第18章「ライオネル」
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第18章「ライオネル」
デ「ホンマにここがランスロットの主の家なんか?」
疑惑、不信感、全てを網羅した胡乱な目のディナダン。
「あってるよな、ベディ?」
ベデ「はい。間違いなく」
12月24日、世はクリマスイブ。
きらびやかなデコレーションを施されていた家が数多く点在する中、意気揚々と敵のアジトにはせ参じてみたらそこは今にも崩れ落ちそうな木材で出来たおんぼろアパート。
それを一心不乱に監視している姿は虚しいとしか表現できない、ディナダンが間違いでは?と言った気持ちも分かる。
立て札には “常夏壮 ”と、このいつ雪が降り出しそうな寒さに反抗しているような滑稽な名前。 ディナダンと同じような表情になる俺に周りの小人の中から、ケイが一歩前に出てくる。
ケ「用兵ちゃん、ケイの能力使う?」
「ああ、そうだな。 Ⅶ番ケイ」
薄っすらと俺のうなじに浮かび上がるⅦのローマ数字。 そして俺の手にはi padほどの大きさのデコられた羅針盤がキラキラと光を放っていた。
「…これ、どうやって使うんだっけ?」
同時に頭の中から聞こえる、かわいい女子高校生のような笑い声。
ケ「使い方はかんたんだよぉ、そこの真ん中をタッチ!するとぉ、赤い点と青い点が出てきまぁす。 その赤い点は人間、青い点は召喚獣を表していまぁーす。以上ぉ~♪」
この上なく簡単だ。
聞いた自分と忘れてた自分、両方に落胆の思いを右手の人差し指に込めて俺は画面をタッチした。
ポワ~ァと光る画面、画質は思ったよりいい…LED仕様かな?なんてバカな冗談を思っている間に数多くの赤い点が点滅し始める。
憑依すると結構、いや、かなり索敵能力が上がるな、軽く一キロはあるぞ。
さて、この1つの赤い点の周りに不自然なくらいある召喚獣の青い点、これが俺と小人たちの位置。
それから離れること40m、丁度ボロアパートが見える辺りに表示されている青い点が1つ、赤い点はその周囲にいっぱいあるな。これはアパートの住人と犯人だろう、つまりこのアパートにの中には現在1匹の召喚獣がいる。
デ「どんな感じ、ご主人?」
「あのアパートの中に1匹召喚獣がいる。ライオネルかもしれない、ちょっとアパートの近くまで行って確かめてくるが…いいか、マーリン?」
他の小人より一層寒そうなボロっちいローブを身に纏うマーリンは震えが止まらないのか、手を何度も擦り合わせる。
マ「い、い一匹だと、かか可能性は低いと思うがの」
いってらっしゃーいと手を振る小人たちを背に、サッと電柱の影から出て、俺はアパートの前まで行く。羅針盤の青い点には動きはない。
俺は思い切って敷地内まで進んでいく。
「ここなら20m切ってる。よし」
俺は強く「戻れ、ライオネル」と念じた、しかし反応はまったく無かった。
となると俺たちは犯人が俺たちを呼び出した時間前に人質がいるかを確認するため、ライオネルの所に行くことに望みを賭けて、その時間まではりこむしかないか。
俺はそっとアパートから離れて電柱の影まで戻った。
そこから俺と小人たちは耐えた。
時間は11時を回り、冷たい雪がゆらりゆらりと降ってくる。
ジャケットのポケットに手を入れ、しゃがみ込み丸くなる俺。
ミラーに映る自分を見てまるでネコみたいだと苦笑する。
小人たちは俺の買ってやったホット缶コーヒーにくっ付いている。
その姿は光に集まる蛾のようだ。
11時10分…来ない。
11時20分……来ない!!
!!時30分……早よ出て来いよ!!!
俺たちは傘地蔵のように雪振る中待った。
傘無いけどね!
