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円卓の小人  作者: ひとりぼっちの桜
自己紹介
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第24章「テスト」

お忙しい中、閲覧ありがとうございます。


第24章「テスト」




12月31日――大晦日――最終テスト当日。


 本日は晴天なり。


 俺はカーテンを開け、いつものように身支度を手早く済ます。


ト「ご主人、いよいよだな」 

ベデ「主、頑張ってください」


 ブレスレットから聞こえる声たちに、俺は鼻で笑いながらワイシャツのボタンをとめていく。


「頑張ってって…受けるのは俺1人なんだぞ。 どう頑張りゃいいんだ?」


 そう、あの事件の後、千歳も見事に捕まった。

 どうやら元々、千歳が召喚獣が欲しいがために親に今回の事件を頼んだらしく、その罪は百合姫より重くなるそうだ。


 頼むヤツもそうだが、親もよくその頼みを聞いたもんだ。

「僕テストで1位になりたい、他のやつを闇討ちして!」

「よしよし、いいとも!」

 こんな感じだったんじゃねーか? 


 まぁつまり召喚獣を失ったり捕まったりやらで、今日テストを受けるのは俺1人ということだ。

 たとえ今日の点数が0点だったとしても1位。頑張る以前にやる気を起こすのに大変だ。


ライ「じゃあこれからもウチッじゃなかった、妾たちと用兵くん、ずっと一緒だね」

モ「ライオネル、もっと品良く喋りなさい」 

ライ「ご、ごめんない。お姉ちゃん」

ケ「ケイも応援してるからぁ、用兵ちゃんファイトぉ♪」


 これからお前らとずっと一緒だと思うと、騒がしさで頭の機能がいくつかイカレないか不安だ。

 俺はぐたりと座りながら靴ひもを結ぶ。


「じゃあ、行ってきます」 

「おにいちゃん、いってらっしゃーい♪ テスト頑張ってね!」


 世の中には頑張らなくてもいい事も多々あるんだぞ、世界一かわいい妹よ。

 いずれお前にも分かるだろう…いや、この純真な娘にそんな俗世間の知識を知る必要は無い!

 俺は苦笑いを浮かべつつ、激ラブ妹がいる玄関を出た。




「ここにブレスレットを置け。それで一時的にお前と召喚獣の契約を切って、不正を防ぐ」


 俺は教室に入るなり東に言われるがまま鳥かごのような入れ物にブレスレットを入れ、鞄から筆記用具だけを取り出し、一番前の窓際の席にドスンと腰を下ろした。

 そして肩肘をつきながら黒板の前にいる東を見る。


「東先生、冷静に考えてほしい。 俺1人なのに不正を気にする必要あるんでdすかね?」


 公正なテストにするために外部から来た特別な試験管と、この学校の教師。

 生徒1人に対して、それを監視する人間7名。

 何、この構図?

 意味が分からん!


 俺が窮屈さと人事配置の無駄さを訴えかけると、東は悟ったようにやれやれと首を振る。


「三錐、こういうのは形式が大事なんだよ。 所詮教師もお役所仕事!」


 親指をギュっと立て、豪快に言い放つ東。

 そっと後ろから近づいてくる教頭。

 その年老いた手が東の肩に触れる。


「東君。 TPOをわきまえようか」

「…すいませんでした」


 完全に心が折れた東は弱弱しく「じゃあ、始めようか」と口にする。 


 ヘコみすぎだろっ!

 どんだけ教頭苦手なんだよ?


