱かれた女にしか、わかんないものよ!!、さぁ食事しましょう」

  冷えたビールが、心地よかった、

「ナッチャン、昔っからお酒弱いから、シャブリの味なんかわからなくなるまえに

とっておきの一本、あけちゃおー!!」

確かに、酒の味は、日本酒の「ゆすら」が旨い!ってのがわかるくらいで、洋酒は

さっぱりだった。ラインワインの白がすきなくらいだから、ロートンシルやら、ロマネコンティ

なんぞさっぱりなのである。F1のときにかけあってるシャンパンを、ネバーっとして後が

大変だろうなぁくらいにしか思わないのだから・・・・・・。

ローストビーフをつまみながら、涼子のとっておきを堪能した。

自然と、ベットルームへもつれるように重なっていった・・・・・・

「そのままはいって・・・・・処理してあるから・・・・・」

懐かしい匂いに「この匂いは、涼子なんだな・・・・・・」

「今、何もつけてないわよ。コロンは・・・」

「おりょうさんの匂いは、おりょうさんなんだよ・・・」

「オスにしかわからない相手の匂いってやつだよ、うーん懐かしい・・・」

「変な人・・・・・あーいっちゃう・・・・!!!・・・・・・・・」

「 きて・・・・!!!!」 「・・・この感じなのよ、あなたしかない感じ!!!」

胸元に、ぴったりひっついて余韻を楽しむように身体を震わせている

涼子に、「 男なんて一緒じゃないの?抱き方にも癖はあるだろうけど・・・・」

「・・・・・なんて言ったらいいんだろ、安心するっていうのも変かなぁ??

私もこの歳だから、経験は人並みだけど・・・ナッチャンはナッチャンだー!

って感じなのよ・・・・わかんないんだろうなぁ・・・・」

「 セックスのよさじゃなくて、何だろ・・・・貴方であること・・・・そのものなのよ」

「俺には、わかんねぇっす、早漏で、仮性包茎の上、テクニックもねぇしな」

「・・・・・・馬鹿ねぇ、そんな問題じゃないの、女にとってはネッ!!!」

「抱かれた女が、素敵だっていうんだから、いいじゃない、おかしな人・・・」

「だまってしばらく抱いていて・・・・・・・、いい気持ちなんだから・・・・・・」

・・・・・・うとうとしていたら、涼子が「あっ!いっけなーいこんな時間だー」

時計に目をやると五時前だった・・・・

「さぁ、早くシャワー浴びて!!」  うながされるまま、熱いシャワーを浴びた

涼子も一緒にバスタブに浸かって、求められるまま長いキスをした・・・・・

「今日は、有難う。会ってくれると、思わなかったから甘えちゃった。ごめんね」

「梅田まで、お見送りさせてね、四条烏丸で降りて右側のビルの前だから・・・」

「 なんだい、そりゃあ・・・」「  行ったらわかるって、さぁ阪急よ、あっ、これ

お土産、それから、ホテル何時使ってもいいわよ、わかるようにしてあるから・・・」

なにがなんだかわからないまま大阪を後にした・・・・・


特急のなかで、夕刻の町並みをぼーっと眺めているといつのまにか、四条烏丸に

着いた。

 外にでて、何年かぶりの京都の空気・・・・・・ビルの背にもたれながら

まぶしいくらいの夕日のなか、変な既視感に、囚われながら、雑踏の音や

ビル音に・・・浸っていると、滑るように一台の、マセラッティが停車した・・・・。スモークウィンドーの向こうから、とまどった微笑が、こちらを見つめていた・・・・。

 どれくらいたったか、突然のクラクションに我に返った。

助手席に廻って、あわてて乗りこんだ。

北大路をすぎる頃、「突然で、ごめんなさい、ご迷惑だったでしょう?」

忘れていた懐かしい声・・・・・・

「一体どうなってるんだ?晴美から、突然会社へ酒、送ってきて、聞いたら

慰安旅行で、鳥羽へ行ったので、思い出して・・・・とかで

今度京都へ出張だから、都合つかない?なんて言うから、俺も大阪に用が

あるからって、気楽に返事したんだけど、お涼さんから携帯に、新阪急ホテル

二時って言われてあわてたよ・・・」

それで、これだろ、とまどわないわけないだろ(笑)

「で、どこへお供いたしましょう?姫!」

「圭ちゃんみたいな言い方やめてよ、さぁ・・・・どこへ行きましょうか?」

「 このまま、どっかへふけようか・・・」

軽いジョークのつもりが・・・・・気がつくと・・・すすり泣く声・・・・・・

「ごめんなさい。泣くつもりないんだけど・・・おかしいでしょう

20年以上も昔のことなのに・・・・・貴方の顔・・・・見たら逆戻りしちゃった・・・・」

「十年は、一昔っていうけど、いつまでも二十歳じゃないのにネ・・・・・」

  宝ヶ池に近づいた時、急に脇道にそれ、木立の続く砂利道に入っていった。

木陰に車を停車させて、由美子は、「 少しだけ我侭させてね・・・・」

長い髪の甘い匂いが・・・・あの頃を連れてきた・・・・・・・

「 どうしてたんだ?色んなこと、連れから聞いてたけど・・・・変わらないねちっとも・・・・・・・

もっとバーサンになってると、思ってたけど、参ったね俺だけ腹でてるなんてね・・・・・・

俺の胸に顔を伏せたまま、何も喋らず・・・・・髪を撫でられるままに・・・・カシミールの

乾いた香りと、コロンの懐かしい匂い・・・・・・・・・20分もそのままでいただろうか・・・・。

「・・・・・抱いて・・・・・」あたりは漆黒の闇・・・・「 ここで?」「 プリンスホテル・・・取ってあるから・・・・」  

 運転を交代し、「普段これのってるの?」

「仕事中はベンツだけど

プライベートはこれとZ3・・・・今日は運転手さん連休だから・・・」

あいかわらず生活感が違うなぁなどと思いつつ宝ヶ池プリンスホテルの駐車場へ滑りこませた。由美子に渡されたカードキーを持ってエレベーターへと向かった。

最上階のスィートルームだった。

「おいおいビップ扱いかよ、今日は。」

 「一応株主だから・・・・・安いのよ。」

身体をぶつけるように身を預けてきた由美子を受け止めて、懐かしい唇に触れた・・・

昔のような壊れるような線の細さは、消えていたが・・・・抱きしめると白いうなじが

ピンク色に染まった。

両手を上にあげて、ベットのヘッドを押すようにしながら達する癖は、昔のままだった。

そのままの姿勢でいると

「重くなったね!今何キロ?」

 「70くらいかな、やせなくちゃとは思ってるんだが・・・・」

「おまえさんは?」

 「48キロくらい・・・・そんなに変わらないけど、やっぱり白髪

増えるね、昔から染めてるけど本染めになってきはったわ・・・」

「西陣さんみたいに、ええいろにそまるとええんやけど、うちらも歳やしかなわんわ」

懐かしい京都弁を聞きながら

「坊主いくつや?」

「いややわ、こんなとき子供の話なんかせんとって・・・・いじわるなひとやわ

今年、京大の院受けて、とおったんやけど・・・就職するきおまへんわあのこ・・・・」





 


       





 

その3に続く。。。

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