第25章「別れ」
閲覧ありがとうございますm(__)m
今回の回を書くためにこの小説を書き始めたと言っても過言ではないので、気合を入れて書きました。
楽しんで頂ければ幸いです。
第25章「別れ」
12月31日――午後11時30分――自宅。
半日、小人たちに付き合い町を練り歩いた結果、家に帰宅すると電灯は全て落とされていた。
どうやら激萌ラブ妹は既に寝ているようだ。
やべっ!
連絡しなかったから心配さしたかな?
俺は妹を起こさないように今日買った手荷物を両脇にギュッと抱え込み、そろりそろりと真っ暗な廊下を歩き、自分の部屋に向かうのだった。
自分の部屋のドアノブに手をかけゆっくりと引く。
すると真っ暗な部屋の窓から青白い月光が差し込み、白いベッドカバーを青白色に染め上げていた。
小人たちとの別れには勿体ないな。
小人たちがブレスレットから出てくると、俺はパチンと部屋の明かりを付け、両手で抱えていた紙袋から色々な物を取り出しテーブルに置いていく。
ライ「わーーーい」
紙袋の中において1番容量をとった、某ハチミツ大好きな黄色いクマの人形に感動の再会と言わんばかりに抱きつくライオネル。
「そんなにうれしいのか? そんなUFOキャッチャーの景品が」
ライ「うん! ありがとう用兵くん。 ウチこれすっごくうれしい。 だって用兵くん、すごく頑張って何度も何度も何度も取ろうとしてくれたんだもん」
ごめんね、下手で。
それ取るのに1万かかったよ。
今考えれば買ったほうが経済的損失が少なくてすんだな…。
まぁライオネルが喜んでるならいっか♪
ガ「用兵、エアコン付けるぞ」
ガーウィン。 もはやお前はこの部屋を自分の部屋のように考えてやがるな。
完全に現代文化に溶け込みやがって。
エアコンのピーーという起動音。
冷凍庫のように冷え切った部屋に暖かい空気が充満していく。
そしてその暖かさに随伴するように部屋の窓を白く曇らせていった。
小人たちは各々、テーブルの上に置いたお菓子やら化粧品やらエロ本やらを取っていく。
俺はイスに座り、その光景を眺める。
まぁ当たり前だが、性格によって選んだ物も色々だな。
お菓子が好きなトリスタンは当然のように大量の駄菓子を選び、エロジジイはエロ本。
性格が出とるな~感慨深く深く頷く。
でも1つ俺の理解の範疇を超えている品物が…
「パーシバルさん。 ずっと聞きたかったんだが、骨董品屋で買ったその…何と形容したらいいのか分からん叫びをあげている人間?みたいなお面は何?」
パーシバルはうっとりとしながら木彫りのお面を見ている顔をこちらに向け、いつものように色気混じりにうふっと笑う。
パ「これはペッツェルクドという戦闘民族が狩の成功を祝福するときに使用する物よ」
「へぇ~、ビックリするほど興味の湧かない品だね。で・どうするんだ、それ?」
パ「眺めるわ。 そしてこの部屋の守り神として飾るわ」
「止めて!!」
パーシバルの暴挙を止めながら、小人によってこんなにも性格が違うなんて最初、こいつらと初めて会った橋の下では思いもしなかったな~と俺はフフと思い出し笑いをしたのだった。
ト「後15分か、皆そろそろ時間だ」
トリスタンが時計をチラリと見ると皆に声をかける。
すると皆も時計を寂しそうに見上げた。
そして小人たちは各々持っていた物を下に置き、ベッドの上にある窓の前に一列に並んだ。
「どうしたんだ? お前ら…」
ト「ご主人、私たちはもうじき消える。 最後に一言ずつでもご主人と話がしたいんだ」
現実から目を背けようとする俺にトリスタンはただ真っ直ぐに真実を、もう自分たちは消えるのだと口にする。
聞くしかないんだ、こいつらの仲間として、主として。
