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円卓の小人  作者: ひとりぼっちの桜
自己紹介
23/26

第23章「延長戦」

閲覧ありがとうございます!!


今日は皆様に報告があります!!

な、な、なんと!!

この小説がお気に入りに登録されましたΣ(゜д゜;)《4月18日現在》


処女作なもんでつたない文章なのに…(ノД`)

登録してくれた方、ありがとうございます。


それではどうぞご覧ください( ^ω^)_凵 どうぞ

第23章「延長戦」




「三錐君」


 ゆさゆさと俺の肩が左右に揺れ、連動するように首と頭も揺れ動く。

 俺は心地よい夢の世界から、一気に深夜のひっそりとした病院の待合室に呼び戻された。


「あ~。もういいのか?」


 ビニール製のイスの座り心地を再認識しながら、俺は組んでいた両腕をグーーと上に挙げ背伸びをする。


 あ~~もうちょっと寝たい。


 病院に備え付けられた時計は5時を示していた。

 大きなガラス戸からは薄っすらと太陽が顔を出し始める。

 百合姫は水で濡らしたハンカチをスーと手渡してきた。


「うん。 弟ともいっぱい喋れたから。 待ってくれてありがとう」


 俺はハンカチで顔を拭き、イスから立ち上がった。




 病院の外に出ると雪は止み、息を吸うと清涼感のある冷たい空気が胃に飛び込んできた。 

薄っすら暖かい太陽の明かりを浴びながら、俺たちはまだ誰も踏み荒らしていない一面真っ平らな雪の上に足跡を残しながら警察署に向かう。


 歩きながら前方に目をやる。

 俺が小人たちを召喚した、ライオネルがランスロットたちによって捕まえられていた橋、通称“死支橋”が見えた。


 もうお馴染みだな、そう思いながらコンクリートで出来た橋の上を歩く、すると急に橋の下からにゅ~と何かが出てきた。

 次の瞬間マグマで出来たような大きな赤い火の塊が俺たちの目の前に現れ、俺たちの体を飲み込んだ。

 その何かは俺と百合姫がそれを何なのか視認する前に攻撃を仕掛けてきたのだ。

 そして橋の上に現れる人影。

 人影はだらしなく、この上なく嬉しそうに笑う。


「あ~ハッハッハ! お~っと、日々の仕事の疲れを癒すため、ちょっと外に出てみたら、闇討ちの犯人がいた~なんかもう1人、男がいたようだが、つい♪ 攻撃してしまった~」


 嫌味なインテリ眼鏡がキラリと光を放つ中、火の玉を吐いた1匹の竜が橋の下からのっそのっそと橋の上に登ってくる。


 そして主人の傍らに従順を示すようにドスンと座った。


 小型ジェット機ほどの大きさの竜、その頭を撫でる人影。

 2人が飲み込まれた丸い火炎の玉を見て、さらに口角が緩む。


「あなたは十分に役に立ってくれました。 おかげで私の仕事も途中で頓挫しかけたが、持ち直すことが出来ました。 弟さんもさぞ天国で喜んでいるでしょう。 あ~ハッハッハ! …あれ? なかなか火玉が消えませんね、燃え尽きて死ねば消えるんですがね」


