第12章「折れたプライド」
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第12章「折れたプライド」
「みなさ~ん!今日は朝礼でみなさんにお伝えしなければならないことができました!」
校長、教頭がいないのをいいことにインテリ先生こと、こいつほどインテリ眼鏡が似合うやつはいないであろう井口先生。
俺を職員室で捕まえた後、他の先生の忠告や助言も聞かぬまま俺の後ろ手をロープで縛り、体育館にまだ学生が来ない6時から壇上に座らせたのだった。
まるで今から切腹する罪人だ。
まぁ、不法侵入してるから言い訳は出来ないが…学生だぞ?
全校生徒は朝礼でいきなりいつもはクールな井口先生が表情を崩しうれしそうにしている姿と、その横に人権侵害を受けているテスト学年1位の生徒を目撃させられたのだからポカーンとするしかない。
井口は俺を後ろからガンと蹴る。
「今、この学校を襲っている闇討ち事件の犯人を私、井口が捕まえました~! ほ~ら、犯人、何か言ったらどうですか?」
人権団体に告発するぞとでも言って欲しいのか?
カエルのようにベタっと前のめりなった俺に、井口は髪を掴み無理やり顔を上げさせる。
ここで何を言っても言い訳にしか取られない
否! こいつは何を言ったって俺のプラスになる解釈はしない。
俺は完全に黙秘を決め込む。
まぁ、こいつに捕まってから一言も喋ってないんだけど。
インテリ先生こと井口…何だっけ? 名前忘れた。
とにかくこいつとは入学から折が悪かった。
水と油とも学校で称される俺たちの犬猿の仲、それは世が世なら殺しあうレベルの仲。つまり何を言っても無駄という俺の今の結論に行き着くわけさ。
俺のだんまりにインテリは、耳に顔を近づけてくる。
「言っときますけど、黙っていたら何とかなるなんて考えは通りませんよ。 こっちにはあなたの書いたこのメモ帳がある。 生徒の住所、何に使うつもりだったのかな~? さぁーお前はどうやって言い訳する~?」
あいも変わらず、本~当!嫌味っぽい言い方だ。
でもやはりこいつはメモの中を見たのか。
再び大きく息を吸い、学生のほうを向くインテリ井口。
「そうそう! 闇討ちの犯人は小人の召喚獣を使っているらしいですよ!」
こいつ何で知って!?
教員連中にはもうそこまで情報がいっているのか。
「疑うわけではないのですが、三錐君。 成績優秀な君なら召喚獣をもらっていますよね? どうだろう、ここで見せてはくれないか? そうすれば疑いも晴れる」
…こいつ、俺が小人を持っていることを知ってる。
なぜだ?
でもここで小人を見せたら半信半疑な学生たちも完全に俺が犯人だと思う。
どれだけ冤罪だと叫んでも…。
だが俺は住所録を見ている、そのメモを出されたら召喚獣を出さない言い訳が出来ない。
俺は小さく舌を打つ。
そしてブレスレットに念じる「ガーウィンのみ出て来い」と。
出てきた赤髪の小人。 みんなの俺へと向けられた目は確実に犯人だと言っていた。
この中に妹がいると思うとそれだけが心残りだ…。
「おや~? 小人だ~、みなさ~ん! この男が犯人です!」
さて、今後どうしたものか?