俺はイスに座り直し、しっかりと小人たちを見た。
ガ「トリスタン、最初は俺から言うぞ」
ガーウィンは一歩前へ出てトリスタンに言う。
トリスタンはフッと笑みを浮かべ「どうぞ」と手振りした。
ガーウィンは俺の目を見ながら気恥ずかしそうに頭をかく。
ガ「最後くらいちゃんとやるか」
そう口にするとガーウィンの目の色、顔つきがキリっと引き締まった。
ガ「主、あなた様の剣となり戦えたこと、それ自体このガーウィンが誇りです。 願わくば生まれ変わって主が主で無くなり、我々のことを忘れてしまったのだとしても、私はあなた様の剣でありたい」
いつもの粗暴な言葉遣いではなく、1人の騎士として主に忠を尽くす言葉。
俺は眉をかくフリをして手で顔を隠す。
照れ隠しの奥にある顔はうれしくてしかたがなかった。
「ああ、もちろん。 つか記憶を失ったぐらいで、お前ぐらい強いやつを俺が簡単に手放すわけないだろ、ガーウィン」
それを聞くとガーウィンの表情は、ニカッと崩れる。
ガ「それもそうだな♪ 楽しかったぜ、用兵!」
「なんだよ、最後くらいちゃんとするんじゃなかったのか?」
ガ「このキャラ疲れんだよな~、1ワードが限界だぜ♪」
まったくよ~お前の限界は底知れないぐらい速いな~。
俺もガーウィンに笑い返した。
ベイ「おい! ボケ主」
ガーウィンの話が終わるやいなや、ベイリンが下を向きベッドの方を見たまま前方にいる俺に話しかけてきた。
ベイ「お前は最悪の主だった。 初めて会った日にオレをゴミ箱に投げ入れるし、女っぽくないって言うし…」
そこまで口にするとベイリンはゆっくりと顔を上げる。
その顔は今にも泣き出しそうだった。
ベイリンは目に涙を浮かべながら続ける。
ベイ「本当に最悪だ。 でも…オレにとって……最高の主殿だった」
溜めていた涙が一気に両目から流れ落ちる。
初めて見たベイリンの泣き顔は女の子だった。
ト「泣かないんじゃなかったのか?」
ベイ「うっせー、トリスタン! 泣いてねーよボケッ!」
「お前、元が美人なんだからもっと女らしい言葉遣いしろよ」
トリスタンに続き俺がそう言うと、ベイリンは袖で涙をゴシゴシと拭う。
そして真っ赤な目で続いて出てくる涙を堪えるように俺を睨む。
ベイ「うっせーよぉ! ボケ主! ぜってー幸せになれよ! 不幸になりやがったら許さねーからな!!」
「…ああ、お前の分まで超絶幸せになってやるよ。ベイリン」
ベイリンはその後、「当たり前だ!」と言いながら何度も何度も涙を拭った。
ケ「キモイ、バカじゃないの? てかマジウケるんですけど」
気だるそうにピンクのロールになった髪を手でクルクルといじるケイ。
その目で泣いているベイリンを蔑む。
お前、そんな性格だったんだ…。
言い過ぎでは?とケイを見るトリスタンに、ケイは何か文句でもあんのかよと睨む。
そして再び俺に思いの丈をぶちまける。
ケ「用兵ちゃんもバカなんじゃないのぉ~? あの女、百合姫だっけ? あれ演技だよ、今頃笑ってるよ。 テストで1位取れった♪って」
ハハハ…そう言われると身も蓋もないな…。
モ「そこまで性格が悪いのはあなたぐらいですわ。ケイ」
ケイの真逆を見ながら本人に聞こえるぐらいの声で呟くモルドレッド。
その瞬間、ほんの0.何秒の世界。
ケイの表情が般若となった。
そしてすぐいつものぶりっ子のような表情に戻り、猫のような甘えた声を出す。
ケ「用兵ちゃん♪ 女には気をつけてねぇ~。(チラッ) 変なものいるからぁ、用兵ちゃん優しいから本当にダマされちゃうよぉ」
「お前みたいのにか?」
ケ「え~ひどぉい。 ケイはそんなことできないよぉ」
俺は苦笑いをしながらも、こいつはこいつなりに俺を心配しているのだと思った…気のせいかもしれないが。