そして11時40分、ついにやつがバイクを押してアパートから出てきた。
闇討ちを行なう時の正装なのか、夏に会った時と同じ野球帽、手には黒い木刀。
俺は決意を確かめるように小さく口を開く「待ってろライオネル、絶対助けてやる。」
バイクにまたがる犯人、俺も羅針盤片手にサドルにまたがった。
雪の中の追跡、こっちにはナビナビ君があるといってもキツイものがあった。
なにせ相手はバイク、ナビナビ君の表示を見ながら離れていく標的に負けないように、切れそうになるアキレス腱をさらに酷使してペダルをこぐ。
何度心が折れそうになったことか、何度画面ばかり見て壁に衝突しそうになったか、でもその度に俺の頭の中でライオネルとモルドレッドの顔が浮かんでくる。
「諦められない。いや、絶対に諦めたくないんだ!」
追跡し始めた最初は俺たちが来た道を戻っていくので一直線に公園に向かうのかと思ったが、犯人は途中、その道を大きく外れた。
そして寄った場所とは死支橋。
そう忘れるはずも無く、そこは俺が最初に小人たちを呼び出した橋の下だったのだ。
俺が橋に到着、入れ替わるように出て行く犯人。
橋の下には残された1つの青い点。
俺はブレスレットから聞こえるマーリンの「待て、ダンナ! 罠があるかもしれん!」という言葉を無視するように自転車から下り、急いで下り坂に足を踏み出す。
真っ暗な中、その行動は俺の体を土手からゴロゴロと一番下まで転げ落とした。
体中に泥が付く、俺は痛さや少し口に入った泥の苦さを忘れるように橋の下に目をやった。
橋の下には月明かりも届かず、1m先すら見えない暗闇に侵食されていた。
そしてその奥から聞こえたのは……
ライ「ごめんなさい。 ごめんなさい。 ごめんなさい。」
真っ暗な橋の下に充満するすすり泣く声。
俺の足は声に吸い寄せられる。
すると声の主は近づいてくる気配にビクッとして、震えた声を上げた。
ライ「ランスロット? 何回来ても…(ヒック)ウチ…ランスロットには協力しない!」
「ライオネル。 そういう時は一時的にでも協力しといたほうが賢い選択なんだぞ」
鉄材に縄でグルグルと縛り付けられたライオネル、泣きすぎて腫れ上がったまぶたを向ける。
ライ「用兵くん? 何で…」
「お前は俺の仲間だろ?助けに来るのに理由はいらないんだ。 待ってろすぐ縄を解いてやる」
暗闇に慣れてくる目で縄に触れる。
縄は少し湿気を含んでいた。
強く結ばれた縄を解こうとすると、枯れた声、鼻水をすすり再び涙を落とすライオネル。
ライ「ウチのせいで…ごめんなさい、ウチ…トロイから…用兵くんが…何かされたら…ウチ。ごめんな…さい」
ボロボロと縄を解こうとする手に降り注ぐ謝罪の涙。
助けてくれという言葉よりも先に出てくるごめんなさい。
ライオネルは自分の心配よりも主である俺の安否を心配していた。
俺はこんなに主人思いの召喚獣を見捨てようとしたのか。
こりゃ、モルにも愛想尽かされるわな…
縄を解くと、泣きじゃくり俺の胸に抱きついてくるライオネル。
俺は冷え切った手でクセッ毛のある柔らかい髪に触れる。
「まだ終わってねーよ。次はお前の姉キを助けに行くんだからな。それまで涙は止めてろ」
ライオネル戻れ。俺は一気に土手を上がり、横に倒れている自転車に急いでまたがる。
マ「急げよ~ダンナ。 後10分でやつの言っとった12時じゃ。 急がにゃモルドレッドがやられるぞ~グッヘッへ。 まぁ~~それはそれで面白いかのぉ~。」
相も変わらず人を食ったようなマーリンの物言い。
俺は覚悟を胸にペダルを踏みつける。
「何が面白いんだよ! お前に言われんでも十分分かってるっつーの!」
閲覧ありがとうございました。
( ´ ▽ ` )ノ