俺がそう考えた時だった。「ドカ!」鈍い音が俺の頬伝わる。
インテリの右ストレートが俺の頬を壇上に叩きつけた。
「!?」
壇上で体を丸め、のたうつ俺の体。
まさか全校生徒の前で殴るとは…俺が殴られるのを見て東が壇上に上ってくる。
「井口先生! 暴力は!?」
「何を言っているのです、東先生? こんな闇討ちするようなゴミには正義の制裁が必要なんですよ!」
どう考えてもその言い方は正義を掲げる人間のセリフじゃねーよ。
痛む顔を床にくっつけ、俺は小さくほくそ笑む。
その口元を見て井口は俺の上から踏みつけ、俺の腹にまたがり、馬乗りにしてもう1度コブシを振り下ろした。
1度目よりもクリーンヒットするコブシ、俺の顔面には激痛が走った。
「よくも、今私をバカにしたな。 分かってんだよ!」
苦しみ、床に顔を擦りつけ悶え苦しむ俺だけに聞こえるように井口は囁く。
「お前は目障りなんだよ! 授業中に私を馬鹿にしやがって!」
それは高校生には解けないような問題を、気に入らないやつに出しまくってたお前に否があるだろ。
答えた俺が悪いとでも言いたいのか? 俺は薄れ行く視界にそう呟いた。
ベイ「もう無理!」
ト「何をするつもりだ、ベイリン?」
ベイ「決まってんだろ! 今すぐブレスレットから出て、あいつをブチ殺す!」
ト「止めろ」
ベイ「なんでだよトリスタン!? オレたちの主があんなボケカスに殴られてるんだぞ! 悔しくないのかよ! この腐れチキン野郎がっ!」
ト「この状況を悔しくない小人がいるわけがないだろう。……ふぅ~今、私たちが出て行って何かしたら、もっとご主人の立場が悪くなる。 本当にご主人に50人以上の闇討ちが可能だったとでも証明するつもりか?」
モ「トリスタンの言う通りですわベイリン、今はジッと我慢して―」
ベイ「モル、お前が偉そうに言うな! 元はお前とケイがあんな騒ぎ起こすからだろうが!」
モ&ケ「「……」」
パ「いいかげんになさいベイリン! あのガーウィンだって耐えているのよ」
ガーウィンはただジッと拳を握り締め、自分の主を馬乗りにし、殴っている男の顔を忘れないように睨み付けて、その顔を脳裏に刻み付けていた。
パ「ベイリン、もしあなたが彼の努力を無駄にしようと言うのなら、私があなたを許さない。 それに、辛いのはあなた1人じゃないのよ」
ベイ「…チッ…わかったよ」
今何発目だ?
たぶん5発目ぐらいだろうけど、もう痛さで分からない。
ボクシングの選手ってのはこれを日常的に耐えているのか…俺には無理だ。
あ~あ、甘かったな。
考えなしに突っ込みすぎたんだ。
今、誰かに何かを言ったところで、こいつがメモを持っている以上、俺の言い分は全て言い訳になる。
だから今の俺には何かが起こるのを待つしかない…何かって、何だろう?
分からねーや。
「井口先生! もう止めましょう!」
東が井口の両脇を抱え込むように制止させようする。
「こんなゴミを庇うつもりですか!! 東先生!」
完全に興奮状態の井口はギラギラした瞳。周りが見えていないのは明らかだった。
「コイツは犯人チガウ! だって、昨日ミーと一緒にいたカラ」
どこかで聞いた片言の日本語。
そいつはゆっくりと壇上に上ってくる。
「君は…交換留学生のリッチモンド君。君はこんなゴミを庇うために遥々日本に来たのかね?」
「昨日、召喚獣持ってるイッテタ、サトウ闇討ちにあった聞いた。でもその時間ヨウヘイ、ミーといた。ゴリラ、チトセ、ユリヒメ、お前たちに町を案内してもらった後、ミー用ある言ったでしょう」
急に名指しされた3人はビックリしながらもおずおずと答える。
「そうだな、たしかにそんなこと言ってたな」
「……そうだね。 確かに言ってた」
「そうね。それにその小人ちゃんたちが悪いことをするようには見えないし」
それを聞き生徒たちは本当に三錐が犯人なのか?
とまた半信半疑の目に戻っていく、焦る井口はリッチモンドに冷や汗をたらしながら問いかける。
「しかしだね…証拠が」
「ショウコ、これ、プリクラ」
大きく井口にプリクラを見せるリッチモンド。
井口を含め、みんなの注目を一身に受けるプリクラ。
俺も別な意味で腫れたまぶたでプリクラに注目した。
リッチモンド君。
それ、半年前に撮ったやつではないですか?
俺の髪の長さ、微妙に違うぞ。
「井口先生。さすがにこれは、校長が帰ってきたら問題になりますよ」
東を含めた教員たちが壇上に集まってきた。
俺は後ろ手に縛られたロープをリッチモンドに解いてもらい、やっと罪人から開放された。
そして俺はリッチモンドに小声で喋りかける。
「お前、すごい度胸だな。半年前の物を昨日撮ったってよくまぁ」
「ヨウヘイ、まだミーがこの学校にナレてないとき、色々してくれたいいヤツ、だからそんな闇討ちしない」
よろよろと立ち上がる俺に、肩をかすリッチモンド。それを見て東がリッチモンドに保健室に連れて行くのを替わると指示する。
「ホイっと。 お前、証拠あるなら早く言えよ。助けに入るの遅れたろ」
俺はそんな証拠ありません!