 声の主の指摘に反して一行に消えない炎、それどころか風船のように膨れ上がっていく。


「な、何が起こっている!?」


 どういうことなのだと焦り戸惑う井口、そして火の玉はまるで針で刺された風船のように中に入っていた空気と一緒にと弾け跳んだ。


「よぉ久しぶり、井口先生! 俺を体育館の壇上で殴ってから出世コース外れたらしいけど、元気してた?」


 右手の中指の爪に浮かび上がるXⅡのローマ数字をインテリ先生こと井口に見せつけながら、俺は憎たらしくも愛敬ある笑顔で言い放つ。

 火傷はおろか掠り傷1つない俺、その後ろにはこれまた無傷の百合姫。

 井口は蜃気楼でも見ているかのように口をあんぐりと開け立ち尽くす。

 だが次第に同様を隠せないその口が動いていく。


「な、なな、なっなんで!? お前、生きてるんだ!!」


 当然の疑問に俺は鼻を鳴らし嘲笑する。


「ヒ・ミ・ツ♪」


 先にネタばらしをすると俺の小人、ガラハットの能力のおかげだ。



ガラハットの【anti magic = 呪いを打ち消す者】。

 説明は一言、1分間全ての魔法を無効化する。

 この能力にかかれば火の玉なんぞただ払い除けるだけでいい、熱くもなんともない。




 苦々しい表情の井口を無視するように、ヤツの後ろにいる竜を見る。


「ドラゴンか…初めて見た。やっぱり、かっこいいな。あいつ召喚獣なんて持ってたのか?」

「私は知らない…井口先生は自分には召喚獣を持った生徒は倒せない。だから自分はカモフラージュに一般生徒を闇討ちするとしか言ってかった」


 あんなのを持っていたなら、1人で100人の闇討ち全部やれそうなもんだけどな。

 そもそも何で井口は百合姫の闇討ちに協力するようなことをしたんだ?


 生徒の名簿なんて渡した日にぁ~クビだぞ。

 百合姫が援助交際の相手だからか?

 いや、そんなやつじゃないな。

 女なんて使い捨てにしか思ってないやつだし……。


「分かったぞ!三錐! お前の召喚獣の能力だろ! 私の仕事の邪魔はさせんぞ!」


 うるさいやつだな。

 …ん? 仕事? さっきも言ってたな仕事がなんとか。


「お前たちはここで私が殺す!」


 この闇討ち事件、最後に得をするのは誰だ?

 さっきの攻撃で俺と百合姫が死んでいなくなるとすると……


「千歳」


 その名前は驚くほどすんなりと俺の口から出てきた。


「お前を雇った、雇っている人間、千歳だろ? いや、違うな。やつ自身にそんな力はない、ということは親か。 確かやつの親は政治家だっけか」

「なにを言っているのかな? 三錐君」


 目に見えて動揺しているぞ。

 あのネクラヤローめ、根性まで腐ってやがるな。


「最後のテスト。1人で受けりゃ、まぁ1位だわな。報酬は金+政治家への華麗なる道か?」


 黙る井口はムシャクシャしたのか、自慢のヘアースタイルを掻き乱す。


「生かしておけなくなりましたよ。 三錐君」

「生かす気とかあったんですか? 井口先生」


 井口は指を一本、上空に向かって突き立てる。

 すると後ろで鎮座していた竜はゆっくりと羽を羽ばたかせ空へと浮いていく。


 羽からくる突風の中、今まで黙っていた百合姫は井口に向かって大声で問いかける。


「騙していたんですか、井口先生! 私はあなたの言った通りにやったのに!」


 必死の百合姫の顔を見てニタ~と笑う井口。


「騙した? 何をずれた事を言っているのです? 私はしっかりと契約を果たした。 果たしてないのはあなたでしょう? 現に三推はまだこのとおりピンピンしている。」

「だって…先生は、召喚獣を」

「持っていないとは一言も言っていませんよ。 それとも聞きましたか? 私に抱かれているときにでも。 聞いてないですよね? あなたは私に抱かれるのが大好きな淫乱女でしかなかったのだからねぇ~」


 百合姫は俯き唇を噛む。


「わ、私は、嫌々…」

「嫌々? 誰のおかげでこんな高い私学の学校に通えた? 誰のおかげで弟の治療費が払えた? 親を失った女子高校生ごとぎが数百万を稼ぐ~? ハッハッハ、体を使わないと無理と悟ったのでしょう? だから淫乱メス豚は汚らわしく金をむしり取ろうとしてきた。 そう考えると私は被害者と言ってもいい。 それの証拠にあなたは毎回自分で服を脱いだではないですか。 恥ずかしそうにして男をそそらして、嬉し涙まで流してぇ」


「止めて!! もう、や、めて」

「ふぅ~、せっかく私が手を回して学力が1位しかもらえない強力な召喚獣まで手配したのに…まさか三錐君に負けるとは。 残念です。 まぁそれもあなたではこの学校の看板として特別な大学に行くには相応しくない、そういうことだったのでしょうね。さようならメス豚」