うん、そう信じることにしよう。
この場に訪れた沈黙。
ケイ、モルのせいで次のやつが喋りづらくなってしまったのだ。
クソ~あいつら最後まで面倒なことを。
俺から適当に話しかけっかな…そう思った時、めんどくさそうな~やる気のない口振りのヤツが話かけてきた。
ガラ「マイマスター、お疲れ様でございま~すでございま~す」
あくび混じりにそう労いの言葉をかけるガラハット。
透き通ったマリンブルーの髪を見るたび、本当にこのやる気のない男があのランスロットの弟なのだと驚いてしまう。
「お前はこういう結果になったこと、不満じゃないのか?」
俺のすまないという質問にもガラハットはケロッとした顔で答える。
ガラ「わたくしはいつもいわれのない理由で殴ってくる暴姉に一泡吹かせられたので、大満足でございます♪ ただ、1つだけ心残りだったのはマリオ64をクリアーまでいかなかったこと。 あと1日あれば…」
うんうん、そうだよな。
やっぱり不満あるよな、こんな主だもんな。
そうかマリオ64
「マリオ64!?」
ガラ「スターフォックス、ドンキーコング、ゼルダの伝説はおもしろかった。 心残りです、マリオ64、クッパはこの後どうなるんだろう?」
「やりすぎだろ!? お前、この半年何してたんだよ!?」
ガラ「ゲームですけど…何か?」
本当にランスロットの弟か!?
この性格の違いは親の教育方針の差だとでも言うのか!?
そりゃあの姉に殴られますわな。
最後まで疑問を残していくやつだ。
力が抜けていく俺にガラハットは言った。
ガラ「最後に一言だけ。 Wiiがやりたかったな~」
知らんがな!!
ガラ「あと…」
「まだ何かあんのか?」
ガラ「まっ、何て言うかな…テレるけど、姉キのことありがとうっすね」
急に言ってくるな!?
笑いから一気に来ると対応に困るわ!
「まぁ、気にすんな♪ 兄弟のいざこざには慣れてるよ」
そう言うとガラハットは片手を少し上げ「ありがとう」と示した。
パ「わたしもご主人さまにお礼を言わなくちゃね。 今日のサーカスありがとう、たのしかったわ。 でも…まだ足らない…体がうずくの~まるで野獣みたい」
艶めかしく吐息を漏らし、指を舌で絡めるパーシバル。
俺はとても冷静な瞳を向ける。
「十分だろ、急にトラに戦いを挑みやがって。 最初からそれが目当てでサーカス選んだろ?」
パ「うふっ、何のことかしら?」
「ったくよぉ~。 あの後、俺がどれだけ詫びたか…」
パ「それも含めてありがとう♪ また今度があるならその時はお願いね、ご主人さま♪」
また今度か…。
俺は少し目線を逸らしながら言葉を紡ぐ。
「ああ、分かったよ、この戦闘狂が。 ライオンでもクマでも用意してやる」
目線を逸らした意味を分かっているのだろう、それでもパーシバルは “たのしみにしてるわ、ご主人さま ”と言って微笑んだ。
それを見て薄汚れたローブを纏いフードを深く被ったマーリンが、これまた深く溜息をする。
マ「なんでこうなるんじゃろ~な? まったくもって甘い」
「悪いな。 お前には色々世話になったのに…それを無駄にしちまった」
マ「ハァ~、まったくじゃ。 勝負に勝って試合に負ける…ハァ~しょーもない。 しかし、理性よりも感情を優先させる。それも人間らしさ、ダンナらしいからいいかのぉ~」
深く被られたローブ。
中の表情は見えなかったが、薄っすらと見えた口元はいつものようにニヤけていた。
ありがとうマーリン。
マーリンはおもむろにローブの中から1つのケースを取り出した。
マ「ちなみにこの《Gカップ限定! 真夏の全裸、大運動会》というDVD。 これはよかったぞ~さすがワシの主、ナイスチョイスじゃ♪」
!?