とは言えないので、井口や他の人間に聞こえるように「どうせ井口先生に何を言っても信じてもらえないと思ったので」と、まるで不法侵入を完全に無かったことのように答えた。
そしてそれを聞いた学生たちがボソボソと喋りだす。
「やりすぎじゃねーか?井口」
「そう言えば三錐先輩と井口先生仲悪かったよな」
「それで殴ったのか?」
「うわ~無実の人間を先コーが殴って憂さ晴らし」
「サイテー」
東は焦って壇上のマイクを握る。
「今日の朝礼は終わりだ! 皆、教室に戻れ」
俺は保健室に向かう傍ら、腫れ上がったまぶたで井口の方を見て「井口、らしくなく熱くなったな。 これで生徒も先生もお前の敵だ」と視線で言った。
ちなみにその後、東に連れて行かれた保健室にて不法侵入のことやメモのことを聞かれ、自分で犯人を捕まえようとしたことを言うと「ばかやろー! ガキが、何考えてんだ!!」と大目玉をくらった。 これまでで一番堪えた説教だった。
1時間目のチャイムを聞きながら1人、真っ白なベッドから窓の外を見る。するとブレスレットの中からライオネルのか細い声が聞こえた。
ライ「ウチの能力で用兵くんの怪我、治そうか?」
ライオネルの【mercy doll = マリア像の慈悲】。
ライオネルが肌身離さず持っている、ボロい、目なんて取れかかっている人形(ちょっと恐い)。その人形に触れた者は細胞が活性化し、一時的に自己治癒力が飛躍的に向上する。おそらくこんな怪我なんて一瞬で完治するだろう。
俺は殴られたことで切った口を痛がりながら動かす。
「いや、今それをすると俺が複数の召喚獣を持っていることがバレるかもしれない。 助けてくれたリッチモンドにも悪い。 このままでいい」
俺はライオネルの申し出を断りながらも、この痛さには当分なれそうもないなと痛む口元で微笑する。
さて、疲れたので一眠りしようかと窓から目を戻す。
するとシーツの上にはブレスレットから勝手に出たモルドレッドとケイがちょこんと頭を下げていた。
モ「主さま。今回のわたくしたちの失態、心よりお詫び申し上げますわ。」
ケ「ごめんなさい」
2人は腫れ上がった主の顔を見ることが出来ないのか、ずっと頭を下げ続ける。
俺はスーと手を伸ばし、ペン!「ふにぁ!」モルドレッドにデコピンをした。
そして手で2人の頭を続けてポンポンとする。
「もういいよ。元は俺が先走ったせいだしな。 それよりお前らはもうケンカ止めろよ」
モ「…すいませんです―」
ケ「だよねぇ♪ 用兵ちゃん、やっぱり大好きぃ♪」
俺に抱きつくケイ。 モルドレッドは抱きついているケイの髪をグイっと引っ張る。
モ「あなたはちょっと反省を―」
ケ「触るな、下水女」
モ「ムカ! (ボカ!)」
ケ「イタッ! このブス!!」
またケンカを始める2人。
ハァ~、この2人の水解けはまだまだ先になりそうだ。
ベデ「主、これからのことを話し合いたいのですが、皆が出ても大丈夫ですか?」
保健室を見渡す。
誰もいない、というか外に気配すらもない。
教員は皆、井口の行動のことで職員室に集まっているのだろう。
これなら少しぐらい騒いでも大丈夫か。
「みんな出ろ」
小人たちは出てくると俺のほうを向く。
そしてベディがまず口を開いてきた。
ベデ「これからどうしますか、主?」
ベディヴィエールの真っ直ぐ俺を見て真意を問う。
ガ「ランスロットを見つけ出すに決まってるよな、用兵!」
ガーウィンは腕を捲くる。
ベイ「オレはあのメガネをブチ殺したい」
ベイリンは手の骨をポキポキ鳴らす。
ヒートアップする小人たちの会話に俺は首を横にする。
「いや、もうこれ以上はこの件には首は突っ込まない」
そう、諦めよう。
俺みたいな一般市民が出過ぎたことだったんだ、もうメモも無いし。
ベデ「そうですか…そう言うのなら、自分たちは主の決定に従います」
ベディヴィエールがそう答えると、小人たちはブレスレットに戻っていった。
ハァ~。
今日、生まれて初めて自分がいかに無力な存在なのかを思い知った。
外の風を感じたく窓をガラガラと開けると、寂しそうに冬の風が木の葉を転がしていた。
モ「このクソ女!」
ケ「ブサイク!!」
こいつらの足元で荒れ狂うシーツ。
とりあえず、こいつらをブレスレットに戻そう。
寝られない。
閲覧ありがとうございました。
今回の回は書いていて少し、しんどかった回です(^_^;)
でも読んで頂ければ嬉しいです。
皆様の貴重な時間を削っていただいたこと光栄に思う次第でございます!!
絵文字で光栄を表すとこんな感じです ⇒ (ノ゜ο゜)ノ オオォォォ-




