第15章「弱気な心」
閲覧ありがとうございます。
今回の回はペンが?(キーボード)進みました。
心情を吐露するところが書いていて楽しいヾ(@⌒ー⌒@)ノ
第15章「弱気な心」
急ぎ帰った自宅。しかしそのマンションの一室、俺の家に扉は無かった。
いや、元から無いと楽観視したくなるほど鉄で出来た扉が粉々に横たわっていたのだ。
「おにぃちゃん!」
玄関に現れた俺に泣きながら抱きつく妹。
腕の中の妹を見ると数箇所かすり傷を負っていた。
玄関の原型がボロボロになっている部屋の奥に目をやる
半分に分断された木のテーブルが床に転がり、クマが引きちぎったのかと思うほどビリビリに引き裂かれたカーテン、深く鋭い爪でえぐりとられた壁、まるで戦争でもこの部屋で行われたのか?と思ってしまう光景があった。
そして、警備のために残しておいた小人たちが、これまた荒らされた部屋同様ボロボロになって疲労している姿が目に入る。
俺の「どうした!?」の言葉を発する前にモルドレッドは大声を出す。
モ「用兵さん! 今すぐライオネルをブレスレットに戻して!!」
え? 気圧される俺は、抱きつかれている左手を少し妹から放す。
「戻れライオネル……あれ?」
俺の命令に一切反応しない。
モルドレッドの横で壁に寄り掛かっていたガーウィンは強く壁を叩く。
ガ「遠すぎるんだ、クソッ!」
モ「ラ…イオネル…」
ペタンと力なく床に座るモルドレッド。腰に差している剣もカランと音をたて力なく床に落ちた。
ランスロットとその主が来たのはつい先ほど。
俺が帰ってくる5分ほど前だったそうだ。
妹を護衛していた6人がいつもどおり妹と一緒に家に帰宅、その直後吹き飛んだ扉、そして襲撃してきたランスロット。
バイクこそ乗ってはいなかったが、主のいない小人6人じゃ手も足も出なかった。
それでも俺の妹だけはなんとか守り通した。
しかし、その代償に支払ったのは小人1人。
モルドレッドの妹、ライオネル。
やつは去るときにライオネルを掴みながら「お前たちの主に伝えろ。こいつを帰して欲しかったら、今日の夜12時きっかりに、初めて会った公園に来い」と言って消えていったそうだ。
なぜ俺なんだ?
なんで俺を狙う?
俺の連続した疑問文を払拭するようにモルドレッドは自分の腕からポタポタと落ちる鮮血に見向きもせず立ち上がる。
モ「今すぐ助けに行きますわよ、用兵さん」
助ける?
俺の中で鮮烈に蘇える夏休み公園で初めて会った、あの恐ろしく圧倒的だった強さ。
あれから俺も強くなったと思っていた。
でも俺にリッチモンドの召喚獣だった吸血鬼を倒せただろうか?
ランスロットの主は倒した、しかもゴリラの召喚獣もいたから続けて2体連続で…。
俺が強くなっているのに比例してやつも強くなっているなら。
ベデ「モルドレッド、敵の罠に飛び込むつもりですか?」
ケ「そうだよぉ、とりあえず落ち着いたらぁ~」
モ「落ち着けるわけないですわ! わたくしの妹なのですわよ!! 用兵さん、行きますわよね!?」
モルドレッドに話しかけられた俺の脳裏に映るのは包帯を巻かれたリッチモンド。
急に極寒地にいるようにブルブルと震えだし、恐怖に縛られる体。
勝てない…。
俺もああなる……嫌だ、嫌だ!
嫌だ!!
「ここにいりゃ、安全だろ」
モ「え?」
呆気にとられた表情のモルドレッド、自分の耳を疑った。
「そうだよ、わざわざ行くことなんてない。 警察に公園のことを言えば――」
モ「ふざけないでください!! ライオネルは用兵さんの妹を助けるために連れて行かれたのですわよ!」
「…そんなこと、俺のしもべなんだから俺の妹を守るのはあたりまえだろ! ちょっとぐらい言うこと聞けよ! 1人ぐらい、いなくなったって別にいいじゃねーか!」
俺はそう言い放つと、ハッと我に返った。
モルドレッドは俯き、目を閉じ、左手から流れる血の傷跡を強く掴む。
モ「そうですわね。 確かに用兵さんの言う通り、主様の周囲の人を守るのも召喚獣の勤め。なら…なら!わたくしは召喚獣をやめますわ! わたくしの妹を助けられない主なんて、わたくしには必要ありませんわ! 別に用兵さんからすればたくさんいる小人の1人、もう1人ぐらいいなくなったって大した問題でもないですものね!」
軽蔑を通り越したその目は、うっすらと涙が浮かんでいた。
そしてモルドレッドは怪我をしたまま他の小人たちの横を通り、玄関から外に出て行った。
俯き下を見る。
血がモルドレッドの足跡のように玄関に続く。
俺は小人たちを背にする。
「笑いたきゃ笑え。 お前たちの主は手足が怯えて動かなくて、情けない顔をした、クズみたいな男だ。」