 井口のゴミを見るような目。

 百合姫は憎いと瞳で睨みつけた。 それを見ていた俺は…


「Ⅷ番、ディナダン。」


 手に抱えられるように現れた竪琴ハープ

 その古めかしい手触りに遠慮せず、俺は弾けもしないハープの弦に指をかけた、するとディナダンを憑依したことで自動的に動く指、弾かれた音楽は童謡の曲のようだった。


「なんですか、三錐君? 急に音楽なんか弾き始めて、頭でもおかしくなりー」


 言葉さなかにみるみる吊り上る井口の見尻、目は血走り、口なんて血が出るくらい歯軋りを始めた。




ディナダンの【Provoke Clown = 月笑うピエロ】。

 その竪琴で奏でる曲は強制的に相手を怒らせ…いや、ブチ切れさせる。

 怒りは焦りを生み、そして焦りはミスへと繋がる。




 使える能力なんだが、ここで使う意味はあまりない。

 ただ、百合姫を見ていてあまりにもやるせない、許せないと思ってしまったのだ。

 まぁつまるところ俺の男気ですよ(笑)


「殺してやる!! 三! 錐!」


 恐ろしいまでの効果だ。

 そのまま血管切れて死ぬんじゃないのか?

 真っ赤に怒り狂う井口、俺はドラゴンに近づこうと足を前に出す。

 すると百合姫がそれを阻んできた。


「三錐君は逃げて。 ここは私とランスロットが時間を稼ぐから」


 フラフラな足元。

 出血多量で貧血のくせによ。

 まぁ、やったの俺だけど!


「うるせーよ76点。 ちょっと点数が高いからって調子にのるな。俺の中で、お前は40点ぐらいなんだよ! それに俺はお前を守るんじゃない、お前の約束を守るんだ! 弟にまた会いに来るって約束したんだろ? ならお前はそれを守ってりゃいいんだよ!」


 立ち塞がる百合姫を手で押し退け、井口と視線が交差する距離まで進む。

 太陽を背に上空で2枚の大きな羽を羽ばたかせる竜。

 それが起こす強烈な向かい風の中、俺は井口に言い放つ。


「井口先生、俺たちは強いですよ。 だから……全力でかかってこい!!」

「このぉ~ガ!キ!が! お前の召喚獣の能力は分かってんだよ! 火を無効化するだけのくだらない能力だ! 私が持っているのは竜だ! ドラゴンだ! 神話の神だ!! お前の持っているゴミとは違うんだよ! あ~ハッハッハ!」