それは…カギ付きのタンスの奥に隠しておいた、俺の秘宝。
なぜこいつが…
クスッと笑うパーシバルとは逆に、汚らわしいと言わんばかりの言い訳を許さない冷たい、本当に冷たいモルドレッドの視線が…痛い。痛すぎる。
僕、死んでしまいそうです。
ベデ「主っ!!」
べディヴィエールが声を荒げる、モノクルの奥の瞳はこれ以上ないぐらい真剣だ。
「な、なんだ?」
ベデ「そういう物に興味を持つこと自体、18歳ということを鑑みると年齢相応と見ることができます。 しかし由々しき事ながら…全編を通して些かマニアックではなかろうか?」
「うっせーよ!! そしてお前も見たのかよ!!」
も~う。なんなんだよ、こいつら…。
現代におけるプライバシー保護の有用性について一度説明しといたほうがよかったのだろうか…。
俺はめまいを起こし、イスから崩れ落ちそうになりながら頭を抱えた。
ベデ「主。 気をしっかり」
「さらにうるせーよ、お前が言うな。 ったく…そういえばベディヴィエール、お前に聞きたいことがあったんだ」
ベデ「自分にですか?」
「ああ。 お前はこういう結果になった俺の選択、正解だったと思うか?」
俺の問いにベディヴィエールはそんな質問か、と鼻で軽く笑い、目をやんわりと閉じる。
ベデ「自信家の主らしくない質問ですね。 何が正解だったかなんて分かるのはもっと未来のこと。 そしてそれを決めるのは主自身の心です」
「お前らしい面白味もない、理論的な答えだな。ベディ」
「はい、自分らしい面白味のない回答です。 主はただ真っ直ぐ、自分の信じた道を突き進んでください。」
ベディヴィエールの瞳が主を労わるように優しく笑う。
そして横にいたユーウェンに、次はあなたが主に何か言えと促す。
するとユーウェンは黙って首を横に振った。
ユ「別にいいよ。 僕はやっと死ねるから満足この上ないわけだし」
お前は最後まで愚痴ばかりかよ。
やれやれ、もう少し未来に夢を持てよと、俺が言おうとするとユーウェンはその未来に絶望した瞳を窓の方に向けた。
そしておもむろに開かれる口。
ユ「でもボスは生きてね。 僕らはこういう存在だから死んでもなんともないけど、ボスは違う。 天寿を全うしてね…僕らの分まで」
「こんなゴミみたいな世界でもか?」
ユ「うん。 どんなに悲劇的でゴミみたいな腐った世界でも」
俺とユーウェンは互いに視線を合わさないまま鼻で笑った。
ユ「ボスといた半年、この悲劇な世界も案外悪くなかったよ」
なら何度も死のうとするなよ。
何回こいつの身投げを止めたことか…。
今となってはそれもいい思い出…かな?。
「ヒック、ヒック」 消え入りそうな泣き声が聞こえた。
目をやる、するとそこにはライオネルが涙をボロボロと流していた。
「大丈夫か?」
俺がそう声をかけると、クセッ毛のある紫の髪がブンブンと横に振られる。
そしてライオネルはそのまま両手で顔を覆い隠す。
ライ「消えだくないよ…、やっぱり…離れたぐない。 みんな、言っじゃだめ…って言ってたけど…やだよ…ずっと一緒にいだいよぉ」
「ライオネル…」
ライ「ウチ、バカでトロくて…ヒック、いっつも迷惑ばっかりがけて、でも何も、でぎなくで…でも、でも、用兵くん…助けに来でくれで…」
涙を拭きなさいと、横に居るモルドレッドがハンカチでライオネルの涙を拭う。
泣きすぎて赤く腫れ上がったその目は、ランスロットの元から助けた時よりも腫れ上がり、血が出そうなぐらい赤くなっていた。
それでも一向に止まることを許さない涙。
ライ「ヒック…うれじぐて……でもみんなが危険なこどになるぐらいなら、ウチ…死んでもいいって思ってたっ時に…ヒック、助けてくれてありがとう。用兵くんが……ご主人様で…よかっだ」