少しの沈黙。
その後聞こえたのはベディヴィエールの明瞭な声だった。
ベデ「笑う理由がありません。 客観的に見ると、主より自分の妹をとったモルドレッドの行動の方が間違っています」
俺はゆっくりと部屋を見渡した。
そこら中に飛び散るまだ乾ききってない血、小人たちの中にそこまでの怪我を負ったものはいない。
おそらくモルドレッドの…
すると俺の表情を見て口を開くマーリン。
纏っているローブが涼しげに揺れる。
マ「ダンナ~、感情的になるな~。そもそもは妹君を警護していた6人のミスじゃ、ダンナが気にすることはない」
ガ「んだとジジイ! もっぺん言ってみろ!」
ガーウィンはマーリンの胸ぐらを掴み、そのまま強く上に持ち上げる。
マ「なんじゃ、この年寄りと同じで耳まで悪くなったか?貴様ら騎士のミスじゃと言っておる」
ガ「ここにいたのが俺たちじゃなくお前なら違う結果だったって言いてぇのか!」
自分の身長よりも高く持ち上げられたマーリンは焦る素振り1つ見せず、不吉に笑う。
マ「そうじゃな~。 少なくとも主の妹君は無傷で、全員がここから逃げとおすぐらいはできたじゃろ~のぉ。 グッヘッヘ」
ト「ガーウィン、マーリンを放せ。 ここで私たちが内輪揉めしても事態は良くはならない」
ガーウィンはトリスタンの言葉に小さく舌打ちを織り交ぜてマーリンを突き飛ばす。
マ「痛いの~まったく騎士というのは腕っ節だけで生きておるから攻めている時はよいが、守りに入ると脆~い脆~い、モルドレッドにしても自分のせいで妹がさらわれた。どう考えたって自業自得じゃ、ダンナが責任を感じる所すらない。 そしてもしダンナがあの2人を助けたいならいい策がある。 あっ、ちなみにワシの策を否定する権利、資格は貴様ら無能な騎士共にはないからの~」
クソジジイ! 皆の剣に殺気が灯る。
小人たちは憎しみの目を向けながらも実際マーリンの言うとおりだったので反論すらできなかった。
マ「ダンナ、さっき言っとった警察に助けを求める、かなりよい策じゃ。 国家権力は一般市民の味方じゃ。だがそれだけではなく私刑団とやらにも助けを求めるとなお良い、召喚獣を持った相手じゃ、同じ召喚獣を持ったやつが相手をしたほうが上策というもの」
マーリンがそこまで言うと、いつもはやる気のまったくないガラハットとケイの目の色が少し変わる。
ガラ「ことわたくしはマーリンの策にどうこう言うわけではありませんが、ランスロット卿はわたくしの姉になります。身内の問題を人任せにするというのはどうにも夢見が悪い」
ケ「ケイも別にモルドレッドが火あぶりになろうが、水責めで死のうが興味ないんだけどぉ、逃げてケイたちが弱いって思われるのはいやだなぁ~」
2人の話を聞くや否やマーリンは俺の方へ前のめりになる。
マ「ホラなっ、ダンナ! 比較的ワシに近いこの2人でこれじゃ、騎士様っていうのはこういう生き物じゃ。 勝ち方を選んでいては勝てる勝負も勝てんよ」
完全に理解できんと溜息混じりに首を振るマーリン。
こいつらが喋っている間に少し震えが納まった俺、しかしまだ恐怖から思ったように体が動かない。
「お前らの中で1番力が強いのは誰だ?」
小人たちは何が?と主の言葉の真意を考えつつもお互いの顔を見合わせ、ガーウィンが一歩前に出る。
俺は目を閉じ、頭を真っ白にして集中する。
そして呟く言葉「Ⅳ番ガーウィン」
するとさっきまで目の前で立っていたガーウィンが消え、俺の右手甲に浮かび上がるローマ数字のⅣ。
そして同時に俺は強く歯を食いしばる。「ドカ!」
自分で自分の顔を思いっきり殴り、カーペットに伏す主。
主が壊れた!?と小人たちが寄ってくる。
俺は効いたぜと言わんばかりにボクサーのようにヨロヨロと立ち上がった。
「よし! 目、覚めた! 俺はマーリンが言った方がいいと思う」
マ「おっおう。ほぅ~ダンナ~よく分かって――」
「でも今回はその作戦はとらない。家に帰って色々あったから忘れてた、俺はリッチモンドの涙を見たんだ。 絶対ランスロットの主には、リッチモンドの前で土下座させる。 それに…モルドレッド、ライオネルは俺の仲間だ、仲間を助けるのは仲間でないとダメなんだ。 それがお前らの主人としての俺の判断だ!」
ト「ご主人」
ケ「用兵ちゃん」
マ「ふぅ~今回は面倒な主人に当たったのぉ~」
マーリンは自分の白く長いヒゲをもしゃもしゃと触り、いつもの独特の笑いをこぼす。
マ「じゃが、今の覚悟はしかと受け取った。 ワシの主よ、ランスロットではなくこのマーリン引き当てたこと幸運だったとワシ自ら証明して見せようぞ。 グッヘッヘ」
閲覧ありがとうございました。




