第22章「百合姫」
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こんな私ですが、読んでくれている人がいると信じて今日も書きます。
職場でね!!(☆∀☆)
第22章「百合姫」
勝利後、俺はランスロットの申し出を受け、百合姫のケガを癒す。
その代わりに指輪とランスロットを小人たちに捕らえさせた。
これでもう憑依は出来ない。
血が大量に流れ落ちる百合姫、俺もこの若さで人殺しという十字架を背負うわけにはいかないので消え入りそうな意識の中、必死にライオネルを使った。
「ハァ~、やっと終わった。 じゃあさっきも言ったが警察に行く前に、お前にはリッチモンドに頭を下げて謝ってもらう」
「待って」
酔っ払いのようにふらつく足で立ち上がる俺。
百合姫は貧血で立ち上がることも出来ないのかペタリと座り込みながら白い息を吐き、懇願するように俺を呼び止めた。
「何だよ? 体まで治してもらっといて、まだ何かあるのかよ」
「その後でもいい、頭は下げる。 だから、警察に行く前に寄って欲しいところがあるの」
「…どこだよ?」
百合姫は悲しい瞳を見せながら下を向き、ぼそりと口を開く。
「承砂病院。…そこに弟が入院しているの。警察に行ったら次いつ会えるか分からないから…」
「今、夜中の1時だぞ。 その弟も寝てんだろ」
その言葉に百合姫はやんわりとした目を俺に向ける。
「…寝てるよ。もう4年間…事故でね。 学校の階段から落ちたの、治すにはよく分かんないけど、外国に行って高いお金を払わないとダメなんだって」
「そんな弟がいて、何でこんな闇討ち事件なんて起こしたんだ?」
「…この学校の最後にあるテスト。12月31日のテストで1位を取れば特別な大学に行ける。 それと同時に生涯に渡って召喚獣を持つことを許される。 召喚獣を持っていればお金はいっぱい手に入る。弟を助けられる…でも、私にはテストで1位なんて…無理。だから…」
百合姫は自分の無力さを悔しがるように素手で薄っすら地面に積もった雪を掴み、そのまま強く握り締めた。
「弟はまだ10歳なの、まだ何も美味しい物も食べてない。何も楽しいことを知らない! 何も…なにも…知らない。 両親がいない私には弟しかいないの! 弟のためなら私はなんだってできる!」
「それが闇討ち事件でも弟のためなら…か」
百合姫の手は雪を越え、土をえぐる。
その指はきついバイトのせいかボロボロだった。
そして俺の言葉に自己中心的な考え、バカにしていると思ったのか、百合姫はそのボロボロの指を地面につきながら強く、強く俺を見上げ睨む。
「小さい頃から高い学費の塾に行って、さも当たり前のように1位を取る。何不自由なく生きてきた三錐君には分からないよ。 三錐君は知ってる?寒くても毛布1枚無い冬の辛さ。 お金のために体を売るしかない人の気持ちは分かる? 教師にはセクハラを受け、学校の仲間からはバケツで水を被せられる気持ちは分かる? 母親に再婚の邪魔だからって捨てられて、弟だけでも連れて行ってくださいって、ボコボコに殴られた顔で土下座したコンクリートの冷たさなんて知らないんでしょ?」
切々と語られる、百合姫が今まで受けてきた悲惨という言葉だけでは言い表せないような仕打ちの数々。
理解できるのか?
そう問われたところで、俺には答えるべき言葉を持ちえない。
いや、答えるべき心を持っていないのだ。
でも、それでも俺にはこいつを許すことは出来なかった。
「お前の気持ちなんて確かに分からねーよ。 でもそれは俺が、超が付く天才だとか、不幸な環境を知らないとか、そんな理由じゃない! 俺にはどんな理由があろうが闇討ちして人を脱落させて、テメーの点数上げようってやつの気持ちなんて分かんねーんだよ! どれだけお前が不幸だかは知らねーけど、自分が不幸だからって他の人の幸せを奪っていい理由にはならない。 お前は闇討ちするとき、全員にどうしてテストで1位を取りたいかを聞いたのか? お前は自分が1番不幸だとでも思ってんのか? お前より不幸なやつがいたらとか考えたことねーんだろ? 今年いっぱいの召喚獣の命のために泣いた男のことは知っているのか? それを奪う権利、お前がどれだけ不幸でも、そんな権利は絶対に無い! 都合のいい時だけ被害者面するな!お前がやったことは、ただの独りよがりで幼稚で人を不幸にする行為でしかねーんだよ!」
俺の声は、百合姫に真実を突きつけるように冷え切った公園中に響き渡った。
その時だった
ガーウィンがランスロットを後ろ手で取り押さえていた力が一瞬抜けて出来た隙。
ランスロットは手荒く力いっぱい手を振りほどいた。
そしてジャンプしたかと思いきあ、俺の垂れ下がった手にしがみつき、そのまま上ってブレスレットにその手をかける。
ガ「卑怯だぞ! ランスロット!」
地面から上を見て卑怯者だと罵るガーウィン。
ランスロットは「そんなことは分かってる」と言わんばかりに持っている小人の剣を抜いた。
ラ「このような方法をとって申し訳ありません、小人たちの主よ。 情けない行動だということも理解しています。あなた方に何を言われようが反論することは出来ません。 それでも…たとえ騎士道に反していたとしても! 私は!」
剣を振りかぶるランスロット。
俺は懸命に振り解こうとしたがヤツはブレスレットから手を放さない。
小人たちはボーゼンとし、あのマーリンですら予想もしていなかったと呆気にとられていた。
こんなところで…
そう思った時だった。
唯一ランスロットの行動を抑止することが可能な声が、剣を振り下ろす騎士に向けられた。
「やめてランスロット!!」
ピタッ。
まるでテレビの一時停止を押されたかのようなランスロット。
ゆっくりとその体勢のまま自分の主を見る。
ラ「主…様?」
「ごめんねランスロット。 私はあなたの剣を汚してばかりしか出来なかった。 弟もこんなことをして助かったって喜ばないことは最初から分かってたのにね…でも私にはランスロット、あなたの好意に頼るしかなかった」
雪のせいで冷たくなったボロボロのジーパンに手を置き、ゆっくりと足に力を入れ立ち上がる百合姫。
そしてこの戦いを通して、初めて真っ直ぐ俺の目をしっかりと見てくる。
「三錐君、ごめんなさい。 私は…」
ツーと流れる涙。
そのまま百合姫はニコッと笑う。
「ただの犯罪者です」
その後、俺たちは病院に行った。
百合姫がリッチモンドに土下座しながら詫びたその言葉にウソは感じられなかった。
そして次に百合姫の弟の病院にも行ったのだが、弟は百合姫の言葉に一切反応を見せず、ただ幸せそうに眠っていた。
それでも弟に喋りかける百合姫。
今まで我慢していた涙が一気にボロボロと布団に落ちる。
「ごめんね。お姉ちゃん悪いことしちゃったから、ちょっとの間…会いに来られないの。 本当にダメなお姉ちゃんだね」
弟の手を握りながら、柔らかそうなその声を発している後姿は、優しい姉の姿にしか見えなかった。
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