事切れるようにそこまで言い終わるとライオネルは姉の胸に抱きついた。
俺はその小さな後姿に “俺もお前らが俺の召喚獣でよかったよ ”と小さな声で語りかけた。
泣いているライオネルをヨシヨシと撫でながら、俺の方へ顔を向けるモルドレッド。
モ「わたくしからも礼を言わさしていただきますわ。 用兵さん、ライオネルを助けてくれてありがとうございました」
「お前にはライオネルのことで完全に見限られたと思ってたよ」
俺の指摘にモルドレッドは過去を自分の言動を思い出し、気恥ずかしそうに含み笑う。
モ「そうですわね。確かに一度は見限りましたわ。 でもそれはわたくしの間違いでしたわ。あなたはわたくしが考えていたよりも強く、勇敢で、そして何より、人一倍優しかった。」
そこまで言われると嬉しいを2段跳びぐらいしてテレる。
「そんなスゲー人間じゃじゃねーよ、俺は」
モ「何を頼りないことを言っているのですの? あなたはこのわたくしが認めた主人なのですわよ。これからの人生、わたくしたちがいなくなった後も……胸を張ってお生きなさい」
その言葉は強く俺の背中を押し、強く俺の心を勇気付けた。
ケ「本当、態度がなってないよねぇ。エレガント紫はぁ~、何がお生きなさいだよ、お前が逝ったらぁ~地獄にでもぉ。 ていうかぁ~モルドレッドがいな~い、どこかなぁ? 見えないなぁ……あっ!そうか、先に消えたのかぁ。 かわいそ~にぃ~♪」
ブチ!!
見えているくせにあからさまに見えないフリをするケイ。
その瞬間モルドレッドの全身を巡る血管という血管が全てブチ切れたことは説明するまでもないだろう。
そして血管が切れてなぜ生きているのかについては、殺意が上回ったとしか説明できないのもまた事実。
モ「最後くらいはとは思いましたけど、ケイ。 コロシテヤル」
最後の最後まで殴り合う2人。
ケンカするほど仲が良いとは迷信だ。 仲が悪いからケンカをするのだ。
俺の考察を無視しながらやりあう2人、いつものようにディナダンがマァマァと制止する。
「お前も毎回大変だな。」
デ「そう思うなら手伝ってーや! ランスロットがいないせいで、ワイがこんな損な役回りをしとんねんから。 マッ、この半年でだいぶ慣れたけどな」
「お前は最後まで軽いノリだな」
デ「なに? 何か感動的なノッてるセリフをワイにお求めで~?」
「そんなもんお前には期待できんだろ?」
やっとこさケンカを止め、ディナダンの軽い物言いと左耳にしているピアスがこちらを向く。
デ「分かってんやん♪ ワイは楽しかったらそれでええ、戦いなんか嫌いやからな。 平和が一番♪ なっトリス」
ト「そこで俺に振るのか、ディナ?」
急に話を振られ、戸惑うトリスタンに自分はもう十分とディナダンは手振りした。
トリスタンはヤレヤレという表情を取りながらも最後の小人の言葉を口にするのだった。
ト「皆、ご主人に言いたいことは終わったようだ。 私も何か言ったほうがいいのだろうが…う~ん、何を言ったものか…」
「別に無理に言う必要はねぇよ。 お前には一番世話になったのに、何の断りなしにこんな結果にした。 俺が詫びなきゃいけないことばっかだからな」
腕を組み、頭を傾けるトリスタンに俺は謝るしかできない。
この選択は自己満足なのだと…。
しかしトリスタンはいつものようにフッと笑いを漏らす。
ト「さっきからその文言が多いな。 皆も言っていたが、これがご主人の選択だったのだろ? なら、私たちに不満などあるわけがない」
「わがままな主ですまなかったな」
ト「フッ、ご主人こそ私たちのわがままに付き合って疲れたんじゃないか?」
「ああ、確かに疲れた。 でも…その100倍、お前らと過ごせて楽しかった」
“それはよかった”トリスタンのいつものフッという含み笑いがそう言っているようだった。