 ゴミ…どこかで聞いたセリフだな。

 あ~俺が最初小人たちに会った時に言ったことだった。

 フフ、あの頃はまさかこんなにこいつらを信頼することは無いと思ってたのにな…。

 俺は、ほんの半年前の自分を見ているようで苦笑いを漏らす。


「やれ! やつを踏み潰せ!!」


 日の出の太陽を背にしている竜は、そのルビーのような赤い瞳を俺に向ける。

 神か…確かに太陽をバックに雄大なその姿を見ればそう称したいのも理解できる。

 こいつは思っている、自分には負ける要素など無いと、でもやつは分かってない。


「キィェエェェェ!!」


 竜はまるで複数の動物の鳴き声を混ぜ合わせたような雄たけびを上げ、その羽を大きく動かし俺へと滑空してくる。


「Ⅳ番、ガーウィン」


 右手、甲に浮かび上がるⅣというローマ数字。

 ヤツは分かってない。 今が “太陽が出ている午前中 ”だということを。


「三錐君、逃げてーー!!」


 叫ぶ百合姫にランスロットは指輪から出てくる。

 そして目の前の明らかに戦力の違いがある両者の光景を見ながら自分の主に、落ち着いてくださいと声をかける。


ラ「大丈夫です、主様。 今のガーウィンは私よりも強いです」


 竜の禍々しい前足は鋭利な爪と共に俺へと襲い掛かった。

 橋に一帯に響く、「ドガーー!」というコンクリートにめり込む地鳴りと亀裂。


「あ~ハッハッハ! これが実力の違いだーー!」


 割れた笑い声とは別に、まだ必死に自分の足の下にある物を踏み潰そうとする竜。

 井口は不思議そうに亀裂が入ったコンクリートを避けるように寄ってくる。

 そして勝ち誇った顔で竜の足の下を覗き込んだ。


「よぉ、元気か~井口?」 

「ひっ!?」


 俺は竜の攻撃を受けていたその左腕で、傘のように真上に存在するデカい足を一気に払い除ける。

 足元をすくわれた竜は体ごと橋の上に大きな音と共に倒れこんだ。

 そして俺は転倒した竜の腹近くまで行き、腕を大きく振りかぶる。


「邪魔だ、デカブツ」 

「ドガッ!」


 その一撃は竜の鎧、鱗とも呼ばれる硬い装甲をブチ破る。

 体内から内臓を全て打ちまけるような苦悶な表情をする竜は、その体同様デカイ水しぶきを上げ川の中に沈んでいく。


「ゥゥゥ、ウソだこれは夢だ。お前の小人の能力は火を…ひを! 何なんだお前は!?」


 両手で頭を抱え込み、夢だと髪を掻き毟る井口に俺は煩わしそうな顔で言った。


「だから言ったろ? “ 俺たちは強い ”って」



ガーウィンの【sun god = 期限付きの太陽神】。

 午前中、太陽の光を全身で浴びている時のみこの能力は発動される。

 発動されれば身体能力全てが3倍になる。筋力、無意識化で行なわれる反射神経、物を見る視力ですらそれには含まれる。



 井口は腰が抜けて立てないのか、座って怯えながらズルズルと後退する。

 その表情からもはや怒りの感情は消え失せていた。


「はぁははな、話し合おう。 三錐君」


 今さら?

 うんざりを通り越し、その変わり身の速さには驚嘆すら感じている俺。


 その時、急に俺の意思とは別に、足が前へ出て行く。

 両手を前に突き出し「待ってくれ!」と言わんばかりの井口にも俺の足は止まらない。

そして足に引き続き、俺の口も勝手に動き出した。


ガ「俺のこと覚えてるか?」


 俺の口から出る不可解な問いに疑問を抱きながらも、井口は助かるための方便を述べる。


「お、覚えているに決まっているじゃないか三錐君。 君は私の一番の生徒だ! 自慢だ! ほ、誇りだ!」


 俺の顔はよくそこまで言えるなと失笑する。


ガ「違げーよ。 俺はあの時、壇上で用兵を殴ってたお前の顔を忘れないように睨み付けてた小人だよ!」

「小人? あぁあ! あれか! そうか、君だったか。 急にそんな、どうしたね!?」


ガ「あの時は…我慢したな~。 もういいんだよな?用兵」


 自分の中にいる主に対して、この男を好きにしていいか?と問うガーウィン。

 フゥ~まったく。 俺の体を勝手に…。


 俺はこれ以上ない爽やかな口ぶりで言った。


「許す♪」 


ガ「おっしゃー!!」


 右腕をグルグルと回し、殴る気十分のガーウィン。

 もう目の前にまで来た俺の姿に、井口の唇は青ざめる。


「助けてくぅー(ドゥガ!!)ペェポォーーーーーー!!」


 井口の体は綺麗に宙を舞う。

 トレードマークであるインテリ眼鏡は粉々に、そしてキラキラと井口が宙から落ちるのを見計らったかのように上空から舞い落ちる。


ガ「ハ~~~~~、スッキリした♪」

「死んでないだろうな?」

ガ「安心しろ。 ちょっと顔が陥没した程度だ」


 ちょっとって…無残にも地面に横たわる井口。

 その顔に以前の知的さは感じられなかった。




 その後警察や私刑団を呼び、事の顛末を説明。

 俺が解放されたのは夕方だった。


 何度も何度も同じ事を聞きやがって、軽い軟禁じゃねーか。 

 警察の人間に聞いた話だが、千歳とその親も井口の証言により直捕まるそうだ。

 俺としたら千歳のほうが気に入らなかったから万々歳と言える。


 そして百合姫だが…井口に騙されていたとはいえ、この闇討ち事件の主犯。

 自分が闇討ちした他7人全員に頭を下げ、学校にも反省の弁を述べたことで情状酌量の余地はあるそうだが相当な罪になるらしい。

 別にヤツを庇うつもりはもうとうない。でもその説明を聞いたとき、ヤツの弟の顔が俺の脳裏に浮かんだことは事実だった。


 ドラマとかと違って、完全にスッキリとはいかないもんだな。

 まぁでも、何はともあれ。


ト「これにて一件落着だな、ご主人」


 俺のセリフが。


 俺は寝不足の目を擦りながら、夕日の暖かそうな色に吸い寄せられるようにフラフラと項垂れて帰り道を歩くのだった。                 


 俺のセリフが…




閲覧ありがとうございました。



今日は暑かった(;´Д`A

会社も、クーラーつければいいのに(* ̄m ̄)

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