 俺が苦笑いを浮かべる中、答案用紙は配られる。

 その時だった。


「お願いです! 私にもテストを受けさしてください!」


 ガラガラという音がする横開きのドアをドン!っと勢いよく開けて現れたのは、警察に捕まっているはずの百合姫だった。

 百合姫はバサバサの黒髪で息を切らし、全力で走ってきたのを教室にいる全員に伺わせた。

 東は俺の机に置いた答案用紙を再び自分の手元に戻し、野太い声で百合姫に話しかける。


「君はまだ執行猶予中で、このテストを受ける権利が無いんじゃないか?」


 百合姫は息を整えると情状酌量されたこと、自分が闇討ちした全員にこのテストを受けたいと言って許可されたことを説明した。

 その場にいた教師と試験管たちは互いの顔を見合わせ、1度集まった。

 1分程度の話し合い、教頭は顔だけを百合姫に向ける。


「冷たいことを言うようだが、君じゃ三錐君には…」

「諦められないんです! お願いします!!」


 教頭の言葉を遮るように百合姫はさらに頭を深く下げる。

 教頭は渋々と溜息をつき顔を戻し、東に指示を出す。


「東君、もう1枚ぐらい問題用紙と答案用紙あるね?」

「はい。 いちよう10枚は用意してます」


「百合姫君、召喚獣のブレスレットをかごの中に入れ、席に着きなさい」


 百合姫はありがとうございますと口にし、急ぎ指輪を例の鳥かご的なものに入れ席に着く。

 そして答案用紙、問題用紙が配られ、東の野太い声の「始め!」が教室全体にこだましたのだった。



1教科目、数学。

 ペンを回しながら問題文を流し見る俺の横で、一心不乱にペンを動かす百合姫。 俺はペンを回すのをピタッと止め、答案用紙に記入を始めた。 


“ 俺はなぜ特別な大学に行きたいのか? ”

 急に頭に浮かぶ、問題用紙の問題と違う問い。

 その問いを無視するようにペンを用紙にぶつける。

 第2問、第3問、ペンは軽快にスムーズに進む、だがペンを動かすごとに脳裏に浮かぶのは百合姫の弟の姿。

 幸せそうに眠っている弟にそっと手を寄せ、涙をこぼす百合姫。 


 弟のため…。

俺の妹が同じ境遇にあったのなら、俺も百合姫と同じ行動を取ったのだろうか?


 テスト中に頭を駆け巡る余計な思考。

 俺は助けを求めるように、かごに入った自分のブレスレットを見るため顔を上げた。 

横たわったブレスレットはただ俺を見守っていた。

 小人たちも言っていた。


 正々堂々やることに意味があると…そう、ここで手心を加えてもらって勝ったところで百合姫にとってもそれでは意味が無い。

 俺はそういう考えで生きてきた。

 だからこれからやる俺の行動は正しいこと。 


「ご主人、これからも一緒だな」 頭に浮かぶ、今朝の屈託の無い小人たちの言葉。

 あぁ…そうだな

 俺もお前たちとずっと一緒にいたい。

 そして今やっと分かった。


 それ自体が俺の特別な大学に行きたい理由だ。

 でも…… ごめん。


 俺は目をゆっくりと閉じ、そっとペンを答案用紙の上に置いた。

 そして急に帰り支度を始め、席を立つ俺に東は焦りながら声をかける。


「どうした!? 三錐!?」


 俺は教卓に置かれたかごからブレスレットを取り出して左腕にしっかりとはめた。


「問題が難しくて分からないから棄権します」


 へ?

 その場にいた全員が、鳩が豆鉄砲を食ったようにきょとんと目を丸くする。

 しかし、百合姫だけはペンを止め顔を上げてきた。


「何で?」

「何で…かな? 自分自身分かんねーや。」


 俺は百合姫に背を向けたまま頭をカリカリとかく、そしてだらしなくヘヘと笑った。


「たぶん、超ー天才の気まぐれなんじゃないか。 迷惑だった?」


 百合姫の方にチラリと顔を向けると、答案用紙はボロボロと濡れていた。

 そして涙と鼻水を流す百合姫。

 下を向いたまま大きく2度ブンブンと首を振り、鼻水をすすり、しゃがれた声で言った。


「ありがどう…本当に…ありがと…ぅ」

「礼ならお前が闇討ちした7人に言えよ。 あいつらが許してなかったら俺も許してなかった。」


 俺がそう言うと目の前のかごに入った指輪から1つの声が聞こえてきた。


“ありがとうございます。 小人たちの主 ”


 その主に忠実を尽くす声は確かにそう言った。


 俺は含み笑いをしながら扉まで行く。

 ガラガラ開けられる戸。


「小人たちの主じゃねーよ。 用兵だ。 じゃあな、騎士の中の騎士」

「ちょっと待ちなさい! (ガラガラ) 三錐君!!」


 扉が閉められ、先生たちが慌てふためく教室で、かごに入ったブレスレッドだけは差し込む太陽の光に暖かく反射していた。



“ありがとうございます用兵様。 この恩、決して忘れません ”






「さむっ」


 先生を撒き学校の外に一歩出ると、冷たい風がうるさい声を発しながら、まるで年をまたぐように俺に吹き付けてきた。マフラーが気持ちのいいくらい風になびく。


ト「ご主人、何で…」


 何でテストを棄権したのか?