ト「ご主人。 私たちが出来ることは導くことだけだ。 そして今までもそうだったように、これからの人生を選ぶのも主自身。 私たちが生まれ生きたことでこれからのご主人の道を少しでも指し示せたのなら、この命にも意味は確かにあったんだ。 あなたと歩んだこの半年、私たちはこの上なく“ 幸せだった ”皆を代表して言おう。 ありがとう」
ありがとう。
俺は何も出来なかった主なのに…。
その言葉は俺の胸を強く、息が出来ないくらい締め付けた。
トリスタンは名残惜しそうに時計を見上げる。
ト「後1分か…それにしても、ご主人は泣かなかったな。 皆の予想だと、少しぐらいは私たちを惜しんで泣くかと思ったのだが」
残念と首を振るトリスタン。
俺は強引に笑顔を作る。
「予想が外れて残念だったな♪ お前らの為に泣くわけねーだろ」
ウソだった。
今にも涙が溢れ出そうだった。
でも…泣くわけにはいかなかった。
最後くらいこいつらの主として堂々としていたいから。
ト「フッ、それは残念。 …ご主人、私たちは直消えるだろう。 だが湿っぽいのは嫌いだから、私たちが消えるまで後ろを向いててくれないか?」
「ああ、早く消えちまえ。 俺だってこれから受験勉強しないといけないから、お前らの見送りになんて裂く時間は無いんだよ」
俺は両手を軽くホールドアップしてハイハイと言い、小人たちを背にした。
ガ「冷めてーな、用兵」
「お前らが後ろ向けつったんだろ!」
そして俺はドアを映している瞳をゆっくりと閉じた。
すると聞こえる時計の音。
時計の針がカチカチと動く音が心なしか大きく聞こえる。
そして徐々にその音は寂しさを増していった。
人の幸せを優先するということは、自分自身の幸せを諦めるということ。
覚悟はしていたんだ。
テストを棄権した時から、でも…。
聞きたくなかった。
耳を塞いだらこの時間は針と一緒に止まるのか?
目蓋をもっと強く閉じたら止まるのか?
しかし俺の思いとは別に容赦なく、躊躇なく時計の針は進んでいく。
そして遂に聞こえた長針と一緒に短針も動く、大きな「ガチッ」という重い音。
午前――0時0分――年が明けた…。
「お前ら、もう消えたのか?」
返答はない。
もうやつらはいないんだ…そう実感した。
俺は引っ張られるように振り返る。
しかし目を閉じたまま顔を上げられなかった。
見たくない。
いつもと変わらない部屋に小人たちだけがいない光景を、俺は見たくなかった。
どれくらいだろう…10分、いや20分、俺は目を閉じたままだった。
覚悟を決めて目をゆっくりと開ける。
そして伏せていた顔を上げていくと、小人たちの姿は…そこにはなかった。
俺は真っ直ぐと、小人たちがいなくなった現実を見る。
すると小人たちがいなくなった背後、窓が視界に入ってきた。
「……あいつら」
気が付くと散らかった部屋の中で、俺の頬は濡れていた。
エアコンを付けたことで起きた外気との温度差、白く曇った窓ガラス。
そこに書いてあった文字は…笑っていた。
「ご主人、ありがとう! 大好きだぜ!!」
俺は文字に近づいていく。
すると1つ1つ、字の癖が違っていた。
「へ…へたクソな字。 1人1文字なら…もっと綺麗な字を書けってんだ。最後の “ぜ ”なんて…みんなで書いてるから…潰れて…読めねぇよ」
その字はいとおしく、本当にいとおしく見えた。
「ありがとう…とか言うなよ。 大好きとか…言うなよ。 涙が…止まらなくて…かっこつけれねーだろぉ…」
俺は文字に覆いかぶさるようにその字を見続ける。
その夜、俺の部屋のエアコンが止まることは無かった。
閲覧ありがとうございました。
いかがでしたか?( ´・ω・`)_イカガ?
少しでも皆様の暇が潰れればいいのですが…。
よかったら感想ください。