 そんなことはトリスタンには分かっていた。

 いや、この主の元で約半年一緒に生活していたのだ、分からない小人などいるわけもない。


 トリスタンは言葉をグッと飲み込む。

 そしていつもの冷静な物言いでブレスレットから主に話しかけた。


ト「フッ、ご主人。 ドッコイ屋の根性チーズケーキを1ホール食べたい」

デ「ずりぃ、トリスだけ! ワイも最後だから何か食べたい!」

ガラ「俺っちはゲームセンターとやらに生きたいっす」


 みんなブレスレットの中から好き勝手言いやがって…仕方ねーーな。

 最後くらい、叶えてやっか♪


ガ「用兵! 俺はチワワのイチゴちゃんと再戦がしたい!」

「却下! 何で俺に罪を残して去ろうとしてんだよ!」

ガ「なぜだ!? 最後のチャンスなんだぞ! 分かってんのか、用兵!」


「何を分かれと言うのだ!?」


 興奮している声のガーウィン。

 それをなだめるようにパーシバルがやんわりした声で話す。


パ「ガーウィン。 言い忘れていたのだけど、イチゴちゃんは女の子よ。 女を殴れるの?」

ガ「笑止! 真剣勝負に男も女も無い!」


 その前に相手はチワワだぞ…真剣勝負の時点で既に負けてるだろ。


パ「さすがね。 でもイチゴちゃんは1歳よ。 人間年齢でも8歳よ」

ガ「8歳!? だと…まだ子供じゃないか」

パ「そうよ。あなたに噛み付いたのも、子供のいたずらよ。子供を殴れるの?ガーウィン卿」


 チワワの話だよね!?


ガ「グッ! 俺は…俺は…イチゴちゃんから手を引く。 くそぉ~」


 何この会話!?

 そしてお前の中でチワワの存在はどれだけ大きいんだ!?

 まぁ何はともあれ、パーシィのおかげで傷害事件は未然に防がれ――


パ「じゃあ、わたしがやるわ」


 えー!?

 えー!?

 えー!?

 パーシバルさん!?


パ「わたしは女を殴れるわ。 そして子供も躊躇なく殴れるので、何も問題ないわ」

「法的に問題あるわ!」


 急に発せられる俺の言葉に少しムスっとした声を出すパーシバル。


パ「あれもダメ、これもダメ。 ご主人さまは何だったらいいの?」


「法律に触れねー行為だよ!!」


パ「……じゃあ、わたしはサーカスが見てみたいわ」


 お!? 意外とまともな答え。


「まぁ、それなら…」

マ「ダンナ、ワシ女湯に入りたい」

「……却下」

マ「なぜじゃ!? 最後のチャンスなんじゃぞ!!」

「そんなチャンス最初からねーよ!」

マ「ちょこっと手伝ってくれるだけでいいんじゃ!」

「それが嫌なんだよ! そこで俺が主人から共犯者に劇的進化を遂げとるだろうが!!」


マ「共に全てを脱ぎ捨てようぞ!」

「断る!! 俺には守るものがいっぱいあんだよ!!」

マ「最初から無かったと思えばよいではないか!」

「思えるか!!」



 小人たちが消えるのは年をまたいだ1月1日、0時0分。

 つまり後12時間。


 俺は腕時計から前方に目を向ける。

 今日は今までのアルバイトの貯金が無くなるぐらいの勢いで目一杯遊ぼう。

 そして全員の要望に応えてやろう。

 もちろんマーリン以外。

 俺は元気よく町へと繰り出すのだった。



ユ「…ボス。 僕は人間というゴミが存在しない。そんな夢の王国、エデンに行きたい」


 ユーウェンの要望も却下と。


閲覧ありがとうございました。

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